富士通は7月18日、ITで農業経営を見える化・効率化できる食・農クラウド「Akisai (日本語通称 : 秋彩)」を10月より提供すると発表した。同社はこれまで約3年にわたり、みかん栽培にスマートフォンやクラウドを活用するなど全国10ヶ所で実証実験を行っており、その成果としてのサービス提供となる。
同日には、富士通 執行役員常務 ソフトウェアインテグレーション部門長 山中 明氏、ソーシャルクラウド事業開発室長 阪井 洋之氏による記者説明会が行われた。
山中氏は、クラウドについて「所有から利用への流れが加速している」として、同社のクラウドビジネス事業を紹介。SIやハードウェア費用を含むとしつつも2011年度には売上が約1000億円と前年比の3倍となってことに触れ、特に新規事業やCRMといった企業内のフロント業務での採用が増えているとした。逆に基幹系での採用はまだ少ないという。
また、同社のクラウドの強みとして「インフラからアプリケーションまでを垂直統合で最適にインテグレート」している点にあるとした。今回、発表された食・農クラウドも同社が手がけるソーシャルクラウド分野として提供される。
今回提供が発表されたのは、農業や畜産などの経営・生産・販売に関わる中で、生産マネジメントと集約マネジメントを支援するサービスとなる。食・農クラウド「Akisai」は、最終的には経営・生産・販売に関わる全般を包括的に支援するサービスとなる予定で、今夏から下期にかけて順次提供を開始する予定(一部提供開始しているサービスもある)。
生産マネジメントは主に農業生産者を対象としており、生産や出荷計画、作業実績、コストや品質のデータ蓄積などの機能から、生産や品質の"見える化"を支援するものとなっている。メインターゲットは、個人農家ではなく法人で経営している売上規模1億円以上となる。一方の集約マネジメントは食品加工や卸などの流通が主な対象。品質管理や需給調整などの機能から4定(定時・定量・定品質・定価格)の実現を支援する。
これらのサービスは、生産現場の作業実績や生育情報といったデータをモバイル端末やセンサーを使ってクラウド上に収集して蓄積・分析することで、農地ごとの品質やコストの見える化を実現するもの。また、これらのデータを活かし、生産計画に対する実績の振り返りや、次の営農計画への反映を行うことで、収益や効率性を高める企業的農業経営が可能となるという。
同社では10月にサービス提供を開始し、2015年度までに売上累計150億円、2万事業者での採用を目標としている。サービス提供価格は、生産マネジメントが初期費用5万円、月額4万円から。集約マネジメントが初期費用5万円から、月額10万円からとなっており、ともに月額費用は利用ID数によって変動する。なお、利用料は基本的にクラウドサービスの料金となっており、現場で必要となる端末やセンサーは別途用意する必要がある。
当日は、屋内ではあるが、簡単なデモが行われた。1例目は、作業者が野菜の生育状況をスマートフォンで撮ってクラウドに送信。送信された画像にはGPSで位置情報も付加されており、どこの農地の様子かも判別できるようになっている。クラウドのサービス画面では、送信された画像を確認するとともに過去の画像と比較、育成方法のコメントなどが可能。以下は、架空の浜松町農場でのデモ写真。
また別の例では、作業者がその日の作業内容をタブレットに入力し、クラウドにアップ。クラウドでは、その作業者の作業場所や作業内容が確認できるほか、複数人の作業者の内容から農地ごとの人件費の合計や資材費、単位面積当たりにかかった費用といったコスト集計一覧が確認できる。