リラクゼーションスペース「Raffine(ラフィネ)」を展開するラフィネグループで、システム開発・運用を担っている株式会社ポストシステムズ。リラクゼーション業界のリーディングカンパニーをシステム面から支える同社は、セラピストや顧客のニーズに素早く対応できるように、店舗予約システムや顧客管理システム、セラピスト管理システム開発などを内製で行っている。だが事業の成長とともに、基幹データベースとして採用していたOracle Databaseにおいて、パフォーマンスやリプレースといった課題に直面することになった。

全国に直営店600店、委託店200店を展開するリラクゼーション業界のリーディングカンパニー

「ココロとカラダをリセットする」をキャッチフレーズに、南仏プロヴァンス地方をイメージしたリラクゼーションスペース「ラフィネ」や、バリ式トリートメントを提供する「Badan Baru(バダンバルー)」などの施設を全国600店舗(直営)で展開するラフィネグループ。路面・商業施設内に構えるリラクゼーション施設のほか、全国200店舗超に及ぶ温浴施設でのリラクゼーションルームの運営委託や、グループ内セラピストの教育研修、健康機器の販売・レンタルなども手がけている。加えてセラピストの資格整備や法整備への働きかけなどにも積極的に取り組み、「人々が健康で元気に暮らせる社会の実現」を目指してリラクゼーション業界を牽引するリーディングカンパニーとして知られている。

そのラフィネグループでPOSシステムの開発運営やグループで共通利用する基幹システムの開発運用を担っているのが、ポストシステムズだ。リラクゼーション施設のフロント、バックヤード業務を支えるシステム「くあ蔵+」や、温浴施設用券売機POSシステム「けん蔵」など独自システムの開発と提供により、リラクゼーション業界のデジタル化にも貢献している。ポストシステムズの野村 佳史 氏は、ラフィネグループにおけるシステム活用の意義についてこう話す。

  • 株式会社ポストシステムズ システム開発部・システムサポート部兼任 係長 野村 佳史 氏

    株式会社ポストシステムズ システム開発部・システムサポート部兼任 係長 野村 佳史 氏

  • 株式会社システムサポート インフラソリューション事業部 マネージャ エヴァンジェリスト 江川 健太 氏 ※ORACLE MASTER Platinum Oracle Database 10g、11g 資格保持

    株式会社システムサポート インフラソリューション事業部 マネージャ エヴァンジェリスト 江川 健太 氏
    ※ORACLE MASTER Platinum Oracle Database 10g、11g 資格保持

「リラクゼーション業界では、顧客管理を手書きの台帳で行ったり、売上のやり取りをFAXで行ったりと、システム化が進んでいないシーンが多く見られます。ビジネスの成長には、システム化によって業務を効率化したり、顧客データや販売データを分析したりすることが欠かせません。そこでラフィネグループでは、基幹システムを内製化し、ビジネス拡大や従業員・社員満足度の向上を図っています」(野村 氏)。

基幹システムとしては、店舗予約システムや売上管理システム、顧客管理システム、セラピストの研修やランクを管理するシステムなどがある。これらのシステムで利用するデータはすべて基幹データベースに格納され、一元的に管理されている。基幹データベースのデータに対して、例えば、セラピストが保有する手技や指名、顧客の利用状況、売上状況などを分析して、営業施策や店舗施策を実施し、ビジネスをドライブさせていくわけだ。

ビジネス拡大とWeb予約の増加とともに、Oracle SE RACのパフォーマンス課題に直面

ラフィネグループがシステム運用で抱えていた課題は、基幹データベースのパフォーマンス管理とライフサイクル管理だった。基幹データベースはOracle Database 11g Release 2 (Standard Edition)によるRAC(Real Application Clusters)構成(以下、SE RAC)で運用されていた。SE RACは基幹システムを刷新した2014年から稼働していたが、事業の成長によって店舗数や予約数、登録セラピスト数が増えたことを受け、当初の設計では十分なパフォーマンスが出なくなっていたという。

「運用から数年経った2017年頃から、リラクゼーションサロンもWeb予約が当たり前になっていきました。お客様のニーズに応えるため、データベースのカスタマイズ量も増えていきます。レコード数がテーブルによっては1億2,000万件を超える規模になり、処理が集中する月末には安定稼働しない状況が続きました。データベースへの接続エラーが起こったり、ノードの片系が落ちるといった事態も起きたりしていたのです。そんなときにパートナーさんからご紹介いただいたのが、Oracle製品のコンサルティングやチューニングで定評のあったシステムサポートさんでした」(野村 氏)。

株式会社システムサポート(以下、STS)では、Oracle Databaseの運用・保守をスポットで堤供する「チケット制運用支援サービス」を提供している。このサービスを活用してトラブルの原因を調査してもらったところ、潜在的な課題が次々と見つかったという。対応したインフラソリューション事業部 マネージャ 江川 健太 氏は、こう話す。

「接続エラーを詳しく調べてみると、問題はネットワーク側ではなく、データベースにあることがわかりました。そこで診断ツールのOracle Statspackなどを使って性能診断を行い、特定のテーブルへのアクセス集中によるロック待ちが原因であることを突き止めました。その後、片系が落ちる課題などに対して、インデックス数やメモリ値の最適化など行い、計6回ほどチケットのやり取りをすることで、安定稼働にこぎつけることができました」(江川 氏)。

