人事システムをクラウドで提供する米Workdayは、シリコンバレーのクラウド企業でありながら、急がず焦らずで成長してきた。2005年に創業、最初の100社を獲得するまでに6年を要したが、現在顧客は1,800社を数える。同社が10月中旬、米国シカゴで開催したユーザーカンファレンス「Workday Rising 2017」では、1年前に構想が明らかにされていたPaaSやアナリティクス機能が形を成して登場した。

その背後にあるのは、かつてOracleに買収されたPeopleSoftチームだ。PeopleSoftの共同創業者で、現在Workdayの共同創業者兼CEOとして同社を率いるアニール・ブースリ氏が記者からの質問に答えた。

Oracle、SAPは「過去の戦い」をしているだけ - Workdayの目線

――PaaSの「Workday Cloud Platform」が発表され、製品分野の拡大が続いています。今後の方針を教えてください。

ブースリ氏:さまざまな分野に拡大していますが、中核であるHR(「Workyday HCM」)への投資は変わっていません。HRは成熟しつつあり、投資は人、体験、そして今回発表した分析の「Workyday Prism Analytics」を含めたスイートを完成させていく方向で行っています。

米Workday 共同創業者兼CEO アニール・ブースリ氏

Workdayの戦略は、企業が業種に関係なく共通して行う「計画・実行・分析」のサイクルを支援すること。これを重視しています。競合他社のなかには同じような機能を提供しているところもありますが、Workdayとはやり方が異なります。

ビジネスにおいて「計画・実行・分析」はバラバラに行うのではなく、連続して行うものです。Workdayでは、この一連の流れを1つのアーキテクチャ上で提供します。これは、市場の方向性とも一致しています。企業は、散在する機能を自分たちで統合したいとは思っていないからです。このように1つのアーキテクチャから成るスイートを持つことは、今後我々がプラットフォームカンパニーへと成長していくにあたってさまざまなチャンスをもたらすでしょう。

Workday Cloud Platformは、1年前に構想を明らかにしたものです。この製品をもって、Workdayはクラウドサービス分野に拡大していきます。現在、デザインカンパニー(早期顧客)と協業を進めていますが、成果は良好です。今後6~9カ月で企業がどのように利用しているかなどを調査し、我々も学んでいきます。並行してAPIも進化させていく計画です。

――Oracleがアプリケーション、インフラをプッシュし、SAPはデータベース分野に進出するなど、業界は統合の方向に向かっています。こうした競合の動向をどう見ていますか?

ブースリ氏:(Oracle、SAPなどの)レガシーの競合は「過去の戦い」をしているにすぎません。現在や将来に向けた戦いではないのです。

当社は常に、「自社を崩壊するものは何か」を理解しようとしています。例えば、我々が音声や自然言語の研究をやろうとしても、20人ぐらいの開発者しか用意できません。

一方、AWSは500人の開発者が作業しています。Microsoft、Googleもしかりです。我々はこれらのプラットフォームと戦うのではなく、受け入れます。Salesforce.comもそうですが、WorkdayもAWSなどのクラウドプラットフォームが提供するイノベーションや最新技術を受け入れることで、大きなアドバンテージを得ています。レガシーな企業はまだここで(受け入れるのではなく)戦っている状態です。

Amazon、MicrosoftなどはWorkdayにとって素晴らしいパートナーです。顧客も、Workdayがアプリケーションにフォーカスしていることを受け入れていますし、我々がそのエコシステムの中で展開することを望んでいます。

Oracleはこれらの企業と戦うつもりでしょうが、間違っていると思います。しかし、Oracleのデータベース事業がAWSに侵食されつつあるのなら、戦うしかないのでしょう。