エレベーターやエスカレーターの大手専業メーカーであるフジテックは、新型コロナウイルスの流行をきっかけに在宅勤務への切り替えを行った。在宅勤務を実施するにあたって、IT環境の整備が欠かせないことは言うまでもないだろう。業務効率を維持するためには、オフィスの快適なIT環境をできるだけ社員の自宅に再現する必要がある。
加えてオンライン会議やクラウドサービスなど、これまでは使っていなかった新しいツールが使える環境も整えていかなければならない。そうしたIT関連の面倒を見るのは当然、情報システム部門ということになる。コロナ禍に伴う対応は、あまりにも急激な変化となっただけに、情報システム部門の負担は非常に大きかったはずだ。
この一大変革をフジテックはどのように成功させたのか。キーマンとなったのが、同社で常務執行役員 デジタルイノベーション本部長を務める友岡賢二氏だ。同氏は、その辣腕ぶりから”武闘派CIO”とも称される人物である。
今回、8月20日に開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「ひとり情シスのネットワーク&セキュリティ安全・安定な在宅ワーク環境づくり」にこの友岡氏が登壇。”ひとり情シス”体制で在宅勤務サポートを成功させたポイントについて語った。
在宅勤務への移行決定! そのときCIOは?
在宅勤務への移行が決まってからの友岡氏の動きは早かった。まず行ったのは、業務の遂行に不可欠となるPCの貸し出しだ。古いPCもスペック不足のPCも含め、社内にあるPCは全て貸し出すことを決定。特に活躍したのはChromebookだったという。
「ただし、Chromebookには注意事項があります。まずライフサイクルが読めないこと。Googleのサービスはどんどん機能を拡張してリソースを食うようになるので、メモリの少ないChromebookはどこかで動きがおかしくなります。もう一つは、サポートの期限が切れてアップデートができなくなってしまうこと。これも突然起きるので恐ろしいです」
そういった事情から、現在はiPadの活用を見直しているという。iPadは一見、導入コストが高いように思えるが「5年は使えるし、ソフトウエアのアップデートに対してハードが追随できないということもない。価格も下がっている」とメリットを語る。
次に行ったのは、在宅勤務には欠かせないネットワークの増強だ。在宅勤務ではVPNを使って社内システムに接続することにしたのだが、ライセンスが足りなかったり、サーバの拡張をしてもパフォーマンスが出なかったりといったトラブルに見舞われた。
「そこで、テザリングで仕事ができるようにスマホのデータ量の制限を外しました。通信費がいくらになるのかわからないのでためらいがちですが、そういうことをどんどんやっていきました」
役員会議も全てオンライン化し、役員陣にヘッドセットを配布した。接続も役員自身が行うという今までにないチャレンジだったが、「必要に迫られれば、ちゃんとできるものなんです」と振り返る。
また、社員が自宅のPCを業務に用いることも可とした。だが、特に図面を扱うような職種では、自宅のPCのスペックが低かったり、ディスプレイのサイズが小さかったりして、通常時のパフォーマンスが出ない社員もいる。そうした場合はオフィスのPCとディスプレイを自宅に持って帰っても良いことにした。同社の本社がある滋賀の拠点は車通勤者が多く、持ち帰りやすい環境であることも幸いした。
とはいえ課題もあった。自宅ではAWSのワークスペースにログインし、それを踏み台にして社内のPCをリモート操作することになるが、設計図面などを開く重いソフトウエアを扱う場合、体感でオフィスの50%ほどしかスピードが出ないのだ。これでは生産性が落ちることは自明だった。
「そこでCADサーバなどをAWSにリフトアップしました。するとパフォーマンスが70%くらいまで上がって、まあまあ使えるようになりました。また、ワークステーションを持って帰ってAWSクライアントVPNで接続すると90%くらいまでパフォーマンスが出て、ほぼストレスなく働けるようになりました」
また、自宅にPCはあるがスペックが低く、スマートフォンのほうがマシという社員もいた。そこで友岡氏はPCをスマートフォンの外部ディスプレイとして使う方法も提供。数々のイレギュラーな事態をアイデアで乗り切ったのである。
※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。
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8月20日に開催されたマイナビニューススペシャルセミナー「ひとり情シスの在宅環境づくり」では、情報システム担当者のリソースが限られていたとしてもテレワークを上手に導入するために利用すると良いテレワークツールの実践的な組み合わせや、助成金/支援施策の上手な活用法などについて、パソナ リンクワークスタイル推進統括 湯田健一郎氏が紹介した。
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