音声メディアから、社会の音声インフラへ -VoicyがCIを刷新した理由

【連載】

ミッションステートメント ~企業が込めた想い~

【第15回】音声メディアから、社会の音声インフラへ -VoicyがCIを刷新した理由

[2020/01/24 09:00]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

立ち上げから約3年で急成長を遂げている音声メディア「Voicy」。有名ビジネスマンや各業界の専門家、インフルエンサーなど、多様なパーソナリティによる音声番組が日々放送されている。

運営元のVoicyは、2019年2月にVCや事業会社から大型の資金調達を実施。事業拡大の真っ只中、同年10月にはCI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新し、「音声で社会をリデザインする」という新たなミッションを打ち出した。

CI刷新の経緯やミッションの言葉に込められた思いについて、同社 代表取締役CEO 緒方憲太郎氏に聞いた。

Voicy 代表取締役CEO 緒方憲太郎氏

「音声」という新たなメディアのあり方

2016年9月にスタートして1年ほどは伸び悩んでいたVoicyだが、「音声ニュースメディア」から「声のブログ」とサービスの説明を変えたことで、転機が訪れた。イケダハヤト氏やはあちゅう氏など、有名ブロガーたちがこぞってVoicyを通じた発信をするようになったのだ。

そして2018年にはリスナー数も急増。Voicyのパーソナリティ個人に対してスポンサーが付くという新たなお金の流れが生まれた。また最近では、一般ユーザーだけでなく、企業がオウンドメディアや社内報としてVoicyを利用するケースも出てきている。

そもそもなぜ「音声」に着目したのだろうか。緒方氏はこう語る。

「スマートフォンの次に来るメディアは音声だと思ったんです。新聞から、テレビ、PC、スマートフォンへと、時代が進むにつれてメディアと人との物理的・時間的な距離は近くなってきました。しかし、情報は画面からしか受け取れないものではありません。ディスプレイを通さず、普段の生活をしながら情報が得られる世界が近々来るだろうと考えました。

スマートフォンをはじめとする従来のデバイスは手を使った操作が基本でしたが、これがボトルネックとなり、これまでは『手でつくった情報を目で入れる』というコミュニケーションが一般的でした。しかし、今後スマートスピーカーなどのデバイスを音声でコントロールできるようになることで、『口でつくった情報を耳に入れる』というコミュニケーション手段がとれるようになります。

画面を開いたり、文章を書いたりするのが面倒になり、『今日の天気を知るためにわざわざ画面を開いていたの?』と言われてしまう時代がくるかもしれません」(緒方氏)

緒方氏がVoicyを運営するなかで発見した音声の魅力もある。それは、喋り手の個性が如実に現れてくる、ということ。

「たとえば、告白をするときには、文章で伝えるよりも直接会って話すほうが相手の心に届きますよね。それはその人の人間味がより伝わるから。声の震えや話の間などは、文字にした瞬間に失われてしまうんです」と、緒方氏は説明する。

喋るだけでコンテンツになるという手軽さも、音声メディアならではのメリットの1つだろう。

Voicyでは、収録アプリを使うことで、ただ喋るだけで簡単にチャンネルを作ることが可能だ。Webメディアが台頭する昨今、インターネット上は多くのテキストコンテンツで溢れているが、その制作にはそれなりの労力や時間が必要となる。

緒方氏に言わせれば「既存メディアの発信者はすごく暇な人か、プロのどちらか」。おもしろいネタを持っている忙しい人たちは、テキストを通じて発信する時間がなかなかとれないというジレンマがある。Voicyは、音声というツールを使うことで発信者の負担を減らし、そのジレンマを解消させているというわけだ。

音声メディアだけの会社ではないことを強調

<Mission>
音声で社会をリデザインする

<Vision>
音声×テクノロジーでワクワクする社会をつくる

Voicyのミッション・ビジョンはどちらも、最初に「音声」という言葉が登場する。これには、音声メディアを通してただ音声の魅力を伝える会社ではなく、音声を使って社会にインパクトを与えていく会社であるという印象を強調する狙いがある。

BtoCのサービスとしてスタートし、音声メディアのイメージが強いVoicyだが、現在では、さまざまなデバイスに音声を配給して管理できる音声インフラの開発も進めており、証券会社や新聞社のコンテンツなどをVoicyのインフラを通じてスマートスピーカーに流すサービスも提供している。

こうしたBtoBビジネスへの展開が進むなか、「第二創業をスタートする覚悟を発信したいという意味合いもある」と緒方氏が言うように、CI刷新の対外的な狙いとしては、より視座の高い新たなビジネスの可能性を伝えたいという思いがある。

「現在は、音声メディアを運営していただけの会社から、企業のソリューションやインフラをつくる会社へと変わってきているところです。

創業当時2名で運営していたころは正直、『わかってくれる人だけが使ってくれるサービスになればよくない?』『完璧じゃなくてもいいじゃん、そのぶん愛されたら』という気持ちが大きかったです。しかし、さまざまな企業と協働するうえでは、完璧さや信頼性が求められるようになります。サービスの成長につれて、目線が変わってきました」(緒方氏)

新ミッションを心の支えにスタートアップの”成長痛”を乗り越える

こうした状況においてCI刷新を実施したことは、社内の組織づくりという点でも重要な意味を持つ。「社員に愛されて、楽しいメンバーで仕事がしたい」という気持ちの強い緒方氏は、BtoBビジネスを展開して拡大路線を進む意思決定をするまでにさまざまな葛藤があったというが、現在では「たとえ会社がめちゃくちゃ軋んでしまったとしても、より急角度での成長を目指していく必要がある」と、覚悟を決める。

「CI刷新に伴って雇用制度や評価制度をはじめさまざまなことを変えている途中です。すごく悩みましたが、ビジネスの視点が高くなったぶん、社員に求めるものもより高くしていかなければならないなと考えています。

会社が達成したい目標に対して、『達成できなくても今の環境でいいじゃん』『社長のワガママじゃん』と思う社員もいると思います。しかし、これだけ一般ユーザーに刺さったサービスを提供する日本のスタートアップはほかにありません。そうしたユーザーの期待に応えていけるだけの組織にしていきたいと考えています」(緒方氏)

CI刷新の裏には、急成長中のスタートアップが直面する”成長痛”との戦いが見え隠れする。新ミッションを軸にこの壁を乗り越え、ビジネスを大きく躍進させていってほしい。

※ 本記事は掲載時点の情報であり、最新のものとは異なる場合がございます。予めご了承ください。

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