国を挙げて「働き方改革」の取り組みが進められるなか、オフィスで働いていた従業員に対してもテレワークが求められるようになっている。また、今年に入っての新型コロナウイルス対策により、急遽在宅ワークを行わねばならず、システム面や体制面の対応に苦労する企業も多い。そこで、テレワークを迅速かつ安全に可能にする方法を探すべく、企業の働き方改革やITプロジェクトの支援などを手掛けるクロスリバーの代表取締役社長 CEO/アグリゲーターの越川慎司氏と、ゼットスケーラーのダレンマッケレン氏と伊東氏に話を聞いた。

「働き方改革」は「目的」ではなく「手段」

──日本国内でも働き方改革の気運が一気に高まっていますが、越川さんは「働き方改革」の現状をどのように捉えていますか。

越川氏:私は残念ながら日本企業の働き方改革はうまくいっていないと見ています。当社が実施した調査によると、働き方改革に関して「何かしら取り組んでいる」とした企業は80%以上に上るものの、ではそれが成功しているかと問うと、「成功している」と答えた企業はわずか12%でしかありません。つまり88%の企業では、働き方改革がうまくいっていないということです。

──働き方改革が成功していない原因としては何が考えられますか。

越川氏:我々も原因を追求していったところ2つの問題が明らかになりました。まず1つが、ほとんどの企業が働き方改革それ自体を“目的”としてしまっていることです。「うちでは働き方改革を進めていますよ」と言えればそれで良しというスタンスで、その実態はというと、例えばリモートワーク制度を導入したとしても実際に使っている人は1割もいないといった感じで機能していないのです。本来、働き方改革というのは目的ではなく、会社の成長や社員の幸せを実現するための“手段”であるはずなのです。

そしてこれこそが2つ目の問題であり、成功している12%の企業以外は、働き方改革という手段を用いて、何を目指すのかという「成功」のかたちが見えていないのです。「会社の成長」と「社員の幸せ」の両立──この実現を働き方改革の明確な目的としてはっきりと定義すれば、成功する確率は3.7倍にまで上がります。ですからコンサルティングする企業に対しては「働き方改革を目指さないで」と、最初に話すようにしています。

  • 株式会社クロスリバー 代表取締役社長 越川慎司氏

    株式会社クロスリバー 代表取締役社長 越川慎司氏

テレワークの課題とVPNの問題点

──働き方改革の一環としてテレワークを取り入れる企業も増えていますが、越川さんから見て現状のテレワークにおける課題はどこにあると考えますか。

越川氏:大きく3つあると思います。1つはPC等のクライアント端末やネットワーク回線などのインフラの整備、2つ目は社内のITガバナンス、そして3つ目がコストとセキュリティです。

 私のもとにも「明日からテレワークをやりたいのだが、どうすればいいか?」といった相談が毎日20件ほども寄せられています。その際には「ハードウェアとソフトウェアの両方の準備をしてください」と答えるようにしています。ソフトウェアと言ってもそれはテレワークに当たっての人間側の意識やコミュニケーションを指し、ハードウェアにはITシステムに加えて人事制度など組織面でのシステムも含みます。実際、ビジネスチャットツールやZoomのようなWeb会議ツールを導入したはいいけれど、それらをちゃんと使いこなしているところがどれだけあるか疑問です。IT部門としてはどうしてもシステムの導入が目的になってしまいがちですが、効果的に使いこなすためには社員の意識の醸成もまた必要なわけです。ポイントは「現場起点でITを使いこなす」ことにあります。

──在宅勤務をはじめテレワーク時の社外から社内のアクセス手段としてVPNを使用している企業も多いですが、VPNについてはどのような見解を持っていますか。

越川氏:基本的にテレワークでのVPN使用には反対のスタンスです。実際、多くの企業では、想定していなかったテレワークの需要拡大にVPNのキャパシティがまったく足りておらず、社内ネットワークにアクセスできないためそもそも仕事にならないといった状況に陥っています。そのため、名だたる大企業でも、部門ごとに時間を分けてVPN接続してテレワークを行うといった使い方をせざるを得ないといったケースをよく耳にしますね。これに加えてVPNには遅延がつきものなので、オンライン会議などでは使い勝手が悪くなってしまいます。

伊東氏:同じような悩みは私もよく聞きます。社員の多さからか意外にも大企業ほど課題が多いように感じます。

──これまで挙げられたようなテレワークにおける課題に関して、どのような解決策があると考えますか。

越川氏:解決のキーワードは「内省」です。まずは内々で試みて、その結果を省みて改善する──これを繰り返すわけです。失敗はどこにでもあるものだと、ある程度許容すれば、その失敗を省みることで改善策も浮かび上がってくるはずです。日本の特に大企業はPDCAのうちのP(Plan)に時間をかけすぎてしまいがちですが、そうではなくまずはD(Do)=実行してみて、その後のC(Check)とA(Action)へとつないでいくのが肝要ではないでしょうか。先に挙げたようにテレワークを実施したらVPNがパンクしたのであれば、VPNの接続ポートを増やすなり、いっそのことVPNをやめてしまって別のアクセス手段を検討するなど、改善策を打てばいいわけです。今後の対応力を強化するためにも、今これを行っておくのはとても大事なことだと思いますね。

