Susan Garms氏 |
一方、同じ北米でもカナダの場合は、米国のようなテレワークに関する具体的な法律はない。しかし、「北米におけるテレワークの推進」と題して講演を行った、カナダテレワーク協会理事のSusan Garms氏によると、カナダでは、特に環境問題、鳥インフルエンザの蔓延による危機対策としてのテレワークへの関心が強まっているという。
ガートナーが2007年4月に発表した、カナダにおける就労人口に対するテレワーカー比率は2007年に12.3%。アメリカや欧米に比べて、テレワーカーの割合は少ないものの時間数が長いのが特徴だという。また、カナダ人の43%が「テレワークが認められる仕事に転職したい」、33%が「1割の昇給よりもテレワークのほうがいい」と答えるなど、従業員にとってテレワークが魅力的な要素として捉えられている。
一方、"ワークライフバランス"の改善を求める声はカナダでも高まっているという。カナダ人の平均通勤時間は1時間で、労働者の15%が「通勤時間が短縮されれば生産性が高まる」と答えている。また、公害問題に対する人々の意識も高く、Garms氏は「通信会社のベルカナダでは、2006年に温室効果ガスの排出量をテレワークにより1万1,000トン以上低減した。環境に貢献するということをアピールすることで企業は選ばれるようになる」と、カナダにおける事例を紹介した。
しかし、カナダにおいてテレワークの普及を阻む大きな要因は、職場における"信頼関係"だという。というのも、やはり中間管理職の多くが従業員が目の届くところにいなければ仕事が進まないと懸念しているからだ。これに対してGarms氏は「テレワークを"従業員のため"という考え方から、"企業に見返りがある"ものとして捉える意識の転換が必要。テレワークは生産性の向上、環境負荷の低減という側面で、企業にとって確実にメリットになるはず。それを捉えて企業は人事政策と経営政策を併せていくべき。人事評価はオフィスにどれだけ居たかではなく、どれだけの成果を出したかにより評価する方向に変えていかなければならない」と、カナダにおけるテレワーク拡大の課題について自身の見解を述べた。