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データ活用を推進する上で必要な「12の役割」と強化に向けた「3つのステップ」

[2021/07/29 08:00]伊藤正子 ブックマーク ブックマーク

「データ活用という手段に関して、『高度化/成熟化を図ろうという計画はあるが、目的が定まっていない』という状況が散見される。だが、データ活用力を強化する上では、その目的を明確化することが重要だ」――こう語るのは、ガートナー ジャパン マネージング/バイス プレジデント 堀内秀明氏だ。

加えて、何を強化すれば効果が得られるのかについて検討するには、まず「どのような強化ポイントがあるのか」を理解する必要がある。

7月12、13日に開催された年次カンファレンス「ガートナー データ&アナリティクス サミット」では、「データ活用を推進する上でどのような役割を強化すべきか」と題し、堀内氏が登壇。データ活用を推進する上で必須となる「12の役割」と、企業における「強化ポイントの見極め方」について語った。

データ活用の推進に必要な「12の役割」

ガートナーでは、データの「統括/マネジメント」「収集」「提供」「分析」の各領域ごとに、データ活用を推進する上で必要だと考えられる役割を定めている。

役割

データ活用の推進に必要な「12の役割」/出典:ガートナー(2021年7月)

堀内氏は「各役割は、1人が複数を担当することもあれば、組織的に1つの役割を担うこともある。まずは、データを活用していくにあたって、こういった機能が組織の中に必要なのだということを理解していただきたい」とし、各役割について概説した。

堀内秀明氏

ガートナー ジャパン マネージング/バイス プレジデント 堀内秀明氏

「統括/マネジメント」に関する4つの役割

まず、CDO(最高データ責任者)は、データに関する主要な取り組みを統括する役割を担い、データを適正に管理し、適切に分析することでビジネス収益への貢献の道筋を付けることが期待される。堀内氏は、「データが威力を発揮するビジネス領域の事情に精通している役員クラスのリーダーが担うことが望ましいが、現時点でCDOのポストが設置されている日本企業は少ない。社内に適正な人材がいなければ、外部から採用することも念頭に置くべき」だと説いた。

続いてデータ/アナリティクスマネジャーには、データとアナリティクスに関するベストプラクティスの集約と展開、ビジネス目標に対するデータやアナリティクスの貢献度の評価を行うことが期待される。不可欠なのは、多様なステークホルダーと組織横断的にコミュニケーションがとれることだ。

主な役割として、期限/予算内でのプロジェクトの計画から実施、デリバリー、担当プロジェクトの連絡窓口などを担うのがプロジェクトマネジャーである。コミュケーションやマネジメント、意思決定に関するスキルが求められる。

「データとアナリティクスを用いた新しい仕事の進め方」を従業員に促す役割を担うのがチェンジマネジャーだ。チェンジマネジャーは、「組織が変化を受け入れやすいように導くチェンジマネジメントや、人材育成に関する経験/知識を持っていると役立つ」(堀内氏)という。

「収集」に関する2つの役割

アプリケーションから入力されたデータには欠損値やブレなど、分析/活用する上で不都合な要素が含まれる。そういった要素がない、もしくは許容範囲だと自信を持って回答できる状態にするのが情報スチュワードの役割だ。

「情報スチュワードの役割があまり意識されていないことも多いので、(これに関しては)明示的に任命すること自体が多くの場合、強化の第一歩になるのではないかと思います」(堀内氏)

一方、マスタデータ管理マネジャーに期待されるのは、ビジネス上の変化がマスタデータ自体にどういう影響を与えるのか、あるいはマスタデータ管理プログラムをどう変化させる必要がありそうかを評価し、「マスタデータ管理プログラムに対し、必要に応じて適切な対策が施されること」を保証することだ。必要なスキルとしては、マスタデータが適切に管理されていないことによる影響を理解していることや、顧客や製品といった管理対象データの特徴や業界標準を理解していることが挙げられる。

「提供」に関する4つの役割

データの提供に関する4つの役割に関しては、「特にIT部門の活躍が期待される」と堀内氏は語る。

アナリティクスとBIの開発者は、レポートやダッシュボードの開発、データ提供依頼への対応などを担う。「この役割を強化したい場合、要望を受ける際に、なぜそのデータが必要なのかを理解し、最善の情報を提案するように対応と意識を変えるとよい」と堀内氏はコメント。最近のBIツールには知るべき情報をAIが提示してくれるものもあるので、そうした機能を評価/提供することも強化策だと言えると補足した。

また、AIと機械学習の開発者は、アプリケーションへのAIモデルの組み込みから統合、デプロイのほか、モデルをトレーニングして実運用につなげるためのデータ収集/前処理といった役割を担う。どのようなビジネス局面でどのようなAIや機械学習が貢献できるかを判断する必要があるため、それらの仕組みや長所/短所を理解していることが求められる。

「ただし、AIモデルの開発ができることは必須ではありません。そこは、データサイエンティストやサービスプロバイダーの力を借りればよいのです」(堀内氏)

