2025年秋、東京・秋葉原で開催されたシャオミの新製品発表会、そして一般ユーザー向けに開催されたイベント「Xiaomi EXPO 2025」。スマートフォン「15T」シリーズをはじめ、ロボット掃除機やチューナーレステレビなど多彩な製品群に加え、ひときわ注目を集めたのがシャオミ・ジャパンの副社長、鄭 彦(てい・げん)氏の登壇だった。そんな鄭氏にシャオミの未来について聞いた。
世界9億台のエコシステムから日本へ
―― シャオミは創業から15年を迎えました。世界的に大きな飛躍を遂げてきましたが、その歩みは決して平坦ではなかったのではないでしょうか。この15年を振り返って、どのように総括されますか。
鄭氏:その通りです。決して順風満帆ではありませんでした。スマートフォン市場は常に激しい競争にさらされ、家電やIoTへの拡大も試行錯誤の連続でした。しかし挑戦のたびに、新しい確信と学びを得ることができたのです。その積み重ねの結果、2025年第2四半期には過去最高の成長を達成し、5四半期連続で30%を超える成長率を記録できました。これは私たちの方向性が正しいという証拠だと考えています。
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シャオミ・ジャパン副社長 鄭 彦(てい・げん)氏
1980年 中国上海生まれ 45歳。同済大学電気工学部卒。日本での職歴は、HUAWEI JAPAN(華為技術日本株式会社)、レノボ・ジャパン合同会社などを経て、2024年6月にXiaomi Japan(小米技術日本株式会社)に入社し、現在に至る
―― そこまで高い成長を可能にした原動力はどこにあるのでしょうか。
鄭氏:最大の要因は“基盤技術への継続的な投資”にあります。過去5年間でAI、OS、チップセットなどに110億ユーロを投資しました。そして今後5年間でさらに240億ユーロの投資を計画しています。こうした取り組みにより、スマートフォンでは世界3位、ウェアラブルでは世界1位、タブレットもトップ5に食い込むまでに成長しました。短期的な価格競争ではなく、技術の厚みこそがブランドを持続的に成長させるのです。
次の成長軸「Human Car Home」
―― スマートフォン市場が成熟する中で、次の成長曲線として掲げる「Human Car Home」。これは具体的にどういう世界を意味するのでしょうか。
鄭氏:私たちの次の成長軸は「Human Car Home」です。これは人が日常的に接するデバイス(Human)、自動車(Car)、そして家庭(Home)をOSとAIでシームレスにつなぐ構想です。
例えばスマートフォンが家のエアコンを操作し、車が自動で最適ルートを学び、家電と連動する。生活の95%以上を網羅する仕組みをつくりたいと考えています。EVの投入はその一部に過ぎません。
―― グローバルで見れば強力なライバルも多い。そうした中で、シャオミの独自性はどこにあると考えますか。
鄭氏:私たちはスマートフォンメーカーでもあり、家電メーカーでもあり、EVメーカーでもある。けれど、単に“全部を作っている”のではなく、“すべてをOSとAIで束ねている”ことが最大の違いです。エコシステム全体が生み出す体験が競合との差別化ポイントです。
―― 製品ラインナップが増えるほど、ブランドとしての一貫性が求められます。
鄭氏:確かにすべてを自社で生産しているわけではありません。しかし我々は“デザイン言語の統一”にこだわっています。外部パートナーと協力しつつも、Xiaomiの世界観に合致するデザインを貫いています。ユーザーが製品を手にした瞬間に“あ、これはシャオミだ”と感じられる、そういう一貫性を大切にしています。
日本市場への挑戦
―― 日本市場における大型家電の投入は大きな注目を集めています。戦略を教えてください。
鄭氏:大型家電は急いで導入するのではなく、“日本仕様に最適化”して投入する方針です。日本は100V電圧で、住宅のキッチンスペースも独特。さらに電安法(電気用品安全法)など規制も厳しい。だからこそ拙速ではなく、来年後半の投入を目指して調整を進めています。急がば回れ、です。
―― グローバルでの評価は「高品質を手頃に」ですが、日本は流通コストが高く価格調整が難しい市場です。
鄭氏:確かに日本市場のコスト構造は独特です。しかし私たちのミッションは“良いものを適正価格で”提供すること。その理念は揺るぎません。小売パートナーとともに、いかに現実的に理念を実現するかを模索しています。
―― 5年後、2028年に日本でどんな姿を描いているのでしょうか。
鄭氏:2028年までに「Human×Home」を日本市場で完成させたいと考えています。本国では500種類以上のAIoT製品を展開していますが、日本ではその約3分の1しか導入できていません。5年後には本国並みのラインナップをそろえ、日本の消費者にフルエコシステムを提供したいです。
サービスも含めた“所有体験”
―― 現在は製品を買うだけでなく、サービスも含めた体験が重要になっていますね。
鄭氏:その通りです。だからこそ、直営店「Xiaomi Store Japan」を強化しています。2025年内にさらに3店舗、2026年には大阪や名古屋にも出店予定です。200以上の製品を実際に体験できる場所として、消費者にブランドの世界観を届けたいと考えています。日本の消費者は、体験すれば必ず理解してくれると私は信じています。
―― 新しい製品群の中で特に注目しているのはどこでしょうか。
鄭氏:フラッグシップのスマートフォン「Xiaomi 15シリーズ」は、適正価格でハイエンド体験を提供する象徴です。カメラやAI機能を強化し、日常の利便性を大きく高めています。単なるスペック競争ではなく、“使って便利だ”と実感できる体験を提供することが重要です。
リーダーとしてのビジョン
―― 最後に、経営者としてのビジョンを改めてお聞かせください。
鄭氏:私のビジョンは“製品を売って終わりにしない”ことです。すべての製品がOSとAIでつながり、暮らしをより便利に、より快適にすること。これこそが我々のゴールです。基盤技術への投資を続け、日本市場に合った最適化を進め、Human Car Homeを実現する──その未来を必ずお見せしたいと思っています。











