音色の秘密 - 色気が足りない!?

ベヒシュタインの音色を保証するプレートが、ひときわ存在感を放つ

「家庭に置けるグランドピアノを目指そう」というコンセプトで進められたCELVIANO Grand Hybridの開発。なかでも最大の特長となったのが、ベヒシュタインと共同で開発した音色「ベルリン・グランド」だ。ベルリン・グランドは、透明感のある音と響きが特徴となっている。

このほか、迫力と力強さを備えた「ハンブルク・グランド」、重厚な低音と優しい弱音が出せる「ウィーン・グランド」も搭載。「AiR Grand音源」と総称される技術により、これら3通りのグランドピアノの音色を自由に選択できる。ピアノファンにはたまらない機能といえるだろう。

ここで楽器事業部の阪下彰氏は、「C.ベヒシュタイン社とコラボレートするというアイデアは、開発当初はありませんでした」と意外な言葉を口にした。ピアノとしてのクオリティを突き詰めるため、伝統あるピアノメーカーに意見や評価を求めるなかで、ベヒシュタインとのコラボレーションへと進んだのだという。

ベヒシュタインとのコラボは困難を極めた。当時の苦労を語る伊藤氏(左)、阪下氏(中央)、新野氏(右)

デジタル技術で伝統の銘器の音色を再現するという試みには、想像以上の困難が伴ったようだ。C.ベヒシュタイン社が要求する音色のレベルは高く、また時には「音が明るい」「色気が足りない」「カラーがない」といった抽象的な言葉による指摘も受けたとのこと。

開発側も感覚を研ぎ澄ませ、根気強く試行錯誤を繰り返す必要があった。音色を担当した楽器事業部の伊藤直明氏は「とても良い勉強になった。いくつもの新しい試みを行うきっかけになり、音色を調整する上での発見にもつながった」と当時を振り返る。

現在、カシオとC.ベヒシュタイン社は「楽器の開発に終わりはない」という意識を共有している。両社とも、誕生したばかりのCELVIANO Grand Hybridをさらに進化させるべく、気持ちを新たにしているとのことだった。