富士通研究所は、遠隔地からファイル共有サーバを利用する際のファイルアクセスをソフトウェアで高速化するデータ転送高速化技術を開発したと発表した。
従来、クラウドに集約されたファイル共有サーバを遠隔地から利用する際に、ネットワークの遅延によりファイルのアップロードやダウンロードに時間がかかるという課題があった。
そこで同社ではこれまで、遠隔地間のデータ転送を高速化する技術として、一度送信したデータを2回目以降省略する重複除去技術を開発してきたが、ファイル共有プロトコル(CIFS、SMB)特有の処理があるため、効果が限定的だったという。
ファイル共有プロトコル(CIFS、SMB)特有の処理と課題としては、多数のファイルを含むフォルダーのコピーでは、ファイルごとに属性情報やファイル取得の通信が発生するため、遅延が大きいネットワーク環境でフォルダーを転送すると各通信の遅延が累積して遅くなる点や、比較的大きなサイズのファイルを転送する場合、転送するファイルを数十KBといった小さなデータに分割して、各データにヘッダー情報を付加するが、このヘッダーは毎回変更される情報であるため、過去に同一のデータを転送したことがあっても異なるデータに見えるため、重複除去が効かない点があるという。
そこで同社は今回、クライアント・サーバ間の通信を中継するソフトウェアを新たに導入することで、遠隔ネットワーク上で複数のファイル名、ファイルサイズなどの情報取得で発生する通信回数を減らし、ネットワーク遅延の影響を低減する技術を開発した。
同社の社内実験では、容量の小さな多数のファイル転送を最大で10倍高速化できることを確認したという。さらに、ヘッダーの分離技術により、大容量ファイルの転送を最大で従来の20倍高速化することも確認した。
今回、開発した技術では、サーバとクライアントの両方にデータ転送高速化のモジュールを設置し、以下の手順で高速化する。
[サーバ側のモジュール]
(1) 複数ファイルを含むフォルダーのダウンロードが実行されていることを認識
(2) ダウンロードするすべてのファイルを一括してクライアントの代理で先読み
(3) 先読みしたファイルはまとめてクライアント側のモジュールに転送
[クライアント側モジュール]
(4) ファイル共有クライアントからのデータ取得の要求にサーバの代理で応答
これにより、遠隔ネットワーク上で複数のファイル名、ファイルサイズなどの情報取得で発生する通信を大幅に減らし、ネットワーク遅延の影響を低減することができるという。
同社では、富士通での社内実証を経て、2015年度中にデータ収集・統合ソフトウェアの転送高速化機能として製品搭載を目指す。