デジタルトランスフォーメーションの推進が声高に叫ばれる今、その成果を享受するために、企業のIT部門やIT子会社は何を考え、どのように対応するべきなのか。

1月25日に開催された「NTT DATA Innovation Conference 2018」では、NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティングユニット 兼 デジタルビジネスデザインセンター ユニット長 兼 センター長の三谷慶一郎氏が登壇。「IT組織のデジタル戦略 - IT部門・IT子会社の『リ・デザイン』」と題し、デジタル変革を支えるIT組織の新たな役割について解説がなされた。

今、IT部門はどう進化するべきか?

登壇した三谷氏は、「かつては技術主導で、新技術と共に新たな市場が立ち上がってきました。技術成熟度が高まりコモディティ化すると、今度は価格などの経済性主導の世の中になります。コスパが高く、質の良いものが売れます。そこで一番強かったのが、日本の製造業です」と説明する。だが、それがここ10年ほどで変わってきたのだという。

近年、日本の人口推移は減少傾向にあり、2065年には総人口が9,000万人を割り込むと推計されている。かつては右肩上がりに増加してきた人口が、維持すら困難になっている今、需要と供給の力関係が変わろうとしているのだ。

「日本に限らず、世界的に社会の成熟度が上がり、物が売れなくなっています。こうなると人は、主観的な満足度や心地良さを重視し、モノよりはコト、つまり体験価値や経験価値にシフトしていくのです」(三谷氏)

NTTデータ経営研究所 情報戦略コンサルティングユニット 兼 デジタルビジネスデザインセンター ユニット長 兼 センター長の三谷慶一郎氏

良い商品を置いておけば売れた時代は、供給を滞らせるのが最大の機会損失だったため、サプライチェーンが発展してきた。だが、適切なレコメンドがないと売れなくなった今、「作って売る」のではなく、「コトを提供して対価を得る」という発想が必要となる。

こうした考え方はデジタルと親和性が高く、弱い供給者を代行するプラットフォームビジネスやシェアリングサービスは、ビジネス化しやすいという。三谷氏は、外国人観光客の関心が100円ショップから体験型サービスに移っていることや、IoTによるモノのサービス化、スポーツ観戦に向けたAR/VR活用などを挙げ、「企業は効率性の重視から創造性の重視へと変わっていくでしょう」と見解を示す。

だとすれば、企業を支えるIT部門にも変化が必要だ。これまでのように効率的で安定したシステム運用を考えるだけでなく、ITを駆使して企業の継続的な創造を支援することが求められる。

「大切なのは、これが”アドオン”で要求されるということです。これまでやってきたことをやめてよいわけでなく、新たに業務を追加しなければならないのが悩ましいところです」