顧客ニーズが多様化する中、1 人ひとりの趣味・嗜好・属性を基とした「One-to-One Marketing」が、あらゆる業界で求められています。ですが、「One-to-One Marketing」の実践にあたっては、サイロ化した組織を統合して企業全体が持つ顧客情報を集約する、店舗の売場がこのデータを有効に活用する仕組みを作る、こうしたプロセスが不可欠となります。一朝一夕で進められるものではなく、刻一刻と環境が変化する今日のビジネスにおいて、悠長にこれを進めている猶予はありません。始めから完璧な姿を目指すのではなく、「One-to-One Marketing」の構成要素を分解して "今できること" からまず実践する、そして PDCA によって完成形を目指していく、このようなアジャイル型のアプローチが、マーケティングの領域でも求められているといえるでしょう。

セブン&アイ・ホールディングスの一員として百貨店業を手掛けるそごう・西武は、今まさにこの取り組みを進めています。同社は 2018 年 6 月、顧客データのチャネル活用をプロジェクト化。翌々月となる 8 月には Microsoft Azure をプラットフォームにプライベート DMP を完成させ、池袋本店をはじめとする実チャネルで実証実験をスタートしています。

顧客データを活用して "発見という消費体験" を提供する

手元の端末からなんでも好きな情報が調べられる、欲しいものがどこからでもすぐに買える。情報化がもたらしたこうした恩恵は、間違いなく素晴らしいものです。しかし、この恩恵は一方で、人の行動を " 関心が顕在化したものしか調べない、買わない" というものへと傾倒させました。潜在的な関心や意欲は、今日の社会では取り残されつつあるといえます。

そごう・西武が掲げる企業理念「想像以上の提案で、お客さまに発見を。」には、こうした潜在的な関心、意欲を、消費体験を通じて "発見" してもらいたいという思いが強く表れています。この企業理念を体現するために、同社は現在、どのような取り組みを進めているのでしょうか。

企業理念を実現するための仕組みづくりを使命とする、株式会社そごう・西武 事業デザイン部の関口 秦史 氏は、このように述べます。

「お客様のことを知らなければ、"発見という消費体験" を提供することはできません。今日求められている『One-to-One Marketing』を実践することは、私たちの理念を達する上で不可欠だと言えます。しかし、例に漏れず当社も各部門がサイロ化しており、お客様に関する情報があらゆる場所に散在しています。サイロ化を解消して誰もが全データにアクセスできる環境を作ることが理想ではありますが、一気に進めては時間もコストもかかりすぎてしまいます。そこで私たちは、限られたデータでもいいので、まず店舗の売場でお客様のデータを活用する、これを実証実験として PDCA を回し、成果を根拠にしてサイロ化の解消やデータの統合も進めていくというアプローチを採っています」(関口 氏)。

アジャイル型とも呼べるこうした進め方は、店舗の売場で働く販売員の考え方・風土を変えていく上でも有効だといいます。関口 氏と同じく事業デザイン部に所属する武藤 豊 氏は、次のように説明します。

「目指すべきは "発見という消費体験" の提供です。これは当社の DNA として販売員にも染みついていますから、『お客様のデータを活用することが有効』と実感さえしてもらえれば、自然に販売員によるデータ活用は進んでいくはずです。ただ、最初から全てのデータに触れる環境を提供しては、販売員は "何をすればよいのだろうか" と頭を悩ませてしまうでしょう。データの種類や用途が限られていることは、悩まずにこれを活用できる環境だとも言えます。実証実験の中でまずデータを活用してもらえば、先の実感とともに販売員の考え方、風土を変えていくことに繋がります。私たちの取り組みは、企業理念の体現に向けた歩みとともにチャネルも変革していくものだと考えています」(武藤 氏)。

  • 株式会社そごう・西武 事業デザイン部 デジタルマーケティング担当 関口 秦史氏、武藤 豊氏
  • 「One-to-One Marketing」の実践にあたっては、部門やデータのサイロ化を解消することが必要となる。しかし、このために多大な時間を要しては、ビジネスの変化に取り残されかねない。
  • "今ある顧客データをまず売場で活用する" 取り組みは、武藤 氏も触れたように売場を変革しながら『One-to One Marketing』への歩みを進める上で有効なアプローチだと言える。
  • 「One-to-One Marketing」の実践にあたっては、上段にあるように部門やデータのサイロ化を解消することが必要となる。しかし、このために多大な時間を要しては、ビジネスの変化に取り残されかねない。下段にあるような "今ある顧客データをまず売場で活用する" 取り組みは、武藤 氏も触れたように売場を変革しながら『One-to One Marketing』への歩みを進める上で有効なアプローチだと言える

