実家で和菓子屋を営む父親が急死したことで、突然の相続問題に直面した三兄弟の四ツ葉桜子・初郎・優二。和菓子屋を継ぐのか、土地を3等分して店をたたむのか、財産価値9,200万円の実家を巡り、揉めていく3人のストーリーから円満に相続するためのコツを学びます。
第3回は「家業の手伝いや介護をした分、多く相続できる?」です。
どんな財産に相続税がかかるのか
「法律上は3等分だとしても、少しは遠慮してほしい」というみどりさんの気持ちはよくわかります。お店や会社を経営している場合、いろいろな作業や段取りなど、見えないところで貢献している人が多いからです。みどりさんの貢献なくしては、和菓子屋四つ葉の維持はできなかったでしょう。
このような貢献をした人には、「寄与分」というものが認められることがあります。
寄与分は、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産の維持や増加に特別な貢献をした場合、その貢献度に応じて相続分を増やす制度です。民法第904条の2に規定されています。
寄与分が認められる要件
寄与分が認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
(1)特別の寄与……通常期待される範囲を超える貢献があったこと。
(2)財産の維持または増加……被相続人の財産が減らなかった、または増えたこと。
(3)因果関係……寄与行為と財産の維持・増加に直接的な関係があること
親の介護をしていた場合の寄与分
日本人の平均寿命は、男性が81.09歳、女性が87.14歳(2023年、厚生労働省調べ)。長生きは喜ばしいことですが、親の介護をする人も増えています。長年介護をしてきた人が、相続の際はその貢献を認めてほしいと考えるのは理解できます。
しかし残念ながら、親と同居していたり面倒を見ていた程度では、寄与分を認められないケースが多いのです。寄与分が認められるためには、通常の親族間の扶養義務を超える特別な貢献が必要です。例えば、長期間にわたる無償の介護や、被相続人の事業を無償で手伝った場合などが該当します。