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日本IBM 執行役員 ITS事業担当 吉崎敏文氏 |
日本IBMと三洋電機は23日、サーバラックの後部ドアを冷却用熱交換機として使用する局所冷却システムを共同で発表した。IBMが特許を持つ、サーバ・ラックの後部ドアに直接熱交換機を取り付けるというアイデアと、三洋電機の「enegreen冷媒式マルチサーバークーラー」の組み合わせで実現されている。システムは、日本IBMが販売および導入設置サービスを行なう「IBM Refrigeration Rear Door Heat eXchanger」として提供される。なお、参考価格は、ラック3台の場合で1800万円程度で、室外機や標準工事費を含む。注文から納入までに要する期間は約2.5ヶ月。
日本IBMの執行役員 ITS事業担当の吉崎 敏文氏は、「京都議定書で1990年比でCO2排出量を2008~2012年の平均値で6%の削減を実施することが決まったが、IT関連の2005年の実績値は1990年比で+8%の増加だった」というデータを示し、環境問題への取り組みとしてIT、特にデータセンターでの消費電力削減が重要だとの認識を示した。さらにIBMが全世界規模で展開するデータセンターのエネルギー危機に対処する取り組み"Project Big Green"の概要を紹介し、今回のラックのリアドア設置型冷却装置が、Project Big Greenの一環となる取り組みであると位置づけた。
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三洋電機 専務執行役員 コマーシャルグループ長 管晃(かん あきら)氏 |
また、三洋電機の環境問題や冷却機器への取り組みの概要を同社専務執行役員 コマーシャルグループ長の管晃氏が説明し、さらに今回発表されたシステムの詳細を同社のコマーシャルカンパニー 空調事業部 副事業部長の坂本直樹氏が説明した。
従来のデータセンターの冷却では、サーバからの排熱を一度サーバルーム内に排出し、それを大型クーラーで冷却した後循環させるという構成になっていた。この場合、負荷が高いラックと比較的低負荷のラックが混在する環境では局所的な熱だまりができてしまう。熱だまりができてもサーバの動作に悪影響を与えないためには、全体の冷却能力に余裕を持たせる必要があり、不効率が生じていた。今回のラックのリアドア設置型冷却装置では、サーバからの排熱を、サーバの直後に配置された熱交換機で冷却してからサーバルーム内に放出するため、サーバルーム全体の温度が低下する。このため、部屋全体の空気を循環させる冷却設備の負荷は大幅に軽減される。さらに、ラックごとに熱交換機が設置されるため、サーバの稼働状況(=排出される熱量)に応じて冷却装置の作動状況をきめ細かく制御できるため、最適化された運転が可能になる。部屋全体の冷却に従来2台のクーラーを使用していた場合、そのうちの1台を今回の冷却装置に置き換えることで、全体としては25%の消費電力節減が実現するという。
日本IBMの吉崎氏は、初年度の目標として国内で15件のデータセンターへの設置を目指し、その後全世界での展開も視野に入れるとした。