マイクロソフトの手厚いサポートが成功の要因

そごう・西武では 2018 年 6 月にプロジェクトを発足し、顧客データの活用に向けた取り組みをスタートしました。パブリック クラウドの Microsoft Azure とこれが備える Azure SQL Data Warehouse を利用してプライベート DMP を構築し、発足からわずか 2 か月後となる同年 8 月には、池袋本店をはじめとする複数の百貨店における実証実験を開始。POS や会員情報に基づく " 購買データ" と自社サイトのアクセス ログに基づく " 行動データ" を利用して、電子メールの送信、DM 発送、顧客分析などが行われています。

関口 氏は、こうした実証実験を進めていく上では、スピード感を重視したと説明。その理由について、「売場の販売員が真剣に実証実験に取り組んでくれなければ、風土も変わりませんし、将来組織を変えていく上での根拠となる成果も生まれません。プロジェクトを発足した 6 月に実証実験へ協力頂く各店舗へ依頼の連絡を行ったのですが、そこからすぐに環境を提供することで、"会社として本気でここに取り組んでいること" が販売員に伝わると考えました。また、その後も現場からのフィードバックに即座にシステムを対応させていくことで、販売員が自分事としてここに臨んでもらえるようにしたかったのです。オンプレミスでは機器の調達だけで数か月かかりますから、サービス基盤にパブリック クラウドを採用したことは、必然の選択でした。」と述べました。

続けて武藤 氏は、パブリック クラウドの中でも Microsoft Azure を選択した理由について、こう説明します。

「第一に挙げられるのはセキュリティです。プライベート DMP では社内にある数百万もの ID に基づいた " 購買データ" と " 行動データ" を取り扱います。もちろんデータ送信にあたってハッシュ化はしますが、それでもお客様に関わる情報には違いありません。マイクロソフトは国内で初めて CS ゴールドマークを取得しており、ISO/IEC 27001、ISO/IEC 27018 といった認証も得ているため、安心してお客様の情報を預けられると考えたのです。また、PaaS を豊富に備える点もポイントでした。今回、データ分析基盤に PaaS の Azure SQL Data Warehouse を利用していますが、IaaS を極力利用しない設計を採ったことで、初期構築やその後の機能改修などを迅速に進めることができました」(武藤 氏)。

セキュリティや機能といったサービス自体の優位性に加えて、サポートの側面も、Microsoft Azure は高く評価されました。本プロジェクトにあたり、そごう・西武では、プライベート DMP 上でターゲット セグメントを行う仕組みをブレインパッドの exQuick (イクスクイック) で構築。システム構築やビジネス全体のプロセス設計も同じくブレインパッドへ委託する形で、取り組みを進めています。

株式会社ブレインパッド ソリューション開発本部の松永 紘之 氏は、マイクロソフトとの強固なパートナー シップもあって、迅速にこれらの作業を進めることができたと語ります。

「マイクロソフトにはプロジェクトの初期から手厚い支援を頂きました。単に Microsoft Azure を提供するだけでなく、私たちと同じ目線に立って一緒に最適なアーキテクチャを設計し、実際の業務プロセスを考案してくれたのです。海外を含む実績を基にしたアドバイスを、技術とビジネスの両側面から頂ける。こうしたサポートがあったことで、アーキテクチャの設計をわずか 1 週間で完了することができました。お客様からは 8 月にサービス インしたい旨のリクエストを受けていましたので、設計フェーズを短縮して余裕をもって構築に臨めたことは、きわめて有益でした」(松永 氏)。

  • 株式会社ブレインパッド ソリューション開発本部 ソリューション開発部 副部長 松永 紘之氏
  • プライベート DMP のアーキテクチャおよび業務プロセス イメージ。オンプレミスにある各種データをバッチ処理で Azure SQL Data Warehouse へ格納し、ここのデータを exQuick でセグメントして配信ターゲットを抽出。同ターゲットへ対して電子メールや広告配信、DM 発想を行うという仕組みになっている。

