米Dellは5月31日(現地時間)、2008年度第1四半期の暫定決算報告を行うとともに、全従業員の10%にあたる約8,800人のリストラ実施を今後12カ月かけて行うことを発表した。リストラにかかる費用などについては明らかにされていない。同社は今年1月、創業者のMichael Dell氏がCEOの座に復帰し、大規模な経営再建を進める最中にある。Dell氏は「企業にとって人員削減はつねに困難なことだが、現在、そして将来にわたって我々の価値を顧客に届けていくために重要な行為だと認識している」とコメント、ウォール街からつねに求められていた"大リストラ"を実施する決意を表明している。

同社の第1四半期(2-4月期)決算は、売上高が146億ドル、運用利益が9億4,700万ドル、純利益は7億5,900万ドルで、前年同期に比べ、売上高はやや伸びたものの(前年142億ドル)、純利益は逆にわずかながら減らしている(前年7億6,200万ドル)。しかし、前期(2007年度第4四半期、11-1月期)に比べると回復への手ごたえを感じさせる数字となっており、投資家などはおおむね今回の決算を好意的に受け留めている。実際、良い意味で"意外"だった決算の数字と大規模リストラの発表が功を奏してか、翌1日(現地時間)には同社の株価が上昇、Nasdaq市場では27ドル半ばで推移している。

もっともアナリストの中には、同社の不正会計疑惑に対するSEC(米証券取引委員会)の査察が継続中であることや、直販モデルを重視してきた同社が米Wal-Martと提携したことなどを不安材料と捉える向きも少なくない。また、リストラによる経営効果の概算なども公表されていないため、実際にリストラが実施され、その効果が目に見えて表れるまでは様子見、というのがウォール街の大方の反応のようだ。

Dellのライバルであり、コンシューマーPC部門で現在業界トップの座にある米Hewlett-Packardは2005年、Hurd CEOの下で1万5,000人規模のリストラを敢行し、経営体質を大きく改善した実績をもつ。今回のDellのリストラ策がどこまで効果を示すことができるのか、Dell氏は今後、より厳しいプレッシャー下で経営の舵取りを迫られることになる。