寒い冬には欠かせないタイツや厚手の靴下。しかし、暖かくなるのは良いものの、ブーツや革靴の下で蒸れてしまって不快に感じることはありませんか?

そんな蒸れの原因である多湿を抑え、最適な湿度に調節・維持してくれる「TEKIjuN(適潤)」という調湿材をシャープが開発したとのこと。乾燥しすぎず、潤しすぎず、まさにちょうどいい湿度を保つことができる便利アイテムなんだそう。

  • 適潤

いったいどのようにして技術が生まれたのでしょうか。その秘密を探るべく、シャープの柏事業所へ取材に行ってきました。

  • シャープ柏事業所

湿度を容易に管理!シャープの独自技術「適潤」のメカニズムとは

最適な湿度に調節・維持できる新規調湿材「適潤」。誕生の地であるシャープ柏事業所は、「適温蓄冷材」が開発された場所でもあります。これは、-24~+28℃の間で温度を自在にコントロールできる技術で、飲み物を適温に保ったり、厳格な温度管理が求められるワクチンの輸送に使われたり、さまざまな場面で活用されています。

  • 適温蓄熱材

    検体・ワクチン・細胞などの輸送に活用される「定温輸送容器セット」は、「3℃適温蓄冷材」の使用により、2~8℃と2~6℃の両方の定温管理に適用可能。さらに、季節ごとの保冷温度の設定や蓄冷材の構成変更が不要に。

人やモノにとってより快適な空間を求め、温度と非常に密接な関係にある湿度に着目したことが「適潤」の開発のきっかけでした。

調湿材を樹脂に含ませた「適潤」は、閉鎖された空間の水蒸気量のバランスを取りながら、最適な湿度に調節・維持します。具体的には、最適な湿度に対して多湿であれば吸湿して湿度を下げ、反対に乾燥していれば放湿して湿度を上げる

こうして、温度変化や外部環境からの湿度の異なる空気の流入に伴い揺れ動く相対湿度に合わせて、吸湿と放湿を行い、最適な湿度に近づけます。

  • 適潤の技術イメージ

さらに「適潤」は、40~90%RH※1の範囲で任意で「目標湿度」を設定することが可能※2。例えば、カメラや医薬品、木製楽器は約50%RH、漆塗りやシガー、パンは約70%RH、青果品やチーズは約90%RHといったように、精度高く最適な湿度で管理が求められるものもあります。

また、モノによっては、ひび割れや結露の発生など、過度な乾燥や多湿を避けたいなど、最適な湿度の範囲が幅広いものもあります。

※1 相対湿度。空気の水蒸気含有量を表す尺度。
※2 記事リリース時点では、目標湿度を持った商材はビーズ型に限ります。

  • 色々なモノの最適な湿度一覧

シリカゲルや生石灰のような乾燥剤、濡らした布巾などの加湿剤を用いた従来の方法だと過度に乾燥したり加湿したりして、管理が難しいケースがありましたが、最適な湿度に調節・維持できる「適潤」なら、その課題を見事に払拭。

閉鎖された空間内に「適潤」を入れておくだけで、湿度を容易に管理できる。まさに、これまでの湿度管理の常識をくつがえす画期的な技術なのです。

TEKIjuN(適潤)に
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量産化の苦労を経て誕生したシート型の「適潤」。底知れぬ可能性を秘める

現在、「適潤」は「ビーズ型」と「シート型」の2種類が用意されています。

ビーズ型の適潤とシート型の適潤の特長

目標湿度に応じて調合できるビーズ型は、調湿の精度に優れ、長く維持できるのが特長。

  • ビーズ型の適潤で湿度を調整している様子

    撮影時の室内の相対湿度は21%(右の温湿度計参照)であったのに対して、「適潤」を密閉した容器内は、それぞれ49%、70%、92%に。

2023年1月には、島村楽器と共同開発したアップライトピアノ用の湿度調整剤が発売されました。

  • アップライトピアノ用の調湿剤

    アップライトピアノ用湿度調整剤

※以下リリース参照
https://corporate.jp.sharp/news/230118-a.html
ビーズ型TEKIjuNが入った不織布袋を付属のトレイの上に置き、アップライトピアノ内に設置するだけで、アップライトピアノ内部を簡単に適切な湿度の状態に保つことができます。

