Symantecと合併する以前、Veritasでは中核的なメッセージとして「Utility Computing」を掲げていたが、現在のSymantecでは、「Protection」を「Information」「Infrastructure」「Interaction」のすべてに対して提供する、ことを中心的なメッセージとして掲げている。CommandCentral 5.0は、ストレージインフラを保護し、その複雑性を管理するために必要となる機能を提供する製品だ。

Symantecが取り組む「保護」戦略を説明するヨギッシュ・アグラウル氏

とはいえ、目指す方向が変わったということではない。ストレージサービス管理というコンセプトは、基本的にはUtility Computingと共通する考え方だ。前述の4つのステップの最終段階、ストレージがサービス化された状況は、Utility Computingそのものと言ってもよいだろう。ただ、メッセージとしてあまり先の目標ばかりを強調するよりも、もっと具体的で身近な分野から確実に実現していくべきだと考えた。これは、Utility Computingに数年間取り組んだ結果から学んだことだ。

このため、製品の構成にも変更を加えている。かつては「CommandCentral Service」という製品があり、「サービス化」に関わる機能を一括して提供することを考えていたのだが、CommandCentral Serviceは、製品としては提供終了する方向だ。CommandCentral Serviceが実現していた機能のうち、バックアップレポーティングの機能はNetBackupに移した。また、ストレージレポーティングの機能はEnterprise Reporterで対応する。チャージバックやSLAといったサービス化に関連する機能の一部はCommandCentral Storageに、ワークフローの機能はProcess Automation Managerに組み込まれた。

ソフトウェアスタック全体の最上位に位置づけたCommandCentral Serviceであまりに多彩な機能を提供してしまうと見通しが悪くなることがわかったので、よりわかりやすく機能を整理し、より具体的な製品に機能を割り当て直すことした。各ソフトウェアの機能は数年間の経験を踏まえて大幅に強化されており、より豊富な機能を見通しよく使いやすく提供できるようになったはずだ。

アグラウル氏が描いた、CommandCentral Serviceの機能の移転先を説明した図。バックアップレポーティングの機能は、NetBackupおよび「Veritas Backup Reporter」に、ストレージレポーティングの機能はCommandCentral StorageおよびEnterprise Reporterに、ワークフローの機能はProcess Automation Managerにそれぞれ移され、CommandCentral Serviceは提供終了となる予定

インタビューを終えて

ストレージの仮想化はサーバのストレージに比べてもより進んだ段階にあり、かつストレージに関連するサービスをストレージデバイス上で直接実装する例が増えてきている。ストレージが高機能化するにつれて、管理作業も高度化しており、ヘテロジニアスなストレージ環境を運用するのはこれまで以上に困難になりつつある。

アグラウル氏は、「CommandCentral 5.0を利用することでストレージ選定の主導権がユーザーに移り、発言権が高まることで健全な競争を生み、コストメリットが得られる」ことにも言及した。この点は、標準に準拠し、幅広い製品群を統合管理できるソフトウェアベースのソリューションの大きなメリットであり、ユーザーにとっては「どのベンダの製品に統一すべきか」という問いそのものを回避する手段となりうるという意味できわめて重要なソリューションとなりうる。ただし、そのためには高度化するストレージの機能を十分に活かし、複雑化する環境にきちんと対応できることが不可欠である。CommandCentral 5.0の機能強化は、そのためにどうしても成し遂げなくてはならない進化だったと言えそうだ。