AIバブルの崩壊は、いつか起きる - 東大 松尾豊教授が語る深層学習の未来

[2019/06/19 08:00]周藤瞳美 ブックマーク ブックマーク

ソリューション

日本マイクロソフトは6月8日、大手町プレイスウエストタワーにてDeep Learning Lab(DLLAB)2周年イベント『ディープラーニングの社会実装を阻むものは何か?』を開催した。

本稿では、東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授 松尾豊氏による基調講演「深層学習ビジネスの未来」の様子をお届けする。

東京大学大学院工学系研究科人工物工学研究センター/技術経営戦略学専攻 教授 松尾豊氏

ディープラーニングはまだビジネスにはなっていない

インターネットの登場によって世界時価総額ランキングに大きな変動が起きたことはご存知だろう。

上位にランクインしているGoogle(Alphabet)、Amazon、Facebookは、1990年代前半にはまだ立ち上がってもいなかった企業だ。そしてインターネット同様、ディープラーニング(深層学習)も世界中のビジネスを大きく変革する技術になっていくものであると松尾氏は見ている。

しかし松尾氏によると、現在ディープラーニングによる世界の変化は初期段階にあり、イノベーションが起きるには10-20年掛かるという。インターネットに例えると、現在のディープラーニングの状況は1999年ごろのビジネス黎明期にあたるといえる。

「90年代にはインターネットはまったくビジネスになっていなかった。当時はポータルサイトに集客するようなビジネスが主流。そうした状況は2000年に覆った。きっかけは、検索連動型広告と結びついたこと。それによりインターネット広告ビジネスが勃興した。このように、技術はビジネスモデルと組み合わさらないと大きなものにならない」(松尾氏)

現在でもディープラーニングに関連したスタートアップ企業やプロジェクトが立ち上がりつつあるが、松尾氏は「ビジネスにはなっていない」とバッサリ。「もっと長期的に考えたほうがよい。ビジネスとして大きくなっていくのはまだまだこれから」とアドバイスする。

インターネットとAIの比較

そして、松尾氏はディープラーニングをビジネス化していくための2つの可能性を示す。

1つは、収穫物の品質のスコア化や建設作業の検収、製造業の外観検査など「熟練の”眼”のスコア化」、もう1つは重機の自動操縦や農作物の収穫作業など「中心的な作業の自動化」だ。特にこうした業務に関しては、非IT系分野のビジネスのほうがイノベーションが起こるポテンシャルは大きいといえる。

さらに「熟練の”眼”のスコア化」と「中心的な作業の自動化」ができるようになれば、横展開も可能となり、ビジネスに広がりが生まれる。ただし、それによってコストが大きく低下する業種は、価格競争に晒されてしまうことになる。そして、将来的には、感性やストーリーといったものに人はお金を出すようになる。

現在の消費財で考えるとわかりやすいだろう。機能や価格だけでは差別化が難しく、商品のストーリーをうまく組み立てて消費者の心を掴むマーケティングが重要となる。松尾氏は、今後はそうした”感性”の要素が強くなってくるとしたうえで「ディープラーニングをビジネス化していくには、自動化と感性の両面が大事」と話す。

ディープラーニング時代のプラットフォーマーになるためのポイント

ディープラーニングは、儲かってなんぼ!

松尾氏は、研究室関連のベンチャーや投資ファンドのアドバイザーとして多くのアイディアを見てきているが、現在のディープラーニングを活用したビジネスの状況について「今の段階では、優れたビジネスプランは100に1つ程度しかない」としたうえで、エレベーターに例えてこう説明する。

「18世紀の産業革命で動力が登場したことにより、1階から2階に上がるエレベーターができた。しかし当時は、1階から2階の移動であれば階段で上がったほうが早いと思われてしまい評価されなかった。それから数年経って高層ビルが立ち始めると、エレベーターは必須の技術になった。エレベーターは、1階から2階へ上がる技術ではなく、高層ビルの建設を可能にした技術。そして現在のディープラーニングはまだ1階から2階に上がるエレベーターのような状況。今後はディープラーニングを活用してこれまでになかった付加価値をどう生み出していくかが重要」(松尾氏)

技術だけあってもビジネスにはならない。ビジネスとの掛け算として技術を捉えることが重要というわけだ。松尾氏は、「技術力は高いがビジネスが弱い企業がある一方で、ビジネスはわかっているが技術が追いついていない企業もある」とし、「ディープラーニングは、儲かってなんぼ」と強調。最終顧客の付加価値にコミットすることを強く意識する必要性を訴えた。

また昨今では受託開発事業を行うITベンダーやベンチャー企業も多くあるが、松尾氏によると「受託でやっていける時代はそこまで長くない」と釘を刺す。そして「産業ごとに特化していくことで、”必殺技”を身に付けていかないと戦いは厳しくなる。インターネットも、さまざまなサイトがつくられていた時代から、Eコマース、そしてEコマースの商材へと細分化し、そのなかで競う流れになっていった」と、特定の分野での優位性を確保しておくことが重要であるとした。

さらに松尾氏は、インターネット・バブル崩壊のような現象が、ディープラーニングにも起こりうると忠告。「インターネットの場合、2000年前後にバブルが崩壊し、悪いものが振り落とされた。バブル崩壊前のインターネット企業のように、現在のAI関連企業は過剰に評価されている。AIでもインターネット・バブルのような現象がおそらく起こる。それが激しいかどうか、いつ起こるのかはわからない。しかし必ず調整の局面が来るということは頭に入れておいてほしい」と語った。

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