ビジネス環境が急激に変化するなか、セールスの領域においてもデジタル化が急ピッチで進んでおり、営業現場ではDXの進行度合いによって競合企業に負けてしまうケースも出てきている。企業が今後勝ち残っていくために求められる「セールスDX」とは何だろうか。

クラウド型営業支援ツール「ホットプロファイル」を提供するハンモック GLUE事業部 営業本部 東日本営業部 上席部長 田村亮介氏は、10月20日に開催されたTECH+セミナー「セールステックDay 2021 Oct. 顧客との関係性をより深める」にて、なぜ営業部門でのDXが必要なのか、失敗しないDXのポイント、そしてセールスDX実現のために取り組むべきことについて紹介した。

  • ハンモック GLUE事業部 営業本部 東日本営業部 上席部長 田村亮介氏

なぜ営業部門でのDXが必要なのか?

昨今注目を集めているDX(デジタルトランスフォーメーション)の歴史は意外にも古く、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」という仮説を提唱したことが始まりであるといわれている。近年では、情報処理推進機構(IPA)や経済産業省などもDXの定義を公表しており、国策としても注力されている状況となっている。田村氏は、これらの定義に共通して出てくるキーワードとして「デジタル技術の活用」と「変革」があるとしたうえで、DXを「ITをはじめとするデジタル技術を使って、より良い方向に変えていくこと」と説明する。

なぜ、ここにきてDXが重要視されるようになったのだろうか。米ブルックス・ブラザーズの経営破綻に代表されるように、新型コロナウイルス感染症の影響は大きい。DX投資を十分に行ってこなかったことで、コロナ禍による消費者行動の変容をフォローしきれなかった企業が淘汰されはじめているのだ。この波は、BtoBビジネスにも否応なく襲ってきている。ここで田村氏は、BtoB調達プロセスにおける顧客購買行動の変化について次のように整理する。

「私が営業職を始めた15年前ごろは、お客様は物理的に資料請求を行うところから検討をスタートしており、購買行動が早期に顕在化していた。しかし、昨今では、興味を持ったらまずインターネット上の口コミサイトや情報サイトなどで情報収集を行うため、Web上で完結してしまうことが多く、購買行動が顕在化するタイミングが商談プロセスの後ろ側へと移ってきている」(田村氏)

  • 顧客の購買行動の変化

ここで競争原理上重要となるのが、いかに商談プロセスの上流で顧客とのタッチポイントを設けられるかという点だ。「競合他社が上流ですでに顧客にタッチしていた場合、自社がタッチした時点ではすでに囲い込まれてしまっている。顧客の購買行動をデジタル化し、営業部門をDXすることこそが、競争力の強化や優位性の確立につながる」と田村氏は説明する。

失敗しないDXのポイント

DXの必要性を理解していても、失敗してしまうケースがある。田村氏によると、失敗しないためには、経済産業省のガイドラインのなかでも提言されているように、アナログを含めた旧来の仕組みを刷新することが大事だという。ここで注意すべきは、システムの入れ替え自体を目的化しないことである。営業現場の変革後の全体像をしっかりと見据えたうえで、システムの刷新に取り組むことが重要となる。

「レガシーシステムの刷新にあたって、ただシステムを入れ替えること自体を目的にすると運用に耐えることができない。レガシーには『孤立化した』という意味もある。孤立システムをいくつつくってもDXにはつながらず、『再レガシー化』を招いてしまう。たとえば、顧客の情報をデジタルで管理するということだけでなく、それをどう使うかという将来像まで描くことがDXに失敗しないためのポイント」(田村氏)

セールスDX実現のために取り組むべきこと

では、具体的にどのようにセールスDXを進めていくべきだろうか。田村氏は、まず取り組むべきこととして、次の3つの要素を挙げた。

1. 顧客情報のデジタル化/集約

1つめは、顧客情報のデジタル化と集約だ。紙のまま管理している名刺やWebフォームからの問い合わせなど、顧客情報を入手する手段によって管理方法が別々になってしまっているケースも多い。田村氏は「全社、少なくとも事業部のなかでは集約して一元管理してほしい。そして、さまざまなデバイスでいつでも見られる状態にすることが第一歩」と呼びかける。

また、ただ単に顧客情報を集約しただけでは、活用できているとはいえない。活用しやすくするためには、名寄せをして個人ごとに会社名・住所・部署・役職・電話・メールアドレスといった情報を整理し、最新情報に更新していく仕組みが必要だ。さらに、これらの情報に業種や従業員規模といった補足情報を付与してよりリッチなものにいくことで、顧客をより細かくターゲティングしてアプローチすることが可能となる。

「ホットプロファイルでは、集約したデータをいつでも一画面で確認することができ、短時間で情報武装をすることができる」(田村氏) 。

2. 顧客の興味を察知する

2つめは、顧客の興味の察知と継続のフォローができる仕組みの構築だ。新規リードを獲得しても、受注しなかったリードを放置してしまうと、大きな機会損失につながる。見込み客を新規に獲得しようとすることももちろん重要だが、継続的にアプローチして新規案件につなげる取り組みも必要だろう。

ホットプロファイルでは、顧客情報を登録するだけで、その人がいつどのページを閲覧したかがわかるようになっている。また、顧客が自社のWebサイトを閲覧したタイミングで営業の担当者に通知が送信されるため、営業の優先度やタイミングを図りやすくなる。このように顧客行動をデジタルによって可視化することで、田村氏は「営業活動が変わるイメージが持てるのでは」とする。

3. 顧客ニーズに基づいた顧客情報の活用

そして、3つめは、顧客情報を活用し、顧客のニーズに応じたアクションを取っていくことだ。数ある顧客を適切に層別しなければ、情報活用はできない。顧客層別の方法はさまざまあるが、田村氏は「まだまだ」「そのうち」「もうすぐ」「今すぐ」という4段階の購買意欲をもとにした層別方法を提唱しているという。

「たとえば、『まだまだ』の顧客は裾野が広いため、すべて訪問していては意味がない。ウェビナーやメルマガ、広告などの外部メディアを用いた施策が有効。このように、層に応じたアクションが必要」(田村氏)

ホットプロファイルでは、属性や行動をもとにした顧客のスコアリング機能があり、その点数に応じた営業活動を行うことが可能となる。

DXにおいて重要なことは、田村氏が述べていたとおり、単なるデジタル化やシステムの刷新を目的とするのではなく、業務の将来像をしっかりと描くことである。田村氏は、ホットプロファイルについて「使えば使うほど溜まっていくデータと、外部に存在するデータをかけ合わせて営業現場を変革するプラットフォームになりえる」と改めて強調したうえで、講演の最後に「今回お伝えしたDXの3つのポイントを抑えて将来像を描き、競争に勝つためにシフトチェンジしていってほしい」と聴講者へ呼びかけた。

[PR]提供:ハンモック