人とロボットの協働とベーシックインカムの導入により、働くことが「義務」から「権利」に変化することが予測されている。そんな未来が訪れたとき、労働の意義はどこに見い出されるようになるのだろうか。また、会社組織の在り方はどう変わっているだろうか。

11月22日に開催された「RPA DIGITAL WORLD 2018」では、基調講演に幻冬舎の編集者で実業家の箕輪 厚介氏、XEED代表/経営コンサルタントの波頭 亮氏、浄土宗善立寺副住職で寺院デジタル化エバンジェリストの小路 竜嗣氏という個性豊かな3名が登壇。ベーシックインカムとロボットAI時代における働き方について、パネルディスカッションを行った。

AI/RPAが民主化したとき、成功する企業とは?

AIやRPAといったテクノロジーによるビジネス変革の波が訪れている。今後、会社組織にとってデジタルロボットはますます欠かせない存在になり、伴って人の仕事の領域も大きく変わっていくことが予測されている。

そんな現状を、波頭氏は2世紀余り前に世界を変えた産業革命に例えて説明する。

「産業革命ではそれまで人間が行っていた力仕事が内燃機関や電気にリプレースされました。次の時代に人間に求められたのは、『そうした新しい技術をうまく使える』ということでした。自動車が生まれ、運転手、自動車の設計者、タクシーやトラック業といった仕事が生まれました。これがビジネスモデルの発想です。AIでも同じで、AIを設計する人、より高度なAIを作る人、AIでビジネスを考える人、AIのオペレーター、AIをメンテナンスする仕事などが生まれていくでしょう」(波頭氏)

XEED代表/経営コンサルタントの波頭 亮氏

AIによって仕事が失われるのではなく、仕事のかたちが変わっていくというわけだ。そんなAI/RPA時代で成功企業となる条件は何か。

会社員でありながら自身でオンラインサロンを展開し、多くのフォロワーを抱える箕輪氏は、今後の組織のあるべき姿について次のように語る。

「組織を強くするためには、お金ではなくビジョンや目標や世界観が大事。どんなに給料が良くても、やりたくない仕事を与える組織に若い人はやって来なくなります」(箕輪氏)

ただし、「お金そのものを否定しているわけではない」とも箕輪氏は言う。

「お金は便利なものです。オンラインサロンではお金を払ってもらっているから平等にしたいけど、大事な仕事はやはり信頼している人に任せたい。でもそれを自分が指名するなら、それは労働になるからフィーが発生しないといけなくなります。お金はモノサシとして便利だったんだなと思います」(箕輪氏)

幻冬舎 編集者/実業家 箕輪 厚介氏

一方、浄土宗善立寺副住職を務め、元エンジニアであることからデジタルにも明るい小路氏は、宗教の観点から「お金」について語る。

「かつて大乗仏教と小乗仏教が分かれたのは、『お金をお布施として受け取るかどうか』という考え方の違いによるものでした。受け取るのが大乗仏教で、受け取らないのが小乗仏教。後世のことを考えると、結果としてより広がっていったのは大乗仏教だったのです」

浄土宗善立寺副住職/寺院デジタル化エバンジェリスト 小路 竜嗣氏

ここまでの話から、いずれAIやRPAが民主化され生産性が最大化されたとき、企業にとって大事なことは「ビジョンや世界観を提示できるかどうか」だということがうかがえる。

では、それを踏まえた上で個人や企業はどのように他者(他社)と差別化していけばいいのか。

この問について「ブランドを持つこと」だと断言するのは箕輪氏だ。

「ブランドバッグがほかのバッグと比べてめちゃくちゃ丈夫なわけではありません。皆がブランドバッグに価値を感じていること、それ自体が価値であり、ブランドなんです。ホリエモン(堀江貴文氏)が『これからはお金持ちよりもトリュフ持ちだ』と言っていました。本当に良いトリュフは、お金を出しても人脈がないと買えません。人間関係を含む希少性、それこそがブランドです」(箕輪氏)

箕輪氏のブランド論について、小路氏はさらに予測を加えていく。

「おそらくどの業界もそうですが、ブランドはどんどんニッチ化していきます。市場の3分の1を取る時代ではなくなり、5%を20社で分けるような状況になっていくと思います。例えば、タクシーはAIで自動運転化されるかもしれませんが、逆に最後まで人間が対応することでブランド化したタクシー会社というのも1社は残るはずです」(小路氏)