インターネットを導入路として、ユーザーをテレビに引き寄せるには何が重要なのか。

「まずは、中核となるターゲットを決めていかなければならない。テレビは、桁違いに視聴者が多い。インフラとして、すでにテレビは番組を流せば自動的に伝達できるというしくみがあるわけだが、インターネットの世界では、探し出してもらわなければならない。どのような層に探し出してもらうか。そのあたりが、宣伝や、視させるという努力の仕方が地上波テレビとは違う。(ネットでは、サイトやコンテンツの窓口が)ポータルから検索に変わったとき、コンテンツへのアプローチは劇的に変わった。テレビもチャンネル数が少なかった時代には、番組は探し出さなくても、リモコンのボタンを切り替えるだけで、欲しい番組に接触してもらえていた。しかし、たとえば、ケーブルテレビなどの場合、視たい番組を探すのはかなり苦労するのではないか。その点、検索が一般化してくれたおかげで、我々としては楽になった反面、番組のキーワード、中核になるところにある程度際立ったものがないと、探してもらえない。力点をどこに持ってくるかが悩みの種でもある」。

吉田氏は、テレビとネットの連携の端緒の一つとして、「適しているのはお笑いかアイドル」と考えている。これらに対しては「個人の志向性が大変強く、視るモチベ-ションが高い」からだ。

昨年10月末から開始している番組「アイドリング!!!」は、いわば「アイドルの卵」である9人の女の子たちを、複数のメディアを利用して一人前のアイドルに育て上げていこうというのが基本コンセプト。CS放送のフジテレビ721でまず夕方に放映、フジテレビ739で深夜に再放送、「フジテレビ On Demand」、さらには地上波でも「アイドリング!!!日記」との番組名で深夜に放送される。彼女たちはアイドルになるため、さまざまなジャンルでお互いに競い合う。

「アイドリング!!!では、出演者の変化を楽しむことができる。いわば、相撲で、序の口から横綱までの課程を追っていくようなものだろう。お笑いやアイドルは、このような変化自体がコンテンツになるのでは」――「オレたちひょうきん族」「笑っていいとも」をはじめ、「夢で逢えたら」「笑う犬の生活」など、数々のお笑いバラエティーを担当してきた吉田氏の分析だ。

ネットへの本格展開はこれからだが、フジテレビの場合はCS放送をすでに10年展開している実績がある。

「CSは通信の一種だが、つくり方はテレビだ。160万人の有料加入者数をもち、地上波とは異なるマーケットを手がけてきた。地上波、CS、ネットのオンデマンドという流れで、垂直的な広げ方で努力してきた。CSの段階では、加入してもらえばさまざまな番組は見られるわけだが、今回目指しているのは、一つ一つのコンテンツまで有料でみてもらえるかどうかだ。この点に、一つの挑戦として取り組んでいく」。