組織横断でデータパイプラインを効率化し、データ分析する際の準備を行うのがデータエンジニアだ。データという視点から、IT部門とビジネス部門の両方のユーザーを専門的かつ横断的にサポートする役割を担う。

情報アーキテクトは、情報資産がビジネスに与える影響を最大化するために、全社で共有すべきビジネス情報とは何かを定義し、安全かつ簡単に利用できるようなアーキテクチャを設計する。それには、自社ビジネスの現状と今後の方向性を正しく理解していることが必要だ。

「さらに、今後の変化の可能性を理解し、成果を確かなものにするには、経営層やビジネス部門の責任者と良好なコミュケーションがとれることが必要になります」(堀内氏)

「分析」に関する2つの役割

分析に関する役割は2つある。1つは、定量分析によって複雑なビジネス課題をモデリングし、解決策を見つけ出すデータサイエンティストだ。コンピューターサイエンスや統計学、経済学などの高度な知識を有し、好奇心を持って自主的に探求する人材が望ましい。だが、そうしたスキルの獲得は容易ではなく、素養がある人は少ないというのが実情だろう。そこで注目されるのが「市民データサイエンティスト」である。ただし、「市民データサイエンティストだけで十分ではない」と堀内氏は指摘し、「プロのデータサイエンティストと市民データサイエンティストが共存、協力することで対応できる課題の幅が格段に広がるということ」だと強調した。

他方、アナリストは、データに基づいてビジネスの現状を分析し、チャンスやリスクを発見する役割を担い、いくつかのタイプが存在する。1つはビジネスの可視化を行うビジネスアナリスト、もう1つは経営の見える化を行うビジネスプロセスアナリストだ。

こうした役割はあらゆる領域で力を発揮できる可能性があるが、強化すべき領域は企業によって異なる。堀内氏は「データからチャンスやリスクを発見する力が不足していることが喫緊の課題なら、専任の分析担当者を任命するのもよいだろう。全般的にデータ軽視であるなら職能レベルごとにどの程度データ分析ができるべきかを人事と協力して規定するのもよいかもしれない」と説いた。

データ活用力の強化「3つのステップ」

講演後半では、データ活用力を強化していく方法について解説がなされた。強化のプロセスは、「テーマ候補の洗い出し」「テーマ候補の評価」「評価ポイントの見極め」の3つのステップから成る。

ステップ1:テーマ候補の洗い出し

「高度な分析スキルを獲得する方法や、データを統合/蓄積する新たなアプローチといった要素は確かに重要だが、目的が不明瞭なまま導入を進めてもビジネス成果につながる可能性は非常に低い」と堀内氏は強調する。

データ活用力の強化を図る際、「どこを強化するか」というテーマを洗い出すための有望なアプローチとして、堀内氏は次の3つを挙げた。

  • 中期経営計画やビジネス部門の計画をチェックし、そのなかにデータ活用を推進することで支援できそうなテーマを探す
  • ビジネス部門のリーダーと直接話し、支援できるテーマを探る
  • IT部門内でくすぶっているデータ活用に関する課題を整理してみる

ステップ2:テーマ候補の評価

テーマ候補がいくつか見つかったら、次はそれらのテーマの質を評価する。堀内氏が進める評価ポイントは次の3点だ。

  • ビジネスインパクトの大きさ
  • 初期成果が期待できる時期
  • データ活用による成果だと証明できるかどうか

「この3点を吟味し、ビジネスインパクトが大きく、短い期間で初期成果が得られそうで、成果の証明が容易なものがあれば最高ですが、現実はそこまでシンプルではないかもしれません」(堀内氏)

ステップ3:評価ポイントの見極め

ステップ1、2を踏まえ、12の役割のどれを強化すると良さそうかをチェックする。堀内氏はチェックリストを示し、「複雑そうに見えるかもしれないがやることはシンプル」と説く。

チェックリスト

評価ポイントのチェックリスト/出典:ガートナー(2021年7月)

まず、選んだテーマ候補を念頭に置き、該当する役割が自社にあるかをチェックして、ある場合はどこにあるかを極力詳細に書き出す。その役割が社内にあるにせよないにせよ、強化すると良さそうかどうかを考える。有効だと思ったら、強化案を書き出し、その難易度を見積もる。堀内氏は、「一般的に自身の権限範囲から離れるほど難易度は高い。また、過去に類似の経験があれば難易度は低く、初めてなら高くなるはず」だと説明した。

* * *

最後に堀内氏は、架空の企業を題材にした事例で3つのステップを実践していく様子を紹介。その上で改めて、「データ活用の目的を明確にしてほしい」と訴える。

「データ活用はより良いビジネス成果を得るための手段です。推進自体が目的にならないように注意してください。また、ビジネス側との相互理解を深めてください。データ活用で成果を得るには、ビジネス側の考え方や行動に変化が生じる必要があります。最初は小さな変化で十分です。小さな変化の積み重ねがデータ活用を推進し、ビジネス成果を得ていくためには必要なんです」(堀内氏)

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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