アドビ システムズは6月13日、東京・六本木で「Adobe Digital Marketing Forum 2013」を開催した。企業でマーケティング業務に関わる約1500人が参加した。

アドビは2009年にアクセス解析ツール「SiteCatalyst」などを提供するOmnitureを買収し、デジタルマーケティング分野に本格的に進出。その後、各製品群をアクセス解析をメインとした「Adobe Anlaytics」、コンテンツ配信を最適化する「Adobe Target」、ソーシャルメディアの管理・分析を行う「Adobe Social」、広告展開の統合管理「Adobe Media Manager」、Webコンテンツ管理の「Adobe Experience Manager」の5つのソリューションに再編し、これらを統合したサービスとして「Adobe Marketing Cloud」を提供している。

基調講演に登壇したアドビ システムズ 代表取締役社長のクレイグ・ティーゲル氏は、同氏が日本法人に就いた5年前を振り返り「当時は、顧客との話はクリエイティビティとコンテンツに終始していた。それが今は、デジタルマーケティングに変わってきた」と述べ、デジタルマーケティングには「(デバイスに関わらず)あらゆるところで顧客の心をつかむこと、直感に頼るのではなく将来予測のためにデータを活用できる高度な技術の採用、組織内の縦割りを壊し得られたインサイトを共有するといった点と点をつなぐこと」の3つの命題があるとした。

その上で、デジタルマーケティングにおいても「アドビは皆様の信頼できるパートナーでありたいと思っており、その中において大きな成功や成果を皆様の企業にもたらすことを約束する」とフォーラム開催の挨拶を行った。

アドビ システムズ 代表取締役社長のクレイグ・ティーゲル氏

続いて登壇した米アドビ システムズ デジタルマーケティング プロダクトマネージメント担当バイスプレジデントのビル・イングラム氏は、まず個人的な話として「ラクロスをする息子が試合で、とあるスティックを欲しいと言った。私はそれをオンラインで購入し、翌日の10時に届いた。ちょっと前なら1週間はかかっていのにと私は感心したが、息子は違った。彼は、その試合に、つまり欲しいときに手にしたかったわけだ」と紹介。消費者である人々の「期待値」が変わってきているという課題をあげた。

「今すぐに」「手にしているでデバイスで」「見たいものを見たい」「欲しいものを手に入れたい」というデジタル体験における期待値が変化しており、「このような期待値に応えていくことは難しいことだが、どのように応えるかが重要になっている」と同氏は言う。

米アドビ システムズ デジタルマーケティング プロダクトマネージメント担当バイスプレジデント ビル・イングラム氏

さらにデジタル体験での「Millisecond(ミリ秒)」にも触れ、たとえば購入ボタンを押すといった「ミリ秒単位」のアクションを野球にたとえ、ピッチャーから投げられたボールを目でとらえる前に、バッターの身体が反応してバットを出し、そして最後のバットとボールが触れる"ミリ秒"となるように、そこに至るまでの一連の流れが重要だと指摘。「このミリ秒を捉え、4割打てれば打者としては殿堂入りだ。しかし、デジタルマーケティングでは、今回もホームラン、次も、その次もと毎回成功しなければならい」とイングラム氏。

そして「The Last Millisecond」にとって、デジタルマーケティングに取り組む組織には、技術と縦割組織の人の壁という2つの課題があるする。5つのソリューションを統合したAdobe Marketing Cloudで、その課題に応えるアドビだが、さらに同氏は「統合したことで歩みを止めるつもりはない。顧客のデジタルマーケティングをより迅速に成果を得られるように改善していくために、組織内の壁を打ち破り、部署間のコラボレーションやインサイトの共有を進めていくことが必要。我々はこれらを課題として捉え、エンジニアリングの目標としている」と語った。

基調講演に続き、架空の企業を想定したデモンストレーションが行われた。内容は、ある日、製品の購入コンバージョン率が50%も減少したというレポーティングアラートから始まる。企業内の各部署・各担当者が、要因を分析し、分析から浮き彫りになった層を新たなセグメントとして定義、そのセグメントに対してサイトコンテンツの改善やA/Bテストを実施、ソーシャルメディアで拡散するといった流れを、ダッシュボードを使った連携によって組織内の縦割りを超えて実現できる点をアピールした。

また、組織の担当者と外部のクリエイターがAdobe Marketing Cloud(Experience Manager)とAdobe Creative Cloudを利用して、広告クリエイティブの依頼や納品、修正指示などがシームレスに行えるといったデモも行われた。

Creative Cloudからクリエイティブドラフトにメッセージを添付して、Marketing Cloudと共有

同日、プレス向けに行われた質疑応答では、日本のデジタルマーケティング分野でのコミットメントについての質問に、「日本のマーケットは大きな投資の対象。クリエイティブ分野で大きなビジネスを構築したように、同じことをデジタルマーケティング分野でも実現したい。我々はローカル独自のクオリティエンジニアリングリソースも持っており、ソーシャルメディアで例を挙げれば、日本語のテキスト解析にも積極的に取り組んでいる(マーケティングクラウド製品日本市場担当 統括責任者 ブレント・ワトソン氏)」と日本市場に対する期待と積極的なコミットメントを述べた。

1月に国内提供が開始された「Adobe Social」では「ミクシィとの提携を進めており、年内にはmixi対応を予定している(シニア プロダクトマネージャー兼エバンジェリスト 上原 正太郎氏)」という。Adobe Socialのアカウント連携はFacebookやTwitter、Google+など主に米国市場中心であったが、日本市場対応のひとつとも言えるだろう。

このほか同日のフォーラムでは、Adobe Marketing Cloud導入企業の事例紹介など13のセッションが行われた。