2015年に登場した前モデルから、実に6年ぶりのフルリニューアルをした「VAIO Z」。VAIOのフラッグシップモデルとして大きな注目が集まっているが、いったいどのような魅力を持った製品なのだろうか。今回、「VAIO Z」を実際に試用することができたので、使ってみて魅力に感じた点を3つピックアップした。

●立体成型フルカーボンボディによる洗練されたデザイン

生まれ変わった「VAIO Z」を最初に目にしてまず思ったことは、その美しいボディデザインだ。これまでのVAIOも、シンプルかつ美しいデザインを実現していたが、今回の「VAIO Z」は、さらに一つ上の次元に達した印象だ。この驚きは、銀パソブームを巻き起こした初代「VAIO PCG-505」を初めて見たときに感じた驚きに近い。「VAIO PCG-505」は、ノートPCのボディに世界で初めてマグネシウム合金を採用し、当時としては画期的な薄型化と軽量化を実現した製品だった。

「VAIO Z」は、VAIOシリーズでも、代々フラッグシップモデルとして位置づけられ、新製品が出る度にモビリティとパフォーマンスを不可能と思われる次元で両立してきた。そのブレイクスルーのカギとなるチャレンジが世界初の「立体成型フルカーボンボディ」だ。

カーボン素材は、軽くて丈夫であり、ノートPCのボディの素材として、現時点で最高の素材である。これまでのVAIOシリーズでも、一般的なカーボン素材よりも強くて軽い「UDカーボン」を採用してきたが、基本的にその採用はボディの一部にとどまっていた(例えば、2019年に登場した「VAIO SX14」では天板部分だけがカーボン採用)。

しかし、今回の「VAIO Z」では、“フル”カーボンボディという名前が示すように、ボディを構成する4つの面(天板、液晶周りのベゼル面、キーボード面、裏面)のほぼ全面にカーボン素材が使われているのだ。さらに、カーボン素材は曲げなどの立体的な加工が非常に難しいとされていたが、「VAIO Z」では、試行錯誤の末、立体的な加工を可能にし、液晶を開いた時に、液晶ヒンジ部分が浮いているように見えるチルトアップヒンジを、カーボン素材だけで実現している。

  • 液晶を開いた時に、ヒンジ部分が浮いているように見えるチルトアップヒンジを採用。この天板の折り返し部分もすべてカーボン素材でできている

「VAIO Z」の立体成型フルカーボンボディは、軽さと丈夫さ、美しさを高い次元で並立させており、見て美しいだけでなく、実際に手で持ったときの剛性感が素晴らしい。片手で角を持って持ち上げても、たわむような感覚は一切ない。キーボード面の剛性も高く、タイピングも快適だ。

  • キーボードも新設計になり、キーストロークがVAIO SX14と比較して約1.2mmから約1.5mmに増加。さらに打鍵感が向上した

「日本語配列かな文字なし」のキーボード。刻印がアルファベットだけになっており、見た目もすっきりしていて美しい。VAIOストアでは、このほか「日本語配列かな文字あり」、「英語配列」も選べる。加えて、VAIO Z | SIGNATURE EDITIONでは黒いキートップに黒文字で刻印を施した、隠し刻印キーボードも選択可能だ。

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●Hプロセッサーと超高速SSD搭載で卓越した処理スピード

究極のフラッグシップモバイルノートPCとして設計された「VAIO Z」は、モバイルノートPCの永遠の課題ともいえる、パフォーマンスとモビリティの両立を実現していることが魅力だ。これまでのモバイルノートPCは、モビリティを重視するとパフォーマンスに妥協が生じ、パフォーマンスを優先するとモビリティに妥協が生じていたのだが、VAIO Zはその常識を打ち破っている。2つ目の魅力として挙げたいのが、やはりその高いPCとしての基本性能だ。

