データと市場を徹底重視! SHOWROOMが実践するプロダクト開発

[2020/11/27 09:00]伊藤正子 ブックマーク ブックマーク

新型コロナウイルスの流行に伴い、消費者の生活様式は大きな変化を迫られた。いわゆる”ニューノーマル時代”の到来により、ビジネスはもちろん、情報収集やショッピング、趣味などさまざまな領域でモバイルを活用する機会は増加している。

App Annie Japanは11月10日~11月12日の3日間、オンラインカンファレンス「Mobile Leaders Summit」を開催した。「ニューノーマル時代を生き抜くための『新』モバイル戦略」をテーマに掲げた同カンファレンスでは、ゲームやメディア/エンタテインメント、金融、製薬などさまざまな業界から有識者が登壇し、最新のモバイル戦略について講演を繰り広げた。

本稿では、SHOWROOM 代表取締役社長 前田裕二氏が登壇した基調講演「ニューノーマル時代を見据えた、SHOWROOMが実践するファクトベースのプロダクト開発と事業戦略」の模様をレポートする。

前田裕二氏

SHOWROOM 代表取締役社長 前田裕二氏(写真提供:SHOWROOM社)

最も正しいのは「ユーザーや市場」

「今日は、(SHOWROOM社が)いかにデータや『サービスがユーザーにどう使われているのか』という利用動向を信じて開発を進めているかという話をメインにお伝えしたいと思います」

――登壇した前田氏はそう切り出し、同社が提供する2つのサービスを紹介した。1つは、ライブ配信/視聴アプリ「SHOWROOM(ショールーム)」、もう1つが10月にリリースされたばかりのバーティカルシアターアプリ「smash.(スマッシュ)」だ。

「まずはリリース」のSHOWROOM

一般的なライブ配信では、演者が全面に映し出される縦型の映像が多い。だが、SHOWROOMは「横型、かつ画面下部に視聴者(のアバター)が見える形式のほうがエンゲージメントが高まるのではないか」という仮説の下、スタートしたサービスだ。

SHOWROOMに関して重視していたのは「まずリリースするということ」だったという。PC版の開発が始まったのが8月、モバイル版には9月から着手し、10月にベータ版をリリース。この段階で発生したさまざまな問題を改修し、11月にグランドオープンと開発はかなりのスピード感で進められた。

開発にあたっては、ユーザーが多用している機能はどれか、どの施策でリテンションが動いたかといったデータを日々細かく観察しており、それを基に方向性を決めているという。

初期の課題は、回遊率がなかなか上がらなかったことだ。その対策として、前田氏は各ユーザーがどの演者の配信をフォローしているかを全体に開示することにした。「ユーザーAがフォローしている演者はこの人たちである」とオープンにすることで、ユーザーAと同じ演者の配信を見ている人が、Aがフォローしているほかの演者に興味を持って見に行くのではないかと考えたのだ。ところが、いざ開発してみたところ、著しくユーザーの離脱率が上がってしまったのである。

「ほかのユーザーがどの演者に興味を持っているかわかったほうが心地良いはずだという仮説のまま走ることもできましたが、データを冷静に観察して、これは違うなと思いました。定量面や定性的な現象、ユーザーがSNSなどでフィードバックしてくれた内容などからも、『ほかの演者も応援しているというのは伝わってほしくない』というインサイトがありました」

こうしたことから、前田氏は一瞬でフォローリストの開示機能を取り下げる判断をしたという。「自分たちの感覚は大切にしているが、ユーザーや市場が最も正しいと信じている」(前田氏)からだ。

大切なのは「目の前で起きている現象と真剣に対峙すること」

もう一つ、リリース前後に意識されていたのは「仮説は3秒で立てて判断する」ことだ。仮説立案から意思決定までの時間を極力短縮し、サービスをリリースしてから観察したデータを基にプロダクトに落とし込むことを大切にしていたという。

初期の成長戦略では、既にある程度の知名度があり、人気の高い演者のルームでギフティング(投げ銭)が盛り上がり、それがSHOWROOMの収益軸になると考えられていた。

だが、リリースから3カ月が経った頃、そうしたミドルクラスのコンテンツでは、無課金ユーザーが課金ユーザーへあまり転換していないというデータが明らかになった。

もしかすると、人がギフティングする理由は、有名人とコミュニケーションできるからではなく、未完成なものが完成に至るまでのプロセスに感情移入し、応援したいと思うからではないか。――そう考えた前田氏は、リリースから3カ月で初期の仮説を覆した。

有名人へのギフティングではなく、”これからの人”へのギフティングが応援につながるというモデルにしてから、SHOWROOMは「一気に生き物のように成長していった」という。前田氏は当時を振り返り、「過去の意思決定のなかで、最も正しかったと思うことの一つ」だと語る。

「目の前で起きている現象と真剣に対峙しないと、こういう判断はできなかったと思います。それまでの仮説を捨てて新しい仮説を立て、サービスをブラッシュアップしていくのはなかなか難しいものですが、SHOWROOMを成長させる上で最も重要なことだったと思っています」

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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