自社の成長を願う企業にとって、従業員1人1人の能力を最大限に高め、最適な人員配置を実現するタレントマネジメントは、決しておろそかにできない要素の1つだろう。だが、ITを駆使したタレントマネジメントの実践が進む欧米に対し、日本は遅れをとっている感が否めない。

そんな日本を含むAPACを中心に、タレントマネジメントの可能性を提示し続けているのがフランク・リッチャルディ氏だ。同氏は、タレントマネジメントソリューション「コーナーストーン」を提供する米Cornerstone OnDemandにて、日本とAPACのバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務める。

APAC、そして日本において、今後タレントマネジメントはどのような広がりを見せるのか。Cornerstoneの年次カンファレンス「Cornerstone Convergence 2017」の期間中、日本メディアのグループインタビューにてリッチャルディ氏にお話を伺った。

APACとタレントマネジメントソリューションの「相性」

――APAC、特に日本の企業についてどのような印象をお持ちですか。

リッチャルディ氏:4年前、APACの担当になって非常に興味深く感じたのは、アジア諸国は人材の管理や教育についてお互いに類似点が多いにも関わらず、日本だけが独特だということです。それが日本のことを学ぶ機会にもなりましたし、日本には注目しています。

――具体的には、どういったところが独特なのでしょうか。

リッチャルディ氏:日本の企業と従業員の関係はとてもユニークです。伝統的なやり方として、新卒を大量に採用することや終身雇用制度、年功序列が機能している点が特徴的です。日本では、こうしたやり方でうまくいっているのだと思います。

ただ、グローバル化が進み、慣習が変わりつつあるので、技術を駆使した近代的なやり方を取り入れることが日本においても功を奏するのではないかと思っています。

米Cornerstone OnDemandにて日本とAPACのバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーを務めるフランク・リッチャルディ氏

――APACにタレントマネジメントソリューションが普及するのは難しいのでしょうか。

リッチャルディ氏:概念的には意外と簡単だと思っています。なぜなら、商慣習や新技術などは最初に誰かが始めれば、少しずつ広がっていくからです。APACは既にそういう動きが始まっているので、広がり始めたら早いでしょう。(タレントマネジメントソリューションは)「グローバルな商慣習的なもの」として受け入れられるようになると信じています。

理念的な話になりますが、タレントマネジメントは非常に面白い世界です。社風や企業文化はそれぞれ異なりますし、国ごとに文化も違います。しかし、文化的側面は違っても、タレントマネジメントを考えるときには共通項が多いのです。

人間は幸せを感じたいし、成功したいとか、貢献したいという気持ちを強く持っています。だとすれば、企業は責任を持って、従業員が幸福感を感じながら仕事に臨んだり、貢献したりできる状況を作ることが大切です。

そして、各人の可能性をフルに活かせるような状況を作り出せるのがタレントマネジメントソリューションだと思っています。