WindowsからLinuxベースのOSに切り替え
「ThinkPad X1 Hybrid」の目玉機能となるLunuxベースのOSシステムを、レノボは「Instant Media Mode」(IMM)と名付けた。IMMではブラウザ、メール、動画や音楽などの再生、写真の閲覧などを行えるのだが、要するにわざわざWindowsを使うまでもない作業をIMMでより簡便に行えることを主眼に置いている。
これは、ひと頃“インスタントモード”などの呼び名でPCメーカー各社がこぞって取り入れたものとも似ている。「OS(Windows)の起動を待たずに、すぐさまインターネットやテレビを見られる」といったうたい文句の類いだ。ただレノボのIMMは、そうしたインスタントモードと2つの点で異なっている。1つめは「ThinkPad X1 Hybrid」では電源を入れる際にWindows 7とIMMのどちらかを選択して起動するのではなく、まずWindows 7を起動し、その上で必要に応じてIMMに切り替えるという仕組みになっていること。感覚的にはWindows 7上でIMMというソフトを立ち上げるようなイメージだ。Windows 7からIMMへの移行はほんの2~3秒で済み、IMMの実行中はWindows 7がスリープ状態になる。そして、IMMを終了させるとWindows 7のログオン画面が表示され、Windows 7に戻れる。このように、電源の入り切りや再起動をかけることなく、2つの異なるOSをシームレスに行き来できるところが新しい。
Windows 7のデスクトップ画面右下にはIMMの呼び出しパネルが表示され、ここをクリックすることでIMMに移行できる |
IMMのホーム画面。ここからブラウザを起動してWebを閲覧したり、動画や音楽などを再生することができる。もちろん、IMMも本機のキーボードやポインティングデバイスで操作が可能 |
そして2つめに、「ThinkPad X1 Hybrid」ではIMMがWindows側のハードウェアを共用するのでなく、IMM専用のハードウェアを別に内蔵し、その上で動作していることも特徴的だ。具体的には、Windows 7で使われるインテルCPUや4GBメモリなどとは別に、クアルコム製のSoC(システム・オン・チップ。CPU、グラフィック、動画や音楽のデコーダーなどをワンパッケージにしたもの)や1GBメモリなどを実装した拡張カードが本機の内部に入っている。ストレージもWindows側との共有ではなく、IMM用に16GB(うちユーザー領域は11.2GB)のフラッシュメモリが別に搭載されている。そのため、IMM側で利用したいコンテンツは、あらかじめIMM用のフラッシュメモリに転送しておく必要があるが、この領域はUSBマスストレージとしてWindows 7上からもアクセス可能なので、さほどの手間ではない。
IMM側のシステム構成やホーム画面を見てピンと来た方もいるはずだが、この“Linuxベース”とされているIMMの正体はAndroid OSだ。厳密に言えば、AndroidをレノボがカスタマイズしたAndroidカスタムOSで、ホーム画面は「ThinkPad Tablet」や「IdeaPad A1」の画面を彷彿とさせる。IMMのUIや設定画面がAndroidスマートフォンやタブレットとほとんど同じであるほか、そもそもアプリケーションに「Androidシステム」が存在していて、そのバージョンは2.3.4となっている。
ただし「ThinkPad X1 Hybrid」をAndroid端末としても使えると考えるのは早計だろう。なぜなら、IMMには「Google Play」(グーグルが運営するAndroid OS用アプリの公式マーケット)がなく、スマートフォンやタブレットなどのようにユーザー自身が任意のアプリを追加できないからだ。IMMの要はブラウザやメールなどの機能を簡易に利用できることであって、それを提供する手段としてAndroidを用いたに過ぎない。