クラウド時代のテレワークに求められる「ゼロトラスト」の発想

──越川さんがお話したようなテレワークの課題について、ゼットスケーラーとしてはどのような見解を持っていますか。

伊東氏:まず、現在のサイバーセキュリティの世界で定着している「ゼロトラスト」の概念がテレワークにおいても強く求められるようになっていると考えます。ゼロトラストというのはその名前の通り、信用せずに常に疑ってかかるというセキュリティ上の姿勢を指します。従来のセキュリティの考え方は性善説にのっとって、VPNも性善説に基づいた使い方になりがちです。つまりVPNで繋いでしまえば、ユーザーは認証済みとして信頼され、どんな社内リソースにもアクセスできるというというのが一般的なのです。

ゼットスケーラー 営業本部長 伊東宏祐氏

ゼットスケーラー 営業本部長 伊東宏祐氏

しかしクラウド時代のネットワークでは、こうした性善説ではなく、性悪説のゼロトラストの考え方に基づいてネットワークやセキュリティを考えなければいけません。従来であれば、データセンターの出入り口を管理しておけばそれで良しといったアプローチでしたが、外部からVPN等で接続した際に、端末がマルウェアに汚染されていれば内部でも感染が拡がってしまうといった二次感染リスクがありますし、悪意のあるユーザーが機密情報を窃取するといった情報流出リスクも生じてきます。だからといってこれらのリスクをすべてネットワークの出入り口(VPN Gateway)で防ごうとしたのでは、過剰な負荷がかかってしまい今度はユーザービリティが損なわれてしまうでしょう。

──では、そのようなテレワークの課題に対し、ゼットスケーラーではどのような解決策を提供しているのでしょうか。

伊東氏:ゼットスケーラーでは、アプリケーションおよびそのロケーションに対する攻撃リスクを排除するアーキテクチャであるSoftware Defined Perimeter (SDP)を採用し、Zero trust network access (ZTNA)を実現しています。これは、我々が端末とアプリの間に入ることで、双方がそれぞれインターネットに攻撃の対象となる表面を晒すことなく、セキュアかつユーザービリティも高い、クラウド時代のネットワークにふさわしいアクセス方法です。

それこそがクラウド型のリモートアクセスソリューション「Zscaler Private Access(ZPA)」で、ユーザーが接続する場所や方法、さらには、アプリケーションが存在する場所に関係なく、安全かつスムーズな接続環境を提供します。ZPAは、100%クラウドで構築されたプラットフォームですが、アプリケーションのクラウドへの移行時や、複数のクラウドにまたがったマルチクラウド環境においても非常に有効と考えています。

──アプライアンスベースのテレワークソリューションとの違いはどこにあるのでしょうか。

ゼットスケーラー エリアディレクター ダレンマッケレン氏

ゼットスケーラー エリアディレクター ダレンマッケレン氏

ダレン氏:オンプレミスつまりハードウェアであるアプライアンスベースのアクセスソリューションでも「クラウドソリューション」をうたっているものはあります。しかしながらそうしたソリューションは、実際にはハードウェアをデータセンターに置いてクラウドソリューション的に振る舞っているだけなので、ニーズが拡大すればハードウェアを増強しなければなりません。

対してZPAは、完全なクラウド型のリモートアクセスソリューションですので、組織の帯域幅のニーズに合わせて自動的かつ過不足なく拡張することが可能です。これはコスト面でも大きなメリットとなってきます。

  • ZPA仕様詳細

    ZPA仕様詳細

──国内企業での代表的な導入事例を紹介してください。

ダレン氏:システムインテグレーターの伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)では、1万ユーザーという規模でZPAを利用いただいています。現在ではテレワークに限らず、営業担当者が出先で利用したり、エンジニアが常駐先で使ったりと、ZPAの活用より多様な働き方を実現しています。またある大手住宅メーカーでも、ZPAを導入することで急拡大したテレワークの需要に応えることができています。

──ゼットスケーラーのソリューションについて越川さんはどういう感想を抱いていますか。

越川氏:これまでの話からわかったのは、会社の成長と仕事の生産性の向上、社員の機動力を高めたうえでセキュリティを担保するという、働き方改革を目的ではなく手段とするためのソリューションとしてVPNよりもはるかに適しているのではないかということです。いま日本企業にはDXをはじめ変化への対応力が求められていて、そこでは俊敏性や適応性が重要になってきます。そのため短期間でIT資産を増減できるクラウドソリューションであることは必須とも言えるかもしれません。リモートワークも最初はスモールスタートでいいので、とにかくリーンスタートアップしてやがて全社に拡大していく──そんな展開も可能でしょう。

「働き方改革」から「儲け方改革」へ

──最後に、働き方改革に苦戦している企業やこれから本格的に取り組もうとしている企業に向けたメッセージをお願いします。

越川氏:そもそも私は「働き方改革」という言葉自体あと1、2年ほどで使われなくなるのではないかと見ています。そうではなく、これからは「儲け方改革」という発想にシフトしていくのではないでしょうか。これはすなわちビジネスモデルが変わるということです。労働というのは、会社が儲けて成長するためのあくまで手段です。儲け方改革という意識のもとで、全社員がどのように行動変容していくのか、そのためにどうITと付き合っていくのかという視点こそがポイントとなるはずです。

伊東氏:儲け方改革、素晴らしいですね。海外であればそれが普通のことなのでしょうけれど、日本ではどうしても「働き方改革」という言葉に引っ張られすぎている感じが確かにあります。

越川氏:あと働き方改革というとどうしても労働時間の削減と捉えられがちですが、大事なのは削減した時間や労力をいかに新たなチャレンジへと振り向けることができるかです。そうして時間の使い方の変革を促しながら変化への対応力を強化していくことが大事だと考えます。

ゼットスケーラー公式ホームページ


https://www.zscaler.jp

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