ガートナーは毎年、全世界のCIOを対象とした大規模な調査を実施している。ガートナー ジャパンが主催する年次カンファレンス「Gartner Symposium/ITxpo 2018」では、最終日となる11月14日、同社バイス プレジデント アナリスト 松本良之氏が登壇。「2019年のCIOアジェンダ:日本の視点」と題した講演で、今年のグローバル調査結果から見た日本企業の特徴について、グローバルの回答との違いを分析しながら解説した。

見えてきた「第三世代のIT」

今年の調査で明らかになったのは、「職人的なIT」「ITの工業化」を経て、「第三世代のIT」の時代に突入しているということである。

ガートナー ジャパン バイス プレジデント アナリスト 松本良之氏

新しい時代のIT部門のテーマは「デジタル化」。これまでとは異なり、テクノロジーやプロセスではなく、ビジネスを実現するテクノロジーに注力しなくてはならない。エンゲージメントという意味では、利用部門ではなく最終顧客を意識する必要があるし、提供するべきケイパビリティはITサービスではなく、プロダクトマネジメントへの貢献に変わる。求められる成果も効率性ではなく、ビジネスやオペレーティングモデルの変革が期待されている。

第三世代のITの焦点は、デジタル化/出典:ガートナー(2018年11月)

今回の調査は、全世界89カ国における3,102社から回答を得たものだという。このうち、日本の回答者は134社のCIOであり、その業種別内訳は製造業が49%を占め、これにサービス業の12%、金融サービス業の10%が続く。以降のインサイトにはこの回答者構成が反映されたものであることに留意が必要だ。

まず、IT予算の傾向を世界平均と比べると、IT予算の対前年度予測は全世界平均2.9%増加する見通しなのに対し、日本は3.2%と他の地域と比べても遜色がないIT予算の増額ができているのだという。「予算が増えていること自体には驚きはないだろう」と松本氏は言うものの、その中身については問題があるようだ。

「ここからはあまり耳に優しい話はできない。調査結果でわかったのは、日本企業がデジタル化に遅れをとり始めていること。去年はそれほどでもなかったが、今年は明らかに遅れが見え始めた」と松本氏は分析した。