一方、パウダー化した「適潤」を不織布に配合したシート型には、どのような特長があるのでしょうか。

  • 適潤シートと適潤パウダー

ここからは、シャープの開発担当者にもお話を伺い、シート型の「適潤」にスポットを当てて魅力をご紹介します。

教えてくれたのは、研究開発本部 ライフイノベーション&マテリアル研究所 第二研究室の信岡俊之さん。

  • 信岡さんプロフィール

さまざまな技術を開発する研究開発本部に所属し、2022年より「適潤」の製品化・量産化に取り組んでいます。

シート型の「適潤」は、広い湿度範囲でスピーディーに調湿することを得意としています。靴蒸れの抑制にもつながるのではないかと大きな期待が寄せられているのだとか。

  • 靴のイメージ

    ※画像はイメージです

シート型の「適潤」には、粒子の小さい「適潤パウダー」が配合されており、吸放湿が速いという特長があります。当社独自評価において、他の調湿材に比べて、吸湿・放湿の双方で約2倍の速さを誇っています

実は、靴を履くと急激に湿度が上がるので、吸湿の速さが蒸れを防ぐためには必要なんですよ。


  • 信岡さんのインタビューカット

2023年8月の発売以来、注目を集めるシート型の「適潤」ですが、製品化に至るまでは相当な苦労があったと信岡さんが明かしてくれました。

製品化に向けて量産化しなければならず、協力工場でシート型の「適潤」を作ってもらいました。届いたのは、1本の重さが約60kg、全長300メートルのロール。

重たい1本のロールから数百のサンプルを抽出し、2人がかりで品質チェックするのは大変でしたね(笑)


  • 信岡さんのインタビューカット2

また、シャープは家電メーカーですので、シート型の「適潤」のような不織布に関する知見はありませんでした。

お客さまから要望をヒアリングしたうえで、適潤製品の量産・販売を担うシャープセミコンダクターイノベーション株式会社の品質管理部門と議論を重ね、品質を担保するためのルールを一から作っていきました


課題を見つけ、プロセスを改善する試行錯誤は、約1年にわたって続いたそうです。そうして完成したシート型の「適潤」は、吸湿・放湿の速さに加え、自然再生により繰り返し使用できる特長、あらゆる形状に合わせてカットしたり折り曲げたりできる薄さと柔らかさが評価され、靴蒸れの抑制のみならず、幅広い用途での活用が望まれています。

  • 適潤シートを折り紙のように折っている様子

TEKIjuN(適潤)に
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シート型の「適潤」で、不快な蒸れから解放!冬を快適に!

シート型の量産化が実現し、活用の幅が広がること間違いなしの「適潤」。適潤技術を応用した新製品の企画を担当する、シャープセミコンダクターイノベーション株式会社 商品企画部の小暮真莉さんに、今後の「適潤」の可能性について伺いました。

お客さまと話していると、フルーツやフラワーギフトなど、湿度管理が求められるシーンがたくさんあることに驚かされます。商品を受け取られる一般消費者に満足いただけるよう、商品の品質維持のために様々な工夫を凝らしていることをお客様から教えていただきました。

まずは「適潤」の良さをいろんな業種の方々に知っていただけるよう、プロモーションに注力していきたいですね。そして、お客さまのご要望にお応えできるように、シート型に新しい機能を追加したり、シート型にとどまらず新しい形状のラインナップ追加にもチャレンジしていきます。


「適潤」は、重量の半分以上を占める部材が再生材料で作られ、電気を使わないことからカーボンニュートラルの実現にも寄与。また、カビの抑制が、健康で快適な住環境につながることから、SDGsへの取り組みとしても一目を置かれています。

さらに、果物の輸送用梱包資材や輸送コンテナなどへ導入し、食品の品質をより長く維持することで、廃棄ロス低減への貢献も期待されています。

  • コンテナや調湿壁紙などでの適潤の使い道のイメージ

今後の展開がますます楽しみな「適潤」。靴蒸れ対策はもちろん、リュックの背当てやヘルメットなどに挿入することで、不快な蒸れを軽減して快適に過ごせそうです。

TEKIjuN(適潤)に
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Photo:Asami Endo

[PR]提供:SHARP