「人生100年時代」は、もはや理想論ではなく現実になりつつあります。『東大名誉教授が教える 死なない生き方』(北村俊雄/日本経済新聞出版)では、細胞生物学や免疫学の研究に携わり、iPS細胞研究にも関わった東大名誉教授が、最新の生命科学やアンチエイジング研究をもとに、「健康寿命100歳」を目指すための生活習慣を解説。運動や睡眠、食事、ストレス対策まで、長く元気に生きるための実践法を紹介しています。
今回は「記憶力向上に効果がある早歩き」について。
早足で歩くと記憶力向上?
先日、1日に30〜40分早足で歩くと、海馬が大きくなるという論文を知り合いの著名な脳科学者から教わった。
海馬は脳の中心にあり、記憶を司る場所である。論文では、ルームランナーで徐々に歩行速度を上げていく群と、ヨガやストレッチ、バーベルなどを行う対象群で、開始前と6か月後、1年後に脳を調べている。いずれも運動は週に3日、40分程度の時間だ。
ヨガ群は年に約1.4%海馬の体積が減少した。これは50歳以上の人の標準である。一方、早足歩きを1年間続けた人の海馬の体積は2.0%も増加したというのである。これは驚きの結果と言える。記憶と学習能力の向上に役立つことが知られている脳由来の神経栄養因子も増加し、記憶も改善したという。この話を聞いてから、早足で歩くことを意識している。
神経栄養因子の増加は対照群に比べて有意な差はなかったが、早足で歩いたグループでは、記憶力の向上と神経栄養因子増加に相関があったことから、運動によって神経栄養因子が増加して、記憶力が改善したと結論している。
運動によって血流が良くなり、海馬のサイズが大きくなり、記憶力が改善することは以前からマウスやヒトで報告されていた。
今回の論文では、運動によって海馬の体積が増加するが、増加するのは海馬のうち記憶の固定に重要とされている前部だけであり、海馬後部は変化しなかった、また視床など脳の他の部分の体積も変わらなかったという。
『東大名誉教授が教える 死なない生き方』(北村俊雄/日本経済新聞出版)
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