    プライベート DMP のアーキテクチャおよび業務プロセス イメージ。オンプレミスにある各種データをバッチ処理で Azure SQL Data Warehouse へ格納し、ここのデータを exQuick でセグメントして配信ターゲットを抽出。同ターゲットへ対して電子メールや広告配信、DM 発想を行うという仕組みになっている

"今回の取り組みを通じて、当社にとってマイクロソフトは、ベンダーではなく 事業をともに発展させていく仲間だと強く感じました。早期に環境を構築できた成功要因は、こういったパートナーシップにあったと確信しています。"

-武藤 豊 氏 : 事業デザイン部 デジタルマーケティング担当
株式会社そごう・西武

"データは有用だ" という実感が、チャネルの在り方を変える

既述の通り、そごう・西武では実証実験に向けた第一次開発を 2018 年 8 月に終え、同月より実チャネルでの利用を開始しています。実際にここでは、どのように顧客データが活用され、どのような成果が生まれているのでしょうか。

「例えば期間限定で行った北海道物産展について Web の行動履歴やこれまでの購買傾向から " 関心を持つであろう" お客様のみに広告を配信するなど、様々な形で各チャネルの販売員が、データを活用したマーケティング活動を行っています。メールを配信してそこから実際に来店し購買に至った数値が 5% という驚異的な値になるなど、取り組みの中には大きな効果を生み出したキャンペーンもあります。また、百貨店とは別に、お客様へ訪問してセールスする外商の部門では、訪問前にお客様の行動履歴をチェックし、これを会話に活かすという考え方も生まれています」(武藤 氏)。

こういった目に見える数字は、今後、組織やデータの統合を推し進めていく上での強力な根拠となるでしょう。ですが、関口 氏は、今回の取り組みで得られた最大の手応えは別の部分にあると語り、詳細をこう説明します。

「"データの活用によって、もっとお客様へ発見という消費体験を提供していける" という実感が販売員の中で生まれたことに、何よりも手応えを感じています。というのも、実証実験を開始してから、例えば "洋菓子を購入するお客様は和菓子にも関心があるのではないか" といったような仮説を自ら立てて Azure SQL Data Warehouse にあるデータを分析する姿が、様々な売り場で見て取れるようになったのです。全てのお客様のデータが活用できるようになった暁には『One-to-One Marketing 』が実践されるに違いない、そう感じました」( 関口 氏)。

"今後、Azure SQL Data Warehouse にある情報を統計的に分析していきたいと考えています。セグメントごとの反響率の差異やそこでの洞察を売場に還元すれば、現場での活用はもっと加速していくことでしょう。"

-関口 秦史 氏 : 事業デザイン部 デジタルマーケティング担当 担当部長
株式会社そごう・西武

"チャネル変革" と "企業理念の体現" の双方を推進していく

そごう・西武では、2019 年 2 月までかけて、現プライベート DMP による PDCA を進めていくことが計画されています。そして、ここでの成果を踏まえ、3 月以降では、利用店舗の拡大や大幅な機能拡張などをもって顧客データの活用をスケールさせていく方針です。

プロジェクトを支援する立場にある松永 氏は、「現在はそごう・西武様の保持する 1st Party Data のみを利用していますが、オープンデータである外部データをここに取り込んだり、映像解析を行う Cognitive Services を利用して店舗に訪れる人の行動傾向もデータ化したりなど、プライベート DMP はまだまだ発展させられると思います。こうした機能拡張によって確実な成果を創出し、そごう・西武様の取り組みを支援していきたいと考えています。」と意気込みを語ります。

続けて関口 氏は、「部門やデータのサイロ化を解消するまでは、まだまだ時間がかかるでしょう。もちろん、これを解消して企業理念を体現するのが最終的に目指すことです。ただ、ここへの過程でチャネルの在り方が変わっていくだけでも、大きなビジネス上の成果が生まれると考えています。マイクロソフトとブレインパッドとのパートナー シップのもと、"チャネル変革" と "企業理念の体現" の双方を進めてまいります。」と述べました。

アジャイル型のアプローチで「One-to-One Marketing」を実践し、新しい顧客体験の創出を目指すそごう・西武。この取り組みの持つスピード感は、近い将来で、同社が「想像以上の提案で、お客さまに発見を。」を体現することを期待させます。

[PR]提供: 日本マイクロソフト