青木利晴氏

今回のシンポジウムで日本におけるテレワークの状況を語ったのは、社団法人日本テレワーク協会の会長を務める青木利晴氏。同氏は、「日本におけるテレワークの推進」と題して、日本におけるテレワークの現状をはじめ、政府の「テレワーク人口倍増アクションプラン」についての解説、テレワークに寄せられる期待について語った。

青木氏によると、現在のテレワークの実態は、企業に勤務する被雇用者が属する"雇用型"と、個人事業主など企業に雇われない労働者が属する"自営型"の2種類に大別されるという。また、政府では週8時間以上をテレワーク就労する労働者を対象に"テレワーカー"という呼称を用いている。

一方、近年テレワークが注目されるようになったもっとも大きな背景は、日本が抱える人口問題だと青木氏は説明する。日本の総人口は2004年にピークを迎え、2005年から人口減少に転じている。それに伴い、65歳以上世代1人を支える20 - 64歳までの生産年齢人口は、2005年の66.1%から2030年には58.5%、2055年には51.1%へと減少が推測され、深刻な社会問題となっている。そこで社会や企業にとって今後の課題となるのは「いかに労働力を確保するか?」であり、出産/育児後の女性やシニア層にとって多様で柔軟な働き方を可能にする環境を速やかに構築していくことが、労働現場における重要事項となってきているのだ。

青木氏によると、日本におけるテレワークは、1990年代前半に民間企業が地下の高い都心から郊外のメインオフィスと離れた環境にサテライトオフィスやテレワークセンターを開設したことに始まるという。ところが、当時はITがそれほど普及していなかったこともあり定着せず、バブル経済の崩壊とともに姿を消してしまった。しかし、「今世紀に入って日本には低料金のブロードバンドが普及し、昨今、再びテレワークが現実的になってきた」と青木氏は説明する。