ここ数年、スマート家電の普及に伴ってIoTという言葉をよく耳にするようになった。声や音で照明のオンオフをしたり、スマホで家の鍵をかけられたりと、生活を便利にしてくれるものばかり。そんな中で、皆さんは「○○したら、自動で××になったらいいのに」なんて、アイデアを思いつくことはないだろうか。
東芝はIoTアプリ「ifLink」をオープン化するコミュニティを立ち上げ、100社以上の会社と新しいIoTサービスの発想や試作を進めつつ、誰でもIoTを使いこなせる世界を作り出そうとしているという。今回、ifLinkプロジェクトの仕掛け人である3名の社員の方にお話を伺った。どういった背景からサービスが生まれ、どんな社会の実現を目指しているのだろうか。
プロフィール
東芝デジタルソリューションズ株式会社 ifLinkプロジェクトの責任者。
ifLinkオープンコミュニティでは理事兼ディレクターを務めている。
東芝デジタルソリューションズ株式会社
ifLinkプラットフォームの提供や商品企画開発の取りまとめを行う。
一般社団法人ifLinkオープンコミュニティ デザイナー。
会員と共同でifLinkのユーザー体験やアイデア発想会のファシリテーションを行っている。
ifLinkは誰もが簡単にIoTを使える・作れるようにするために生まれた
――そもそも、「ifLink」とはどんなサービスですか?
簡単にいえば、“IoTの仕組みを自分で作れるスマホアプリ”です。プログラムなど難しい技術は不要で、アイデアさえあれば誰でも作れるのが特徴です。
吉本さん
IoTで使うセンサーや機器、ネットのサービスなどを「IF(もし○○すれば)」と「THEN(○○になる)」という関係でつなぐことで、連携動作させることができます。PCやスマホがあればノンプログラミングで設定できます。単純な連携であれば、カードを並べて専用アプリで読み込むだけでも設定できるんです。
吉本さん
この「IF」と「THEN」の組み合わせを「レシピ」と呼びます。よいレシピが思いついたなら「レシピストア」に登録もできます。登録されたレシピは、誰でもダウンロードして使うことができます。
吉本さん
――IoTといえば最先端のテクノロジーというイメージがあります。技術者でなくても作れるというのは驚きです。どうすればそんなことが可能になるのですか?
ポイントとなるのは、モジュール化という考え方です。これまでは、利用目的ごとに、センサー、機器、サーバー通信、画面表示などを個別に開発していました。組み込み、無線、クラウドなど、必要な開発者スキルも多岐にわたるので、IoTは通常のシステム開発より大変だったんです。
吉本さん
ifLinkはさまざまなセンサーや機器、ネットのサービスやスマホアプリなど、IoTを構成するさまざまな技術を部品化しています。部品化にあたっては、その対象から受け取る情報と操作する情報を決めて、ifLinkと通信するマイクロサービスというものを開発します。これをモジュール化と言います。
吉本さん
モジュールが出来てしまえば、これらを「IF(もし○○すれば)」と「THEN(○○になる)」という関係でつないであげることで、誰でもプログラミングなしでIoTを利用することができるのです。
――なるほど! モジュール化の開発さえすれば、組み合わせにはプログラミングが不要なんですね。
そうなんです。メーカーさんやソフト開発会社さんはifLinkに対応するモジュール群を集めた「モジュールバンク」に登録することで、自社製品やソフトウェアを利用者に繰り返し使ってもらえます。開発もマイクロサービス開発キットを公開しているので容易にできます。
吉本さん
現在、ifLinkオープンコミュニティでは、モジュール化のための開発セミナーやサンプルソース提供、モジュール募集イベントなどを通じて、ifLink対応モジュールの拡大を進めています。現在は、コミュニティ会員の約100社以上のもの企業や学校、団体から140以上のモジュールが提供されています。
吉本さん
――異なる企業の製品が、ここまで縦横無尽に連携できるというのは驚きです。なぜ、ifLinkのようなサービスを開発することにしたのでしょうか?
出発点は「IoTをもっと身近にしたい」という想いからでした。IoTってもう10年くらいIT用語のトレンドであり続けているのですが、普段の生活でIoTの存在を感じることってありますか?
吉本さん
――たしかに、IoTという言葉自体は流行っていても、詳細については「よくわからない」と感じている人はまだまだ多いです。
そうですよね。私はIoTって、ハサミとかものさしみたいな感覚で一般の人が使えるようになるべきだと考えています。アイデアさえあれば誰でもIoTが実現できる世界を目指してifLinkを開発したのです。
吉本さん
ifLinkオープンコミュニティが目指すもの
――ifLinkをオープン化するコミュニティを立ち上げたということですが、どんな目的があるんですか?
誰でもカンタンにIoTを使える世界は利用者として魅力的だし、楽しそうですよね!ひとつには単純にそんな未来を実現したいという思いがあります。そしてもちろん、ビジネス的な狙いもあります。「スケールフリーネットワーク」という考えがあります。たくさんの利用者が集まるネットワークは、自ずとイノベーションが生まれる場となる、という考えです。
吉本さん
――スケールフリーネットワークって、たとえばどんなものがありますか?
