新エンジン「DIGIC 8」進化のポイントは
――続いて、EOS Kiss Mの性能進化のポイントである新エンジン「DIGIC 8」について、エンジンシステムの開発を担当した三本杉さんにお聞きします。DIGIC 8はどのようなコンセプトで開発されたのですか?
三本杉氏:「大きく分けて2つあります。1つは『撮影機能の進化』です。撮影者が撮りたいと感じたときに、撮りたいものをきちんと撮れる。それを実現するために高速AFや高速連写といった機能面での進化を目指して設計しました。
もう1つは『4K動画』です。これまでのEOSでは、4K動画に対応しているのは一部の上位モデルだけでしたが、今回初めてエントリー向けのカメラとして4K動画を搭載するために、映像エンジンをよりブラッシュアップしています」
――新エンジン開発における「大きな壁」はありましたか?
三本杉氏:「たくさんの機能を詰め込もうとすると、どうしてもエンジンが扱う情報量が増えて、消費電力が高くなったり、サイズが大きくなったりします。単に増やすだけでは成立しないところをどうやって成り立たせるか。それがまずいちばんの壁でした。
そこで、考え方を根本的に改め、今までの延長線上ではなく、新しい発想のアルゴリズムを採用することにしました。扱うデータ量を増やすのではなく、データの扱い方そのものを変えるというチャレンジです。
例えば、エンジンでは撮影した画像から様々な情報を取得してAFや画像処理を行うのですが、効率的かつ効果的に情報を収集する手法の開発などを実施しました。そうした工夫の積み重ねによって、DIGIC 8では高機能と低消費電力を兼ね備え、EOS Kiss Mの小型軽量にも貢献することができました」
――開発において絶対にゆずれなかった点はありますか?
三本杉氏:「たくさんのことを詰め込む必要があり、そのためには全体のバランスを考えたうえで、優先順位を決めなければならないこともあります。しかし『画質』に関しては、これくらいでいいといった妥協はせず、常に最優先に考えていました。EOSにとって画質という部分は最も重要な要素だからです」
――画作りの傾向はこれまでのEOSと同じですか?
三本杉氏:「はい。ノイズリダクションを進化させたということはありますが、画作りの基本方針はこれまでと同じです。過去の製品と比較して、同じような色や階調で撮れることもEOSの魅力のひとつだと考えています」
――スペックでは表せないEOS Kiss Mの進化のポイントはありますか?
三本杉氏:「1つはエンジンが高速化したことで、動作全般でスピーディになったこと。特にAFや連写はこれまで以上にきびきびと動きます。もう1つは、エンジンなどの処理をうまく工夫することで消費電力を抑えたことです。例えば従来機EOS M5と比べた場合、バッテリーが小さくなったにもかかわらず、動画撮影可能時間はほとんど同じです」