企業は今、デジタル変革の旗印の下、「業務効率化を中心としたIT」への投資と並行して、方向性の全く異なる「競争優位の強化につながるIT」への投資を実行していこうとしている。6月5日から6日にかけて、ガートナー ジャパンはユーザー企業のITリーダーやそのパートナーであるITベンダー所属のリーダーを対象に「ガートナー ソーシング & 戦略的ベンダー・リレーションシップ サミット 2017」を開催した。本稿では、ガートナー ジャパン リサーチ部門 ディレクター 海老名剛氏の「ソーシング&ベンダー管理をデジタル・ビジネスのコアに据えよ」と題した講演の内容をお届けする。

今こそ「バイモーダル」なアプローチを

デジタル変革を進めようとする企業のITリーダーが最初に知っておくべきことは、企業ITには2つの特性の異なるITがあるということだ。ガートナーでは、既存のビジネスに即した「モード1」のITと、従来は存在しなかった新しいビジネスを実現するための「モード2」に分け、それぞれに適した方法で構築・運用するアプローチを「バイモーダル」と呼んでいる。

海老名氏は、モード1とモード2の最大の違いとして、モード1では要件が明確にできることに対し、モード2では要件をあらかじめ明確にすることが難しい点を説明した。

ガートナー ジャパン リサーチ部門 ディレクター 海老名剛氏

モード1とモード2の特性が異なる以上、システム構築や運用の委託方法もベンダーマネジメントも違うやり方で行わなくてはならない。つまり、バイモーダルアプローチでは「バイモーダルソーシング」が必要になるということだ。

モード1とモード2のソーシングの相違/出典:ガートナー(2017年6月)

海老名氏は、「バイモーダルソーシングとは、2つの異なるソーシングを同時に、互いに密接に関係させながら、シナジーを生かして実行すること」と説明し、ITリーダーに対し、「両方のモードのノウハウ共有と連携に責任を持たなくてはならない」と提言した。

だが、そうは言っても、モード1ばかりに集中してきたITリーダーがいきなりバイモーダルソーシングに取り組もうとしても難しい。そこで海老名氏は「ビジネス戦略とIT戦略」「組織編成」「人材育成」「IT投資」「ベンダーマネジメント」の観点から、企業のIT部門が向かうべき方向性とアクションプランを示した。