以前のモバイルノートPCは高性能なデスクトップPCに比べて性能が低く、そのサブマシンとして使う人も多かった。しかし、最近のモバイルノートPCは、性能が向上したこともあり、メインマシンとして使う人が大部分を占めている。そのため、モバイルノートPCを選ぶ上で、PCとしての基本性能の重要度は高い。

一般にモバイルノートPCは、ボディが小さく軽いため、発熱(=TDP)が大きな高速プロセッサーを搭載することは難しい。そのため、VAIO Zのような1kgを切る(VAIO Zの構成によっては1kgを超える)薄型モバイルノートPCでは、通常Uプロセッサーと呼ばれるTDP 28Wや15Wのプロセッサーが搭載されることが通例であった。

しかし、VAIO Zでは、冷却機構を一から見直し、デュアルファンやバックプレートを採用。他社製品にはない“両側排気”というエアフローにより、モバイルノートPCとしてTDP 35WのHプロセッサー搭載を可能にした。VAIO Zに搭載されているプロセッサーは、開発コードネームTiger Lakeと呼ばれていた最新の第11世代インテルCoreプロセッサー・ファミリーであり、そのHプロセッサーは2021年1月に登場したばかりである。

VAIOストアでは、用途や予算にあわせて、通称モデルはCore i7-11370HまたはCore i5-11300H 、SIGNATURE EDITION モデルはCore i7-11375Hからカスタマイズができる。今回、筆者が試用したVAIO Zは、Core i5-11300Hが搭載されていた。4コア/8スレッドのプロセッサーで、基本動作周波数は3.10GHzだが、インテル ターボ・ブースト・テクノロジー 2.0により、最大4.40GHzまで動作周波数が向上。デスクトップPC用プロセッサーに匹敵するパフォーマンスを誇る。予算に余裕があれば、最大5.00GHz駆動のスペシャルエディションCore i7-11375Hを搭載する、 VAIO Z | SIGNATURE EDITION を選ぶといいだろう。

特筆すべきは、VAIO Zでは、すべてのモデルで 「VAIO TruePerformance」 という独自技術が搭載されている。電源強化や放熱能力の向上によって、プロセッサーの持つ高いパフォーマンスを持続的に発揮させたり、より高いパフォーマンスのプロセッサーを搭載することを可能にする。VAIO Zで発熱の大きな高速プロセッサーを搭載することができたのも、VAIO TruePerformanceによるものだ。

  • 「VAIO Z」の左側面。USB Type-Cとヘッドセット端子、排気口が設けられている

  • 「VAIO Z」の右側面。USB Type-CとHDMI出力端子、排気口が設けられている

プロセッサーだけが高性能になっても、それを支えるメモリやストレージの性能が低ければ体感速度はあまり向上しない。もちろん、「VAIO Z」はメモリやストレージに関しても妥協はない。まず、メモリだが、LPDDR4xを搭載している。メモリは最低8GBあれば、一般的な利用ならそれほど困らないと言われているが、複数のアプリを同時に立ち上げたり、解像度の高い動画や写真を編集したりする場合は、やはり16GBあったほうが快適に動作する。さらに、VAIOストアでは最大32GBも用意されている。

「VAIO Z」は、ストレージとして第四世代 ハイスピードSSD(NVMe)を搭載しているが、この性能も凄まじい。インタフェースとして、PCI Express 4.0 x4を採用しており、インタフェースの帯域幅は64Gbit/秒にも達する。256GB、512GB、1TBさらに2TBの選択も可能だ。試用機は1TBの第四世代 ハイスピードSSD(NVMe)が搭載されていた。そこで、「CrystalDiskMark 8.0.1」を使ってストレージのベンチマークを計測してみたところ、シーケンシャルリード(Q8T1)が6846.75MB/秒、シーケンシャルライト(Q8T1)が4365.27MB/秒と、非常に高速であった。ノートPCのストレージとしてトップクラスのパフォーマンスといえる。

また、参考として総合ベンチマークプログラムの「PCMark 10」を実行したところ、総合スコアが4634、Essentialsが9544、Productivityが6356、Digital Content Creationが4453と、こちらも非常に高いスコアとなった。