たとえばfacebookやInstagramのようなSNSはたくさんの利用者層を持ったネットワークです。このようなネットワークをIoTの世界で実現したいんです。そこに大きな新しいマーケットが生まれると考えています。これまで企業が提供者だったIoTサービスが、利用者が自分たちで共有するモデルに変わります。
吉本さん
便利なレシピを利用者が投稿して、評判の良いものが上位に表示されて多くの人に使われる。まさにIoTのSNSです。そこにはたくさんのビジネスチャンスが埋もれていますが、それは一社では実現できないし独占できないんです。思いを同じくする企業や学校や団体が集まって、さまざまな発想や試作や実証を進めています。
吉本さん
関連リンク:「スケールフリーネットワーク」について詳しくはこちら
イノベーションが生まれるifLinkオープンコミュニティ
――アイデアはどのように生まれているのでしょうか。
ifLinkオープンコミュニティでは、ifLinkフェスやifLinkオオギリといった会員様同士の交流の場を設けています。ifLinkフェスは、ifLinkオープンコミュニティで生まれたアイデアを発信するオンラインイベントで、ifLinkオオギリはコミュニティ会員同士が意見を出し合い、ユニークなIoTのアイデアを生み出すブレストの場です。
山川さん
――会員同士で意見を出し合うと、1人では思いつかなかったような発想が生まれそうですね。
まさに、そうなんです。私はifLinkコミュニティのスタッフの立場でifLinkオオギリに参加したり、会員の皆さんが会話する際にグラフィックレコーディングで描きとめたりしているのですが、業種も職種も多様なメンバーがブレストを行うことで、想像もしていなかった化学反応が起きる場面を何度も目してきました。
山川さん
こうしたコミュニティの活動や発想法はとても評判がよく、学校や企業からも注目されているんです。新人教育でやってみたいとも言われています。
吉本さん
私自身も、ifLinkコミュニティの活動を初めて見たときは感銘を受けましたね。企業同士のコラボレーションって、うまくいかないことが多いんです。特に大企業ともなると、何か決めるたびに「上を通して……」となるので、どうしても動きが遅くなりがちですし、様々な事情でせっかくのアイデアが実現できないことも少なくありません。
山川さん
その点、「ifLink」はモジュールさえ登録されていれば、会社同士で面倒なやりとりをしなくてもアイデアが実現できます。会員同士でフラットな会話ができる場をつくっていけるのは、とても面白いなと感じています。
山川さん
「ifLink」で生まれたIoTの活用事例
――実際にどんな製品やサービスが生まれたのでしょうか?
新型コロナ対策に関連したIoTアプリケーションが生まれました。昨年4月に緊急事態宣言が発令された折、有志が集まり4つのアプリの試作をしました。企業が集まって素早くコロナ対策の試作をする活動は、西村新型コロナウイルス感染症対策担当大臣の記者会見でも取り上げられました。その中で、CO2センサーで密閉を検知し、通知する「CO2濃度モニタリングサービス」やサーモグラフィで発熱者を検知するサービスなどが商品化されました。
吉本さん
「CO2濃度モニタリングサービス」については、2021年5月にコミュニティ会員企業のWDS社より販売を開始しました。現在は不二家レストラン様に導入いただいています。
――不二家レストランはなぜ、「CO2濃度モニタリングサービス」を導入したのでしょうか。
コロナ禍もあり、不二家レストラン様では何よりもお客様の安心安全を重視されています。そこで、店内のCO2濃度を「CO2濃度モニタリングサービス」で可視化し、お客様にお見せすることで、しっかりと換気ができていることをお伝えしているというわけです。
中田さん
また、一緒に導入いただいたAI顔認識・体表面温度測定・マスクチェック装置を入り口に設置し、検温した結果をペコちゃんのイラストと音声で案内するなど、不二家レストラン様ならではの取り組みも行っておられます。
――検温や換気の効果が見える化されていると、お客様も安心できますね!
そうですね。読者の皆さんにもぜひ、不二家レストラン様でifLinkから生まれた「CO2濃度モニタリングサービス」の効果をご覧になっていただきたいです。ぜひご家族やご友人などと一緒に、不二家レストラン様に来店していただきたいですね。
中田さん
今、IoTの開発は企業を中心に行われていますが、私たちはifLinkにより、いつでも誰でも安くIoTを使えるようにすることで、“IoTの民主化”を目指しています。まだまだIoTは一般層に浸透しているとは言えないので、ifLinkを通じて伝えていきたいですね。
中田さん
この記事をご覧いただいている皆さんも、ifLinkの世界観がいいなと思っていただけたら、ifLinkをダウンロードして、ぜひレシピを作ったり、モジュールを開発してみてください!
吉本さん
Try! ifLinkで今すぐアイデアを実現してみませんか?
ifLinkは現在、「Try!ifLinkサイト」からアプリをダウンロードし、使ってみることができる。すでに作られているレシピを動かすことも、実際にIF・THENの組み合わせを考えて、オリジナルのレシピを作り、動かすこともできる。Androidプログラミングのできる人なら、SDKをダウンロードしてifLinkモジュールを開発することも可能。
さっそくアプリをダウンロードして、ifLinkと共に誰でも簡単にIoTを実現できる社会を目指してみませんか。
[PR]提供:東芝デジタルソリューションズ