クリエイティブ系アプリでは差が出るか?

次はクリエイティブ系アプリを中心に検証してみよう。まずは「UL Procyon」から、PhotoshopとLightroom Classicを実際に使う「Photo Editing Benchmark」を試してみた。

  • 「UL Procyon」Photo Editing Benchmarkのスコア

このベンチでも空冷と水冷で大差はついていない。微妙に水冷60%時の総合スコア(青のバー)が高いが、この程度の差は体感できるようなものではない。

続いては「Media Encoder 2022」を利用した動画エンコード時間の比較だ。「Premiere Pro」で編集した4K動画(約3分30秒)をMedia Encoder 2022でエンコードする時間を計測した。ビットレートは50Mbps/VBR/1パス、フレームレートはオプティカルフローを利用している。コーデックはH.264とH.265の2通りで比較する。

  • 「Media Encoder 2022」によるエンコード時間

CPUにもGPUにも負荷をかけるテストだが、GPU側がボトルネックになりやすいH.264ではほぼ差が出ず、より負荷の高いH.265では水冷と空冷で大きな差がついた。空冷が8分30秒強必要としたのに対し、水冷では長くても6分20秒程度で終わっているのに注目したい。水冷ボックスのファン回転数速度が速い方がH.265の処理時間が短い理由は、積極的に熱を排出できるからと推察されるが、40%設定でも空冷に対して十分なアドバンテージが得られることを示している。

同じエンコードだがCPUだけを利用する「Handbrake」でも試してみよう。こちらは4K@60fpsのMP4動画をフルHD@30fpsのMP4ないしMKVに書き出す時間を計測した。画質などの設定はプリセットの「Super HQ 1080p30 Surround」と「H.265 MKV 1080p30」を使用した。

  • 「Handbrake」によるエンコード時間

こちらもMedia Encoder 2022と同傾向が見られた。空冷と水冷の差は冷却力の差により高クロック動作がより長く続くことによるものであるが、水冷ボックスのファン回転数は大きな差を持たない。

ゲームでは一転、水冷が強い

それでは本命のゲームのパフォーマンス検証に入る。G-Tune H5-LCに搭載されている液晶の解像度から、全てのゲームにおいてフルHDとWQHDの2通りでチェックするとしよう。

負荷軽めのゲームの代表「Rainbow Six Siege」から始めよう。APIはVulkanとし、画質“最高”にレンダースケール100%を追加、さらにシステムレイテンシー低減効果のあるReflexは“オン+ブースト”とした。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測する。

  • 「Rainbow Six Siege」Vulkan、1,920×1,080ドット時のフレームレート

  • 「Rainbow Six Siege」Vulkan、2,560×1,440ドット時のフレームレート

G-Tune H5-LCに搭載されている液晶のリフレッシュレートは240Hz。Rainbow Six SiegeのフルHD設定であればその表示能力をフルに活用できるが、水冷ボックスを接続することで液晶の表示性能を目一杯使い続けることができるだろう。空冷でも十分速いが、最低フレームレートの落ち込みが大きい。とはいえ200fpsを超えているのだから、カクつきとして実感できることはないだろう。

続いては「Apex Legends」で検証しよう。144fps制限を解除(+fps_max unlimited)し、画質は最高設定とした。射撃練習場における一定の行動をとった際のフレームレートを「CapFrameX」で計測した。

  • 「Apex Legends」1,920×1,080ドット時のフレームレート

  • 「Apex Legends」2,560×1,440ドット時のフレームレート

  • © 2022 Electronic Arts Inc. EA, the EA logo, Respawn, the Respawn logo, and Apex Legends are trademarks of Electronic Arts Inc.

