「世界一止まらないATM」はいかにして生まれたか? セブン銀行のAI×データ活用

[2020/08/13 08:00]山田井ユウキ ブックマーク ブックマーク

AIの導入が進み、各企業が積極的にデータの活用に取り組む昨今、あらゆる産業構造が地殻変動を起こしている。これは金融業界においても例外ではなく、金融サービスにテクノロジーを組み合わせる動きは活発だ。こうした状況下において、いち早く「AI×データ」を生かした改革に取り組んでいるのがセブン銀行である。

新世代ATMをはじめとする”破壊的イノベーション”を起こし続けるセブン銀行は、どのようにテクノロジーを活用しているのか。7月9日に開催された「マイナビニュースフォーラム2020 Summer for データ活用」では、セブン銀行 専務執行役員 松橋正明氏が登壇。自らが率いるセブン・ラボにおけるAI×データ活用の全容を語った。

次々に最新技術を取り入れられる理由

セブン銀行は、コンビニエンスストア「セブン-イレブン」を運営するセブン‐イレブン・ジャパンと同じセブン&アイ・ホールディングスのグループ会社である銀行だ。600社以上の金融機関等と提携し、原則24時間365日稼働するATMネットワークを介してATMサービスを提供する事業をメインに展開しており、現在は都内中心に新型ATM「ATM+(プラス)」を設置展開している。

ATM+の特徴は、データとAIを活用することで、高度なセキュリティの確保と利便性の向上を実現している点だ。例えば、「どの地区でどれくらいの現金が動いているのか」というデータから現金需要を予測し、現金不足によるATMの停止を従来より大幅に削減することを目指す。また、顔認証などを利用したセキュリティ機能によって24時間モニタリングと自動検知を行い、破壊行為やスキミングにも備える。さらに、スマートフォン連携やマイナンバー対応(2020年9月より稼働予定)など、さまざまな機能を搭載したまさに新世代のATMだと言えよう。

これほどのスピード感で最新技術の導入を進めることができるのは、セブン銀行の規模感がベンチャー企業並みだからだと松橋氏は説明する。

セブン銀行 専務執行役員 松橋正明氏

そのフットワークの軽さを生かし、外部のスタートアップ企業と連携してオープンイノベーションを実践していることも大きい。松橋氏が「セブン銀行はテクノロジー企業」だと言うのもうなずける。

では、実際にセブン銀行ではどのようにテクノロジーの導入と活用を行っているのだろうか。

重要なのは「業界常識を疑う」こと

松橋氏にとって転機となったのは、2016年。AI/機械学習と出会ったことだ。以前から「あらゆる産業はテクノロジーの進展で再構成されるもの。そしてテクノロジーの核はデータである」と考えていた松橋氏にとって、AIはまさに「再構成をもたらす破壊的イノベーション」だった。それまでの常識を覆すAIの威力を目の当たりにし、「この技術を使えなければ自分自身が淘汰される」と衝撃を受けたという。

松橋氏は普段、技術先行ではなく課題ありきで技術の導入を進めている。しかし、AIに関しては発想を逆転させ、「技術ありきで未来を考える」ことにした。

「現在の業務を棚卸しし、AIで実現したい姿を描いていくところから始めました。AIにもできることとできないことがあるので、トライアンドエラーを繰り返しながら試していきました」

ポイントはAIによる効果が大きそうな業務を優先的に選ぶこと。かつてIT化に失敗した領域を中心に、技術との相性や現データの有用性を見ながら1つずつ地道に試していった。

「初期バージョンでズレがあったものでも、あえて現場に投入しました。スペシャリストに見てもらって、そこから得たものをプログラミングすることで精度を上げていきました」

重要なのは「業界常識を疑う」ことだと松橋氏は言う。例えば、ATMは定期的な点検作業が必須だ。これまでは担当者の経験としきい値管理により点検タイミングを決めるのが業界の常識だったが、松橋氏はこの部分をAIで自動化/最適化できるのではないかと考えた。データから故障の予兆がわかれば本当に必要なタイミングでのみ点検を行うことができ、ATMを止める時間も短くて済むというわけだ。結果的にセブン銀行のATM+は”世界一止まらないATM”と称されるまでになった。

「AI/データ活用を通してわかったのが、現行データは障害解析用であって保守用ではないため、AIを最適化するために再編が重要になること。検証環境はユーザー企業が積極的につくるべきであり、数年越しで対応する気構えも必要になるということです」

セブン銀行では、2016年からまさに数年越しでAI活用を進めてきた。5年分のデータで学習を進め、数度のチューニングを経て現金需要予測は一定の精度に達したという。

「大事なのはリーダーが自ら考え、勘を働かせて軌道修正すること。そして常識を疑い、大きな成果を狙うことです。まだ実証しきれていませんが、データの再編がゴールへの近道だと考えています」

松橋氏は現在、データ活用が3rdステージに入っていると考えている。セブン銀行ではスマートフォンから取得できるデータやオープンデータを活用し、ATMの設置場所の検討や海外事業展開などに生かしているという。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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