その後はパフォーマンストラブルが発生することはなく、日々のデータ処理やデータ分析を担う基幹データベースとして、ビジネス拡大を支えた。ただ、ハードウェアの保守サポート期限にともなうリプレースによって、新たな課題が発生した。今後のビジネス成長や基盤の移行先などを含めて、基幹データベースのライフサイクルをどう計画していくかが課題になったのだ。

Oracle Database ApplianceでEE RAC構成に移行し、コストと拡張性を最適化

ハードウェアの保守サポート期限は2021年3月に迎える予定だった。それまでの運用経験によってOracle RACの安定性とパフォーマンスの高さは高く評価していたが、一方で、コロナ禍でビジネス環境が大きく変わるなか、新たなカスタマイズ案件も数多く発生しており、より高い性能と拡張性が求められていた。野村 氏はこう話す。

「グループの企業再編や店舗の新規出店、統廃合などを考慮すると、性能や拡張性はさらに求められていました。ただ、SE RACがOracle 19c以降で廃止されるため、事業の成長に合わせてどうOracleのバージョンやエディションを上げ、サーバ数やストレージ容量を考慮したRAC構成を維持していくかは大きな課題でした。クラウドへ移行するという選択肢もありましたが、その場合は、移行方法や運用ノウハウ、コストなどが懸念材料となります。Oracleのバージョン間の違いやライセンス形態を正しく把握し、当社に適切なRAC構成を検討することは我々だけでは難しい。そこで、あらためてSTSの力を借りることにしたのです」(野村 氏)。

既存のSE RACは、国内サーバベンダーのサーバ2台(2ノード)と共有ストレージ1台で構成されていた。RAC構成を維持することを前提にした場合、選択肢は「SE RACかEnterprise Edition(以下、EE)RACか」「物理か仮想か」「Oracle Databaseのバージョンアップか据置きか」「オンプレミスかクラウドか」の組み合わせで構成されることになる。さらにノード台数、ストレージ容量も検討しなければならない。

「事業とシステムの成長、コスト、安定性、運用負担などを条件にいくつかのパターンでシミュレーションを行ない、それをもとに議論を重ねました。最終的にポストシステムズに最も適切なソリューションとして提案したのが『Oracle Database Appliance(以下、ODA)』でのEE RACでした」(江川 氏)。

ODAは、ハードウェアとソフトウェアが一体となったアプライアンス製品で、EE RACを構成しながら高パフォーマンスと高可用性を実現できる。利用するCPU数を後から追加できるため、ライセンスコストを抑えたスモールスタートも可能だ。クラウド環境のOracle Cloud Infrastructureと連携したバックアップやワークロードのクラウド移行もできるという。

野村 氏は「いくつかのパターンのなかで最もコストパフォーマンスが高く、今後の成長に合わせた基盤のスケーラビリティが確保できる製品だったことがODA採用の決め手になりました」と振り返る。

バッチ処理が1時間半から8分ヘ、新たなデータ分析作業もストレスなく実施可能に

ODAはアプライアンス製品であるため、導入期間が短く、移行が容易であることもメリットだ。今回の事例では2021年1月に納品後、移行作業を終え、1カ月で本番稼働を開始した。セットアップは2時間ほど、移行作業も1日で済んだという。STSは、導入提案から調達、移行までを一貫して支援した。

ODAは2021年3月から稼働を開始したが、旧環境で実現していた安定稼働を引き継ぎつつ、さまざまな面でパフォーマンスの向上や運用管理面での向上を実感している。

「運用面では、SEからEEに移行したことで、システムを止めずにオンラインでメンテナンスできるようになったことが大きいです。これまではインデックスのリビルドなどを2~3カ月ごとに夜間に行なっていましたが、日中に作業ができるようになりました」(野村 氏)。

また、パフォーマンスが向上したことで、バッチ処理も高速化した。月初めに行なう委託料計算のバッチ処理などは従来1時間半かかっていたものが、8分で終了するようになった。そのほかのバッチ処理も含め、夜間バッチを日中に行なうことで、運用業務の負荷軽減にもつながっているという。また、店舗施策につながる集計作業や新しい分析作業などもしやすくなった。

「データベースに蓄積したデータを使ってさまざまな分析を行なっていますが、以前は負荷を考慮して実施していなかったものも数多くあります。パフォーマンスが向上したことで、そうした分析作業もストレスなくできるようになると考えています」(野村 氏)。

例えば、Web予約の単位時間を短くするといった施策がある。現行の予約時間は30分刻みだが、これを10分単位に変更すると、ユーザーが自分の都合にあわせて予約時間を細かく設定できるようになり、顧客満足度は向上する。また、そのためにどのデータをどう分析すればよいのか、施策の結果、売上や満足度にどう影響するのかなども含めて分析していくことが可能になる。

コロナ禍で環境が大きく変わるなか、データを活用して、さまざまな施策を試行錯誤で実施していくことが重要になってきている。野村 氏は、今後について、次のように展望する。

「スクラッチで自社ソフトをつくるメリットは、お客様のニーズに応じてシステムを改修し、スピーディーにカスタマイズできることです。コロナ禍で環境が大きく変わり、会社のさまざまな仕組みを新しいものに変えていくことに力を入れています。ODAとSTSは、そうした我々の取り組みを力強く支えてくれています」(野村 氏)。

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