PCMark 10 v2.1.2506
総合 4634
Essentials 9544
Productivity 6356
Digital Content Creation 4453

スペック面では、いち早く5G対応無線WANに対応したことも高く評価できる。スマートフォンより多くの情報をやりとりするPCこそ、5Gの恩恵があるはずだ。VAIOストアでは、5G対応無線WANの搭載・非搭載を自由に選べるのはありがたい。

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●最軽量構成時で1kgを切る圧倒的なモビリティ

「VAIO Z」の3つ目の魅力が、圧倒的なモビリティだ。「VAIO Z」は、最軽量構成時の重量が約958gであり、同じ14.0型液晶を搭載した「VAIO SX14」に比べて、重量が約41g軽くなっている(最軽量構成時同士での比較)。この約958gという重量は、Hプロセッサー採用ノートPCとして世界最軽量※。この軽量化に貢献しているのが、最初に紹介した立体成型フルカーボンボディである。

※最軽量構成時、本体質量約958g。2021年1月6日時点ステラアソシエ調べ。

モビリティというと、重量やサイズばかりが注目されがちだが、いくら本体が軽くてもバッテリー駆動時間が犠牲になってしまっては、モバイルノートPCとしての魅力は半減してしまう。「VAIO Z」は、バッテリー駆動時間においても、これまでのVAIOシリーズで史上最長となる最大約34時間(JEITA測定法2.0で計測、フルHD液晶モデル)という、超長時間駆動を実現しているのだ。この長時間駆動を実現した秘密は、バッテリー形状の最適化と、あらゆるデバイスを低消費電力化し、無駄な電力を限りなく減らしたことにある。

また、低消費電力化については、6年前の先代「VAIO Z」に比べて、性能は大きく向上しているにもかかわらず、消費電力はかなり小さくなっているという。

一般的な使い方では、JEITA測定法2.0の結果よりも駆動時間が短くなることが多いが、それでも1泊2日の出張程度なら、途中で充電をしなくても十分使い続けられる。また、ACアダプターも新設計になり、VAIOの製品同梱ACアダプターとしては初めてGaN(窒化ガリウム)素子を採用。65Wという大出力を実現した。

  • 65WのACアダプターが付属。GaN素子採用で小型軽量化を実現,

モビリティの最後の要素が、ボディのタフさである。ボディがタフで、衝撃や落下などにも強くなければ、安心して持ち歩けない。「VAIO Z」は、世界初の立体成型フルカーボンボディを採用しているが、そのカーボンの比弾性率(同じ重量当たりの弾性率を示す)は、アルミニウム合金やマグネシウム合金の約2倍であり、ボディの剛性は非常に高い。

「VAIO Z」では、天面と裏面の2面について、アメリカ国防総省が制定したMIL規格(MIL-STD-810H Logistic Transit Drop Test)を超える、高さ127cmの鉄板への落下試験をクリアしているほか、天地・前後・左右の6面について、高さ90cmの鉄板への落下試験、角や辺の20方向について、高さ76cmの鉄板への落下試験をクリアしている。ほかにもペン挟み試験や液晶限界開きひねり試験、150kgfの加圧振動試験などの過酷な試験をすべてクリアしている。

このように「VAIO Z」のモビリティは、重量、バッテリー駆動時間、堅牢性のすべての要素を高いレベルで満たしているのだ。

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以上が、筆者が体感した「VAIO Z」の魅力だ。他にも使いやすいキーボードやタッチパッド、Thunderbolt 4/USB4対応のUSB Type-Cを2基搭載していることなど、紹介していない魅力はまだまだある。「VAIO Z」は、VAIOシリーズのフラッグシップの名に恥じない、圧倒的にハイスペックな機能を備えたモバイルノートPCの完成形ともいえる名機だ。ユーザーの期待にしっかりと応えてくれるので気になった方はぜひチェックしてみてはいかがだろうか。

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