EMCジャパンは12月15日、ストレージに保存されたデータを利用頻度に応じて自動的に仕分けする「FAST(Fully Automated Storage Tiering: 自動階層化)」技術を搭載したソフトウェアの提供を開始した。同社のストレージ製品群「Symmetrix V-Max」「CLARiX CX4」「Celerra NS」のそれぞれに適用できる「FAST Suite」として提供される。今年4月に発表されていた技術だが、ストレージに実装されるのはこれが最初となる。

EMCジャパン テクノロジー・ソリューションズ本部 プロダクト・ソリューション統括部 プロダクトマーケティング部 部長 中野逸子氏

EMCジャパン テクノロジー・ソリューションズ本部 プロダクト・ソリューション統括部 プロダクトマーケティング部 部長 中野逸子氏は「今から4年後にはデータ量が5倍になるとも言われているが、増え続けるデータを効率よく管理することで、コストの大幅な削減を図ることができる」とし、データの利用頻度に応じたストレージの自動階層化を行うFAST技術は「ストレージ効率化を促進する技術基盤」であるという。

FASTを搭載したストレージは、「適切なタイミングで、自動的に適切な保存領域へ」とデータを自動で仕分けする。アクセス頻度の高いデータは高価なフラッシュに、ほとんどアクセスされないデータはSATA/ファイバチャネルに、といった仕分けを、運用ポリシーに従って自動で行う仕組みをもつ。たとえば、とあるeコマースサイトでは週末のある時間帯に注文が急激に増える(高いI/O要求が発生する)が、従来のストレージではこういった変化に迅速に対応することができない。しかしFASTであれば、サーチレベルに応じたデータの采配が可能であるため、一時的にフラッシュの容量を増やすことができ、突発的な注文増に難なく応じられるというわけだ。

EMCジャパン テクノロジー・ソリューションズ本部 プロダクト・ソリューション統括部 プロダクト・マネージャー 若松信康氏

EMCジャパン テクノロジー・ソリューションズ本部 プロダクト・ソリューション統括部 プロダクト・マネージャー 若松信康氏によれば、たとえば全ディスクをファイバチャネルで構成しているような場合、わずか4%のディスクをフラッシュに変え、FASTを適用することで「ドライブに対するI/Oの競合を68%削減、2.5倍速いドライブ応答時間」を実現できたという。これは従来の1/3のリソースで、同じレベルのI/O要求に対応できることを指す。また、コスト面で言えば、Symmetrix V-Maxの場合、「システム購入コストを20%、維持/運用コストを43%削減でき、3年間のTCOを27%削減できる」(若松氏)という。

同社によれば、FASTは今後も「さらなる進化を遂げていく」(若松氏)予定で、さらに効率を高めるべくファイル単位ではなくブロック単位での自動階層化や、圧縮や重複除外、スピンダウンといった技術との組み合わせによるデータ量と消費電力の同時削減、データのの保存先をアーカイブやクラウドまでに拡張した自動情報ライフサイクルマネジメントの実現、などを視野に入れてすでに開発中とのこと。自動化によるストレージ効率化で、増え続けるデータ量と管理負担を軽減することをめざす。

FAST Suiteの運用は3ステップ。ウィザードベースで簡単に行える。まずはストレージリソースをそれぞれプール化し、ポリシーを定義、最後にアプリケーションを割り当てる

価格はSymmetrix V-Max用FAST Suiteが283万円~、CLARiX用FAST Suiteが61万円~、Celerra用FAST Suiteが513万円~となっている。