NTTデータら6社で構成される「実践的アプローチに基づく要求仕様の発注者ビュー検討会」(以下、発注者ビュー検討会)は18日、同検討会による最初の成果物の公開と、今後の体制強化に関する発表を行った。

発注者ビュー検討会は、顧客に分かりやすい統一的な仕様記述方法や合意方法を検討する目的で、NTTデータ、富士通、日本電気、日立製作所、構造計画研究所、東芝ソリューションの6社によって2006年4月12日に発足した。従来、情報システムの要求仕様は開発者側の視点で記述されることが多かった。しかしこの場合、発注者である顧客の要求を正確に反映できていないケースがあり、顧客側も要求仕様書を正確に読み取れないため、それに気付き難いという問題があった。

同検討会の目的は、発注者の視点で記述できる統一的な仕様記述法のガイドラインを策定することにより、設計段階での開発者と顧客の認識の齟齬を無くそうというもの。検討は前述の6社が過去の事例やノウハウを持ち寄ることにより、実践的な内容を盛り込む形で行われたという。

発注者ビュー検討会発足メンバー6社と新規に加入した3社の代表

今回公開されたのは、その第1弾の成果物となる「発注者ビューガイドライン(画面編)」。これは発注する側(顧客)と開発する側(SIベンダ)との間で起こる誤った理解や認識のずれを防ぐための、コツや留意点をまとめたドキュメントだ。外部設計書の記述と、顧客とのレビューに着目した構成になっているという。

発注者ビューガイドライン(画面編)の概要

同ガイドラインは第1部「表現」、第2部「記述確認」、第3部「レビュー」の3部から構成される。表現の部では、画面に関連する外部設計書記述のコツが集約されている。例えば画面一覧や画面遷移、画面レイアウト、画面遷移・画面レイアウト共通ルール、入出力項目などを設計仕様書に記載する際、どういった点に気を付ければよいかなどの留意点がまとめられている。

記述確認の部では、外部設計書の記述を確認する際に留意すべき点がチェックリスト形式でまとめられている。これによって外部設計書が正しく記載されているかを容易にチェックできる。

レビューの部では、外部設計書の記述内容を発注者と開発者が確認する上で、認識のずれを起こさずに合意するためのコツがまとめられている。この部について、同検討会では「発注者と開発者の合意は段階的に成熟していく」という考えに則り、それぞれのフェーズについて留意事項を検討したという。

成果物である発注者ビューガイドラインは発注者ビュー検討会のサイトにあるWebページよりダウンロードすることができる。

同検討会では、画面編に続いて8月1日より「システム振舞い」および「データモデル」に関する技術検討を始めており、この3分野を合わせて最終的な発注者ビューガイドラインとして完成させるという。システム振舞いに関する技術検討では、システム化の範囲を明らかにする業務フローや設計要素についての記述方法・合意方法が検討される。一方、データモデルに関する技術検討では、顧客が業務にかかわるデータの構造を把握しその変化を追跡できる記述方法・合意方法を検討するという。その他、同時に3分野共通での用語集やベストプラクティスの作成も行う。

なお同検討会には、8月1日より新しいメンバーとして日本ユニシス、沖電気、TISの3社が加わったことも発表された。日本ユニシスの稲泉成彦氏は「プロジェクトには、目標が明確でクライアントとデベロッパの間に認識の齟齬が無いもの、目標は明確だが認識に齟齬があるもの、目標の決め方に誤りがありデベロッパに全て丸投げされてしまうものの3種類がある。そして後者の2つがデスマーチの大きな要因となる。当検討会に参加することで、この問題を解消する一役を担いたい」と語っている。

今後、発注者ビュー検討会ではシステム振舞いおよびデータモデルに関する技術検討を続けてガイドラインを作成するとともに、独立行政法人情報処理推進機構ソフトウェア・エンジニアリング・センター(IPA SEC)や社団法人日本情報システム・ユーザ協会(JUAS)などの外部団体とも協力して同ガイドラインの普及を促進していくという。

また、「発注者ビューガイドライン(画面編)」を作成した6社では、各社で持つシステム開発標準に当ガイドラインを組み込むことを決定し、年内または年度内での組み込み作業完了に向けて準備を進めているとのことである。新規に加入した3社についても将来的に導入していく予定とのことである。参加各社で積極的に成果物を利用することで、普及の促進に繋げていきたい考えだ。

なお、同検討会の活動は2007年度に終了する。それまでに前述の成果物を発表し、その後の普及活動の地盤の構築を目指す。