上場企業の有価証券報告書や株式を5%以上保有した場合に提出される大量保有報告書を無料で閲覧できる金融庁のインターネットサイト「EDINET」で、"虚偽"の疑いのある大量保有報告書が公開され続けている。金融庁はすでに、同報告書でトヨタ自動車など6社の株を各51%を取得したとするテラメントに対し、訂正報告書の提出を命じたが、仮に訂正報告書を出しても、金融商品取引法の規定では虚偽の報告書を削除できない。今後議論を呼びそうだ。

金融庁のインターネットサイト「EDINET」では、いまだに虚偽の疑いのある大量保有報告書が掲載されている

内容に虚偽の疑いのある大量保有報告書は、川崎市のテラメントが今月25日に提出。同報告書では、昨年12月10日、トヨタ自動車、フジテレビジョン、三菱重工業、ソニー、日本電信電話(NTT)、アステラス製薬の6社について、「発行株式の51%を取得いたしましたのでご報告申しあげます」とし、これらの企業の株の過半数を取得したと報告している。

トヨタ自動車の株式の保有目的については、「(以下、原文ママ)ITは現在自動車分野にまで及ぶに至りました。これらIT分野の発展と更には、自動車は化石燃料以外の新しい分野への発展が見込まれておりますこれら業界に積極低に投資を行い真の発展に協力することを目的としております」などと報告。三菱重工業以外の他の4社の保有目的についても、ITの発展と対象企業との関係を理由に株式を取得したと報告している。

同報告書で取得したと報告しているのは、トヨタ自動車が18億4,109万9,000株、フジテレビジョンが120万6,000株、アステラス製薬が2億6,467万3,000株、三菱重工業が17億2,056万1,000株、ソニーが5億1,147万8,000株、NTTが801万5,000株となっており、これらを取得するための資金は約20兆円を超える。

だが、金融庁は今月27日、「各報告書に記載された内容の株券の取得の事実がない」として、金融商品取引法の「重要な事項についての虚偽の記載」に当たるとし、テラメントに対し、上記大量保有報告書の訂正報告書の提出を命じる行政処分を行った。

だが、金融商品取引法には、EDINETでの虚偽記載に関し、虚偽記載と判明すれば5年以下の懲役または500万円以下の罰金を課す罰則はあるものの、虚偽の報告書をEDINETから削除する規定はない。また、訂正報告書が提出されても、EDINETに訂正報告書は掲載されるが、虚偽の報告書もそのまま掲載され続けることとなり、閲覧者を混乱させる恐れも否定できない。

この点について、金融庁企業開示課 課長補佐の長谷川修氏は、「現状では、大量保有報告書が虚偽記載と分かっても、金融商品取引法にはEDINETから削除する規定がないので、削除するには、規定を変更するなどの方法しかない」と話しており、今後再びこうした事が起きた場合、どうするかについての議論が必要といえそうだ。