インフキュリオンは6月9日、キャッシュレス決済の利用動向を調査した「決済動向調査2021年4月調査」の結果を発表した。

記者説明会には、インフキュリオン コンサルティングマネジャー 森岡剛氏が登壇。調査結果を基に、日本の決済サービス利用の全体傾向や消費者のデジタルサービス利用動向などについて解説した。

QRコード決済の利用拡大

「決済動向調査2021年4月調査」は、16歳~69歳の男女20,000人を対象とした「全体調査」と、勤労状況/世帯年収/生計上の立場の3つの軸から8つのセグメントを定義し、セグメントごとに103人ずつ抽出した計824人を対象に生活/金融/決済行動について尋ねた「詳細調査」で構成される。

調査概要

全体調査は、インフキュリオンが2015年3月から定期的に実施しており、主要ペイメントカードの保有/利用状況の経年変化を追っているという。

決済サービスに関していずれかのサービスを「利用している」と回答した割合を見てみると、クレジットカードやデビットカードなど従来型のサービスが伸び悩む中、比較的新しい形態であるQRコード決済は前年6月の調査より6%増の54%と、FeliCa(非接触ICカード)型電子マネーの58%に迫りつつある。

調査結果

複数回答:2020年12月以外はN=20,000、2020年12月のみN=5,000

各サービスについて個別に見てみると、1つでもクレジットカードを利用している人は約78%と利用率は高い。

「クレジットカードは、日本で最も利用されているキャッシュレス決済だと言えますが、伸びても減ってもいません。ただし、日本クレジット協会の統計調査を見ると、取り扱い額は増えています。今までは使えなかった小さな店舗などでも使えるようになったことで、もともと使っている人がより使うようになり、使わない人は使わないままになっているのではないかと解釈できます」(森岡氏)

森岡剛氏

インフキュリオン コンサルティングマネジャー 森岡剛氏

また、FeliCa型電子マネーに関しては、2019年10月の消費税率引き上げに伴うキャッシュレス決済のポイント還元が追い風となり、2020年は利用が拡大したものの、直近ではやや減少傾向にある。森岡氏は、「利用者自体は増えていないようだが、日本銀行が毎月発行している『決済動向』の電子マネーの年間取扱高を見ると、じわじわ上がってはきている」と説明する。

国際ブランドデビットカードも利用者の増加率は横ばいだ。ただし、森岡氏は「銀行側からすると消費者との接点ができるというのが戦略的に重要」だと強調する。また、若年層では拡大の傾向が見られるという。

国際ブランドプリペイドカードは、やや利用率が減少しつつあるのが見て取れる。森岡氏は「利用カードの内訳を見ると、これまでau PAYプリペイドカードが牽引していたのだが、今KDDIにはQRコード決済もあるので、両者の差異化が不十分なのでは」と推測する。

一方、コード決済アプリは大躍進を遂げている。2019年3月時点の調査では12%だった利用率は、今回54%までの伸びを見せた。

「異業種の大手が参入し、日本の決済市場の構造を変えてしまうようなことが起こっています」(森岡氏)

これらのキャッシュレス決済利用率を年齢層別に見ると、QRコード決済は全年齢層で昨年から10%以上増加し、10代~30代の利用率はクレジットカードもしくはFeliCa型電子マネーに次いで2位となっている。また、クレジットカードは年齢が上がるほど利用率も向上する傾向を見せ、国際ブランドデビットカードは前述の通り、利用者の増加率は横ばいだが、10代、20代の利用率は20%を突破している。

調査結果