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4 自動車業界 ニュースの見方

“脱ルノー支配”で再建へ - 日産はどこへ向かうのか

JUL. 09, 2025 08:00
Text : 佃義夫
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イヴァン・エスピノーサ新体制で経営再建を目指す日産自動車。資本関係の見直しと株主総会を経て、“ルノー支配”からの脱却を果たした日産は今後、どこへ向かうのか。鴻海との協業を含めた合従連衡にも拍車がかかりそうだ。

  • 日産自動車の株主総会

    日産を率いるイヴァン・エスピノーサ社長

株主総会で決まったことと今後への影響

2024年度連結決算の最終損益が6,708億円の巨額赤字に転落した日産。4月には急遽、イヴァン・エスピノーサCPO(チーフプランニングオフィサー=商品企画責任者)が昇格して社長CEOに就任し、5月に再建計画「Re:Nissan」を発表した。

国内外7工場の削減や2万人の人員削減など、大きな痛みを伴う再建に踏み込んだエスピノーサ体制の日産だが、この4~6月(2025年度第1四半期)も2,000億円の赤字、自動車事業のフリーキャッシュフローはマイナス5,500億円と厳しい状況となる見込みだ。2025年6月の第126回定時株主総会は、エスピノーサ新社長にとって初めての大きな試練だった。

またもや経営危機に陥った日産だが、社長交代でこの危機を乗り切り再生できるのか。今回の株主総会でも、独立社外取締役を含む取締役会メンバーへの不信感と株価低迷、赤字による無配転落で鬱積した株主から「経営批判」と「再建への期待」の声が渦巻いた。

だが、この株主総会の最大のポイントは「ルノーのジャンドミニク・スナール会長が日産取締役を辞したことで、四半世紀に渡るルノー支配が実質的に終焉。日産は自力再生ができなければ、どこに向かうのか」だった。

具体的には、会社提案の第1号議案で定款の一部変更と取締役会副議長の廃止を決め、第2号議案で取締役12名を選任。ゴーン元会長の後を受け、2019年から日産の取締役を続けてきたルノー会長のスナール氏が退任すると同時に、スナール会長のためのポストだった取締役会副議長の座が廃止となった。

  • 日産自動車の株主総会

    日産自動車の第126回定時株主総会

日産の取締役会は、8名の社外取締役は再任となり、社内取締役では日産側の内田誠前社長と坂本秀行前副社長が退任し、代わりにエスピノーサ社長・CEOと赤石永一執行役チーフテクノロジーオフィサー(CTO)が新任となった。これに対し、ルノー側ではスナール会長とピエール・フルーリォ筆頭社外取締役が退任し、ヴァレリー・ランドン氏とティモシー・ライアン氏が新任となった。

ルノーが指名した新任取締役は、2名ともルノーの直接的な関係者ではない。つまり、これにより、日産は取締役会メンバーと資本構成の双方でルノー支配から脱したことになる。

日産とルノーの長い歴史を振り返る

日産とルノーが資本提携に調印したのは1999年3月のこと。当時の業績悪化による連結赤字と2兆円を超える有利子負債を抱えた日産の再建・救済に手を差し伸べたのがフランスのルノーだった。ルノーが6,430億円を出資して36.8%の筆頭株主(その後43%に)となり、COO(最高執行責任者)としてルノーから派遣されてきたのがカルロス・ゴーン氏だったわけである。COO就任から1年後の2000年には、日産社長として再建計画「NRP」(日産リバイバルプラン)で日産をV字回復させた。それ以来、ルノー・日産の日仏連合は続いてきた。

ゴーン体制の日産が長期にわたる中で、ゴーン氏は三菱自動車工業を傘下に収め(2016年)、ルノー・日産・三菱自の会長に君臨して世界制覇の野望を抱き、グローバル生産・販売拡大路線に拍車をかける。だが一方で、長期支配の裏で進んでいた特別背任事件によりゴーン元会長が突然の逮捕(2018年11月)、レバノンへの逃亡(2019年12月)となり、ゴーン時代は終わった。

日産はゴーン体制による世界拡大路線のツケを払わせられる。世界生産・販売のムリな拡大は業績悪化につながり、ポストゴーンの西川体制も自らの報酬疑惑で退任を余儀なくされ、日産のガバナンスは混乱。そんな中、ゴーンの後を継いだスナール・ルノー会長の日産取締役会での存在感は大きなものだった。5年前の2019年12月に就任した内田誠前社長・CEOとアシュワニ・グプタCOO、関潤副COOの人選にも、スナール会長の影響力は大きかったと見られている。

一時はフランス政府の意向もあり、ルノーによる日産統合の話がでたこともあったが、一転して2023年11月、両社は資本関係を見直し、ルノーが出資比率を43%から引き下げ、15%ずつを相互出資する形となった。ここでルノーと日産の資本関係が対等となったわけだが、さらに2025年3月にアライアンス契約を見直し、両者が相互出資しなければならない最低限の比率を15%から10%に下げるとの発表があった。

資本関係の見直しと今回の株主総会を経て、日産とルノーの関係は1999年以来の“ルノー支配”から明確に脱した。日産はルノーが分社化して設立した(電気自動車)EV会社「アンペア」への出資も見送った。

脱ルノーの日産は誰と組むのか

ルノーでは、ミシュラン出身のスナール会長と共にトップにあったルカ・デメオCEOが辞任し、フランスのラグジュアリー大手であるケリングのCEOに転身するなど、経営陣を刷新する方向へと進んでいる。またルノーは、7月1日に会計処理を変更し、保有する日産株で95億ユーロ(約1.6兆円)の損失が発生すると発表。これは、経営不振で株価が低迷する日産株を会計上の持分法適用対象から外し、2025年1~6月期決算に損失を計上したことによるものだ。ルノーと日産が資本提携による深い関係から、ビジネス上の協業関係に変わったことを示す出来事である。

日産としては、再建計画の中で、三菱自も含めたルノーとの提携について、グローバル地域展開で協業を継続することにしているが、“脱ルノー支配”により、ホンダとの再接近や台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)との連携も含め、新たな連合を組むことでの生き残りを目指す方向も生まれたと受けとめている。

特にホンハイは、内田前社長就任時にトロイカ体制の一角として副COOに就任したものの、すぐに退任し、現在はホンハイのEV事業を率いる関潤氏が、元・日産プロパーで日産を熟知しているだけにキーマンとなりそうだ。

ともあれ、最近「やっちゃえ、日産」のCMが盛んに流れているが、ルノー離れにより「どこと、やっちゃうの?」が大きな関心事となっている。


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※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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