マイクロソフトは9日、2007年7月1日から始まった同社新年度の経営方針を明らかにした。

3カ年の中期経営計画「PLAN-J」の最終年度となる今年度は、デジタルワークスタイル、デジタルライフスタイルの2つの観点から事業を推進していく。組織体制に関しても、2つの領域にフォーカスしたかたちに再編したことを示した。

会見に臨んだヒューストン社長と樋口COO

2005年7月からスタートしたPLAN-Jは、「日本における投資の拡大」、「企業およびコンシューマ双方における技術革新の促進」、「政府、教育機関および産業界とのより深く明確なパートナーシップ」の3点を重点課題に掲げており、地方自治体との連携や、教育・研究機関とのパートナーシップのほか、7拠点だった支店を10支店へと拡大。さらに、マイクロソフトイノベーションセンターの設置などによるパートナー・顧客との連携強化などを進めてきた。

新年度の組織体制

これまでの成果を振り返り、マイクロソフト 代表執行役社長のダレン・ヒューストン氏は、「パートナーや顧客、社内からの声を聞くと、マイクロソフトは顔が見えない会社だといわれる。また、市場において、より目立つ存在であってほしい、もっと日本市場に投資してほしい、イノベーションを市場に展開し、日本のIT産業を変える努力をしてほしい、日本におけるパートナーシップを拡大してほしいと言われてきた。この2年間は、PLAN-Jを通じて、これらの改善を進めてきた。沖縄を除くと、車を使い2時間でお客様のところに行ける体制を整え、沖縄も来年にはその体制が確立できる。トップ11の大学との連携によるCIOフォーラムや、7,000以上の企業とのパートナーシップ、ERPおよびCRM製品の投入などの実績がある。こうした取り組みの結果、日本での顧客満足度は、他の国と比較しても、もっとも高い改善を実現している」と、この2年に渡る成果を示した。

一方、日本においては、依然として家庭とオフィスにおける利便性、生産性の向上といった点でビジネスチャンスがあるとし、「デジタルライフスタイルでは3~5年進んでいるが、デジタルワークスタイルでは逆に3~5年遅れている。日本のそれぞれの状況を捉え、活動していく」(ヒューストン社長)とした。

デジタルライフスタイルでは、Windows Vistaによる提案のほか、MSNとLiveサービスによる新たなサービスの創出、Windows MobileやXbox 360の販売拡大、Media Centerを活用とした提案などを推進する計画だという。

Liveサービスに関しては、今年秋にもワールドワイドでの事業戦略および日本における事業展開について発表する予定であり、その時点で広告モデルを活用した新たな事業戦略に関しても明らかになりそうだ。

ダレン・ヒューストン社長

デジタルワークスタイルに関しては、代表執行役兼COOの樋口泰行氏が説明。「インフォメーションワーカーの生産性向上を、IT基盤からアプリケーションレイヤーまでを含めて実現する。顧客の悩みや、IT戦略における課題を捉え、コスト削減、可視化、生産性向上、コンプライアンスへの対応、セキュリティ対策や高い信頼性の実現といった、顧客が抱える課題に応えたい。また、品質に対しては、第一優先課題として取り組んでいく」とした。

デジタルワークスタイルへの取り組みについて

樋口COOは会見のなかで、今年度中に日本法人に品質専任担当者を配置する考えを示し、「日本のユーザーは品質に対して要求が高い。しかし、マイクロソフトの組織は、プロダクトごとに本社の組織とつながっており、日本において責任を持っているのはどこの部署なのかというのがわかりにくい。これをクリアにするのが専任担当者配置の理由。組織をつなぎ、バーチャルチームとして対応する。日本で使われているミドルウェアとの相性、日本のユーザーの利用環境などを踏まえ、日本からの検証結果をフィードバックしていく体制も作りたい」(樋口COO)とした。

また、同社では今年度中に約400人以上の新規採用を計画しており、「とくにサービス分野で重点的に増員するほか、中堅・中小企業向けビジネスでも増員させる予定」(樋口COO)と、デジタルワークスタイル分野での強化を図る考えだ。

一方、ヒューストン社長は、開発中のウェブプラグイン技術であるSilverlightを公開し、飛行機の路線をインタラクティブに検索できるといったビジネス分野での応用や、デジタルブックの応用例を示して見せ、「デジタルワークスタイルの変革にも寄与する」とした。

デモストレーションをしてみせたSilverlight

そのほか、新年度におけるマーケティング施策の重点分野として、「ビジネスワークスタイル」、「ビジネスライフスタイル」のほか、「Liveサービス」、「ITプロフェッショナル&デベロッパー」、「企業市民活動」、そしてMicrosoft DynamicsやWindows Mobileといった成長製品を対象とした「インキュベーション」の6領域を掲げ、これらの分野に積極的な施策を展開していく姿勢を明らかにした。

樋口泰行代表執行役兼COO