Oracle会長兼CEO ローレンス・エリソン氏

Oracle OpenWorld 2007の基調講演で、再び登壇した米Oracleのローレンス・エリソン会長兼CEOは、同社の今後のアプリケーション戦略の中核である「Fusion Application」の方向性を詳しく解説、「Fusion Applicationは業界標準、SOAに基づいたミドルウェアで構築されており、すべてのアプリケーションはFusion Applicationになる」と述べ、2008年上期の市場投入に向け、積極姿勢を示した。

「顧客は、アプリケーションに何を求めているのか」 - エリソン氏は、顧客の声を集約、彼らが希望する項目のTOP3を掲げ、それらに対応していくことを強調した。既存のアプリケーションとの共存、導入効果の明瞭化、SaaSへの対応の3つだ。エリソン氏は「それがOracle製品であるかないかにかかわらず、Peoplesoft、Siebel、SAP、Salesforce…どこのどんな製品であろうと顧客には意識させないで共存できるので、顧客側はそれぞれの最もよいタイミングで、新しい段階に移行できる」と話す。

「測定できる利益はないのか。顧客は、新しい技術、ソリューションなどによるビジネスへの利益があるのかどうか、目に見える形で、定量的に教えてほしいと望んでいる」とエリソン氏は指摘、「Fusion Applicationは、プロセスの自動化だけではなく、統合されたBI機能が埋め込まれていることが大きな特徴のひとつだ。企業が何かを購入するような場合、それを買うのは予算オーバーのではと教えてくれる。よりよい意思決定を支援することができる」と強調する。新しい技術的な流れとしては、SaaSへの対応が挙げられる。「まずSaaS型で始めて、その後、自社内導入型に移行する選択肢もある」(エリソン氏)

「Fusion Application」では、最も優先度の高い要因として、エリソン氏は、既存アプリケーションとの共存性を挙げている。「アプリケーションは、BPELにより、容易にミドルウェアに統合することができ、BPELで、体系的に制御できる。『Fusion Application』の長所は、最新のミドルウェアで構成され、統合のためのパックが提供されることだ。」SOAの作用は、統合を容易化し、あらかじめ組み込まれた統合のためのパックは、オラクル製品だけでなく、SAPのような他社製品にも対応する」。

2008年上期に登場する「Fusion Application」は3つある。「SFA(営業支援)のアプリケーションは、CRMのかなりの部分を占める。Salesforce.comなどは、当初、SFA機能の自動化を手がけていた。予測機能などを用い、営業の最前線を支援していた。これは第1世代だ。第2世代では、SalesforceやSiebelなどの置き換えではなく、共存が主題だ。さらに、データベースを対象にデータマイニングを行い、予測に留まらず、購買履歴や購買の頻度、早さ、タイミングなどを分析、ある製品を購入している顧客と似たような属性の顧客に、同様の製品を薦める」

「これは、いわば、Amazon.comの手法と同じようなやり方だ。同じ製品を売る場合、顧客に対し、説得力が高まる。正確な予測というだけではなく、より販売を増やすBIだ。これが第2世代のSFAであり、販売活動の科学といえる」

2008年に投入される製品は、「Sales Prospector」「Sales Reference」「Sales Tools」の3つだ。「Sales Prospector」は、SOAで、ERPと統合され、BI機能を備え。顧客の購入履歴を分析、「Sales Reference」は、ERPと統合し、キャンペーンの効果を計る。テンプレートのライブラリをつくり、情報を共有し、生産性向上につなげる。「Sales Tools」では、ソーシャルネットワ-キング機能で情報を共有し、すべてのページについて、インデックスを生成、検索できるようにする。これらの場合、具体的な情報を扱うのでなく、メタデータを処理する。マーケティング担当者だけが使っていたようなデータ営業要員が使うことができる。

同社は、この3年ほどの間に30数社を買収、合併している。同社の企業向けアプリケーション製品群は、それら各社の多数の製品で構成されている。今回、同社が「Fusion Application」で、既存製品との共存性を最重点課題と位置づけたのは、それらに対する顧客企業の投資を保護することに、特に配慮する意思表示ということになる。一方、「Fusion Application」という大きな共通基盤を用意して、既存製品群を統合、融合化させていく道筋も示したわけだ。さらに、各アプリケーションの機能がいっそうサービス化され、SaaSに適用しやすくなった。SaaSへの取り組みの方向性は明確にはならなかったが、いつでもSaaS型を強化させることができる土台が整えられたというところだろうか。