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「足で稼ぐ営業はもはや限界」- 横河電機が4年をかけたDXの取り組み

[2021/08/26 09:00]山田井ユウキ ブックマーク ブックマーク

ビジネスのやり方、特に営業のスタイルは今、大きな変革の必要に迫られている。インターネットにより情報が溢れかえる社会では、購買行動の一環として消費者自らが情報収集するのが当たり前となった。B2B領域も例外ではない。営業担当者に連絡する前に購買意思が決定していることも珍しくなくなった今、もはやこれまでのように「足で稼ぐ営業」は通用しなくなりつつあるのだ。

では、そうした現状を前に、企業はどのようにビジネスプロセスを変革するべきなのか。7月15日に開催された「TECH+ EXPO 2021 Summer for データ活用」では、横河電機 常務執行役員 マーケティング本部 本部長 CMO 博士(技術経営)阿部剛士氏が登壇。「DX時代のデジタルセールス&マーケティング 売上拡大への道標~インサイドセールスの重要性」と題し、横河電機が4年をかけて行ってきた改革の詳細が語られた。

変化が加速する今、営業は何を重視すべきか

「現代は、VUCAワールドと呼ばれています」――講演冒頭、阿部氏はそう切り出した。

「VUCA」とは、「Volatility(変わりやすく)」「Uncertainty(不確実で)」「Complexity(複雑で)」「Ambiguity(曖昧)」という4つの単語の頭文字から成るキーワードだ。変化が激しく、将来が見通せない今という時代を表現する言葉として、近年耳にすることが多い。

昨今ではコロナ禍の影響も加わり、さらに変化が加速している。阿部氏に言わせれば、現在のビジネスはもはや”パーフェクトストーム”だ。全ての企業は吹き荒れる嵐のなかにあり、それぞれが知恵を絞って生き抜いていくしかない。

そもそも、コロナ禍以前からビジネスは変革に迫られていたと阿部氏は言う。例えば、営業という仕事もその1つだ。阿部氏によると、日本では営業職のうち、約40%が顧客情報を整理/共有できておらず、いわゆる”やみくも営業”になってしまっているという。

さらに、「訪問信仰」も終わりを迎えようとしている。買い手が営業担当者による訪問を希望する大きな理由は「営業担当者の誠意」や「安心感」を感じられることだが、一方で訪問によって見せた「誠意の対価」として成約率アップが得られるとは限らない。

「昭和の時代から脈々と続いてきた”足で稼ぐ営業”はそろそろ限界にきています。コロナ禍がその引き金を引いたといっても過言ではありません」(阿部氏)

阿部剛士氏

横河電機 常務執行役員 マーケティング本部 本部長 CMO 博士(技術経営)阿部剛士氏

そこで重要になってきたのが、デジタルセールスとデジタルマーケティングである。そもそも、消費者の行動は近年、大きく変化している。消費者の多くが、購買行動時に自ら情報収集を行っていることは言うまでもない。また、興味深いのが「価格」よりも「体験」を重視する消費者が増えているということだ。

こうした特徴が当てはまるのは、何もB2Cの領域だけではない。阿部氏が紹介した米Forrester Researchの調査によれば、B2Bにおいても64%が購買意思決定において「価格よりも顧客体験を重視する」と回答している。

「B2Bでも自ら情報収集する消費者の割合は7割を超えており、デジタル上での情報収集を好む購買者の割合も7割近くいます。つまり、これまで消費者は何かを買うとき、まず営業担当にコンタクトしていたのですが、今は自分で検索して決めてしまうわけです」(阿部氏)

こうしたことから、阿部氏は「顧客を正しく理解した上で、自分の部署だけではなく会社全体として『問題ない水準』ではなく、『期待を上回る水準』を目指してほしい」と提言する。

CSとCXの違いに着目せよ! - 顧客と長期的な関係を築くには?

こう言われると、多くの経営者は「自社は”期待を上回る水準”を満たしている」と主張するかもしれない。しかし、それは一方的な思い込みの可能性がある。

阿部氏が着目するのが「CS(顧客満足度)」と「CX(顧客体験)」の違いだ。日本企業はとにかくCSを気にしがちである。だが、CSは言い換えれば「心地良さ」の指標であり、感動までは至らない。一方、CXでは「感動」という顧客体験を与える。

CSとCXはその目的も異なっている。CSの目的は顧客満足度の維持だが、CXの目的はロイヤルカスタマーづくり、すなわち製品やサービス、あるいは企業そのもののファンをつくることだ。

従来の顧客はマス広告を見て製品を知り、検索して調べ、資料請求などを経て営業担当者からの情報提供や提案を受け、契約に至るという流れが一般的だった。

しかし、もはやそうした時代は終わりつつある。デジタル広告を見て製品を知った顧客は、その後自らが十分な調査/評価を行う。製品やサービスのWebサイトを閲覧して他社と比較し、セミナーなどに参加して吟味した後、ようやく営業担当者の出番となる。つまり、購買プロセスにおいて営業活動が占める割合は以前よりもはるかに減少しているのだ。

だからこそ、「足で稼ぐ営業」から脱却し、デジタルマーケティングやデジタルセールスを活用して顧客に「体験」を与え、長期的な関係を築くことが重要となるのである。

インサイドセールスの重要性

そこで重要性を増すのが、インサイドセールスの役割である。

従来のデジタルマーケティング/デジタルセールスにおいては、「認知拡大」や「見込み顧客の獲得」はマーケティングの領域であり、見込み顧客から有望な見込み顧客を抽出し、フィールドセールスにつなぐのがインサイドセールスの役割だった。

しかし、セールス(営業)とマーケティングは何かと対立しがちだ。セールスは「どの顧客を優先して対応すべきなのか不明」「既存顧客の対応に追われ新規顧客対応ができない」といった不満を抱えているし、マーケティングは「セールスは顧客に合わせたフォローがどこまでできているのか?」「顧客獲得だけしていればいいのか?」といった不安を抱いている。

こうした不満/不安を解消し、ビジネスを円滑に進めるためには、両者をつなぐインサイドセールスがより幅広い役割を持つ必要がある。本来はマーケティングの領域である「見込み顧客の獲得」、本来はセールスの役割である「商談」まで含めて、購買プロセスの全てを把握し、顧客の変化に対応して売上を最大化すること。それこそが、これからのインサイドセールスに求められる役割なのである。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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