ここでも空冷と水冷の違いがフレームレートに現れている。フルHD設定では水冷時の平均フレームレートが144fpsに近いが、軽い部分では300fps近くでているので、重いシーンから軽いシーンまで平均して145fps程度出ると捉えて頂きたい。

今回の検証では最低フレームレート(の1%パーセンタイル点)の落ち込みにおいて、水冷ボックス使用時の方が空冷時よりも軽減されている。よりカクつきのないゲームを楽しみたいのであれば、ハイフレームレートが要求されるゲームで空冷運用は避けるのが良いだろう。

もっと重いFPS系ということで「ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界」も試してみよう。APIはDirectX 12、画質“バッドアス”とした。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測するが、最低フレームレートはログから算出している。

  • 「ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界」DirectX 12、1,920×1,080ドット時のフレームレート

  • 「ワンダーランズ ~タイニー・ティナと魔法の世界」DirectX 12、2,560×1,440ドット時のフレームレート

このゲームでも水冷ボックスを使うことで平均も最低フレームレートも引き上げることができる。さらに水冷ボックスのファン回転数設定は60%でも40%設定でもほとんどフレームレートに影響しない。そしてG-Tune H5-LCは手軽さが重視される時にのみ空冷で使うべきだろう。

FPS系が続いたのでレーシング系である「Forza Horizon 5」を試してみたい。画質は“エクストリーム”とし、ゲーム内ベンチマーク機能を再生している際の実フレームレートを「CapFrameX」で計測した。

  • 「Forza Horizon 5」1,920×1,080ドット時のフレームレート

  • 「Forza Horizon 5」2,560×1,440ドット時のフレームレート

WQHDでも平均60fpsを超えるパフォーマンスが出せるが、水冷運用にすることで60fpsキープも可能になる点に注目。ゲームの種類を問わずゲーム中は水冷ボックスを装着して運用するのが好ましい。

G-Tune H5-LCにはDXR(DirectX Raytracing)に対応したRTX 3070 Tiが搭載されている。ならばレイトレーシングに対応したゲームでも試すことにしたい。

まずは「Ghostwire: Tokyo」で検証する。画質はレイトレーシングも含め最大設定としているが、レベルストリーミング距離は最低設定とした。そしてアップスケーラーはDLSS“バランス”を選択した。モバイル用GPUではアップスケールなしでレイトレーシングの最高設定に立ち向かえるだけのパワーはないためである。マップ内の一定のコースを移動した際のフレームレートを「CapFrameX」で計測している。

  • 「Ghostwire: Tokyo」1,920×1,080ドット時のフレームレート

  • 「Ghostwire: Tokyo」2,560×1,440ドット時のフレームレート

  • © 2022 Bethesda Softworks LLC, a ZeniMax Media company. Ghostwire, Tango, Tango Gameworks, Bethesda, Bethesda Softworks, ZeniMax and related logos are registered trademarks or trademarks of ZeniMax Media Inc. in the U.S. and/or other countries. All Rights Reserved.
    ※検証結果はライター独自の客観的なパフォーマンス検証による結果です。

最高設定+DLSSではフルHDが実用解像度だが、水冷運用にすることで最低フレームレートを60fps近くまで引き上げることができる。WQHDの場合はレイトレーシングの設定を少し落とすことでフレームレートを稼ぐ方が良さそうだ。

最後に試すのは「サイバーパンク2077」だ。画質は“レイトレーシング:ウルトラ”設定とするが、DLSSは“バランス”に固定。ゲーム内ベンチマーク機能を利用してフレームレートを計測した。群衆密度は最も高い設定としている。

  • 「サイバーパンク2077」1,920×1,080ドット時のフレームレート

  • 「サイバーパンク2077」2,560×1,440ドット時のフレームレート

このゲームのベンチマークの最低フレームレートはやや暴れやすい傾向にあるので、参考値として捉えて頂きたい。全体として空冷よりも水冷の方がフレームレートが伸びる傾向はこれまでと同じ。フルHDでも60fpsのキープが難しいのでレイトレーシングまわりの設定を若干を落とすことで美しいゲーム画面が堪能できることだろう。