ドバイ総合研究所ホールディングスは、「世界の富裕層・移住先トレンド白書 2026年版」を8月31日に発表した。同調査は、2026年7月11日時点の公開情報をもとに作成したもの。

  • 世界の富裕層移住者数の推移

    世界の富裕層移住者数の推移

世界の富裕層移住者数は、2025年の暫定14万2,000人から、2026年には16万5,000人へ増えると予測されている。こうした中、富裕層の移住先選びにも変化が見られる。

税率の低い国へ生活のすべてを移すのではなく、「暮らす国」「事業を行う国」「子どもを教育する国」「資産を管理する国」など、目的に応じて複数の国を使い分ける動きが広がっている。

同報告では、UAE(アラブ首長国連邦)、シンガポール、ポルトガルなどの主要な移住先について、単純な人気ランキングではなく、「どのような目的の拠点として適しているのか」の視点で比較した。

2026年の富裕層移住者数は16万5,000人と予測され、2025年の暫定14万2,000人を上回る見通し。2025年は暫定値、2026年は予測値だが、国境を越えた生活・事業・資産配置への関心が続いていることがうかがえる。

  • 富裕層の国際移動を支える構造的競争力

    富裕層の国際移動を支える構造的競争力

富裕層向けの移住・投資プログラムに関する調査や支援を世界各国で行うHenley & Partners(ヘンリー・アンド・パートナーズ)が2026年1〜5月に取り扱った申請では、86国籍の申請者が47の制度を検討し、28%以上はすでに国籍国以外に居住していた。これは世界全体を表すものではないが、海外居住者が別の居住権や市民権を追加で検討する動きを示している。

同報告では、日常生活と家族の暮らし・事業と人材の拠点・子どもの教育・資産管理と通貨分散・制度変更や地政学的変化への備えの5つの役割に整理。

Henley & Partnersの2026年評価では、UAEは富裕層の国際移動を支える構造的競争力で85.3点を記録した。これは実際の移住者数ランキングではなく、税制、法の支配、生活の質、移住制度、家族帯同、地政学的安定性、資本移動などを評価した独自指標。

2025年にはUAEへ裕福層が純流入9,800人と予測され、長期居住制度、事業環境、航空アクセス、英語で生活しやすい環境などをまとめて検討できる点で、主要拠点の候補になっている。

また、シンガポールは、アジアの事業・金融拠点として高い競争力を持つ一方、外国人が現地で働くために必要な就労ビザ「Employment Pass(EP)」では一定の給与基準を満たした上で、企業の人材構成などを点数化して審査する「COMPASS」の基準をクリアする必要がある。

ポルトガルでは、投資を通じて居住許可を取得できる制度「ARI(投資活動のための居住許可)」があるが、現在、不動産購入は対象となっていない。移住制度は変更されることがあるため、過去の情報を前提に判断せず、現行制度や滞在要件、更新条件を確認する必要がある。

このように、移住先によって制度やメリットは大きく異なるため、同報告では、国名だけで比較せず、生活や事業、教育、資産管理、予備の選択肢という目的別に整理している。


かつての「海外移住」といえば、生活の拠点そのものを別の国へ移すイメージが強かったが、富裕層の国選びはより複雑になっているようだ。暮らし、事業、教育、資産管理など、目的に応じて複数の国を使い分けるという考え方は、グローバル化する資産形成や働き方の変化を映しているのかもしれない。