ドローンのポテンシャル - メーカーやキャリア、ユーザー企業はこう見る

「ドローンを活用しよう」という話題が聞かれる昨今、波に乗り遅れまいと、さまざまな企業が活用を目指して実証実験を行っています。しかし、「波に乗る」ことが目的になっていないでしょうか?

法規制や現在のドローンのスペック、将来的な可能性、自社事業へのインパクトなど、本当にその事業にドローンが必要なのか、精査できているのでしょうか?

実際にドローンをサービス内で活用しているセコムとコマツ、LTEを活用したセルラードローンの実現を目指す携帯キャリア3社、実際にドローンを提供するDJIとACSL、業界団体のJUIDA、担当官庁の一つである国土交通省に、石川 温氏と中山 智氏が話を伺いました。

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ドローンメーカーというと海外企業が強いイメージだが、国内にもドローンの機体開発からソリューションの提供まで行っている企業がある。「自律制御システム研究所(ACSL)」もそうした国産ドローンメーカーのひとつだ。そのACSLの代表取締役 最高経営責任者(CEO)の野波 健蔵氏に、同社の取り組みなどについて話を伺った(関連記事 : [講演資料提供]ドローンは社会をどう変えるのか? - 国内第一人者 野波教授が動画で示す近未来像)。

ACSLの代表取締役 最高経営責任者(CEO) 野波 健蔵氏

20年前からドローンを研究、野波氏の会社「ACSL」とは

野波氏のドローンへの取り組みはおよそ20年も前から。「それこそドローンという言葉もあまり聞かなかった時代」(野波氏)の1998年、千葉大学 野波研究室にて完全自律型ドローンの研究開発をスタートしている。その研究成果として2001年8月に日本で初めての自律制御化を成功させ、2013年11月に自律制御システム研究所(ACSL)を設立した。

設立時期はドローンに注目が集まりつつある時期だったが、コンシューマー市場がメインで市場規模も小さかった。しかし現在は「毎月10数機のドローンを販売している」(野波氏)と語るほど市場が伸長し、会社としても軌道に乗ってきているという。「10数機」という数は少ないようにも感じるが、同社はドローン本体の販売だけでなく、運用方法も含めた「ドローン活用ソリューション」として提供している。

例えば、農薬散布に使う農業用小型ドローンのレンタル事業を3月にスタートしており、通常であれば1台150万円で販売しているドローンを、「2週間30万円」ほどの料金で貸し出す。レンタルだけでなく、操縦方法や運用方法などをレクチャーする手段も提供する。

また4月には、出光興産とともに石油化学工場の設備点検・検査にドローンを活用する実証実験を行っている。これは、工場プラント上空を飛行して画像を撮影し、異常がないか診断するというもの。導入実験のため正式採用まではいたっていないが、ドローンの大敵である強風下でも安定した飛行で、データの収集が達成できたという。

ほかにも、LTE経由の通信で操縦した長距離飛行テストや荷物の配送テストなど、さまざまな実証実験をACSLは行っている。同社のドローン最新モデル「ACSL -PF1」は拡張性が高く、高解像度カメラやレーザーセンサー、計測機器など、用途に合わせたカスタマイズ性が高い。そのため、特定条件下での実験や顧客のニーズに合わせて開発しやすいのだ。

スマホがドローンの進化を後押し

昨今のドローンブームについて野波氏は「スマートフォンの普及が大きい」と説明する。

ドローンに搭載されているCPUやGPU、通信システム、そして地磁気・傾きセンサーなどは、基本的にスマートフォンに搭載されているものと同じ。「研究開始当初もそういったシステムやセンサーなどは存在したが、サイズが大きく性能もそれほど。それがスマホの普及で一気にサイズダウンし、コストも下がった」(野波氏)というわけだ。

ただし野波氏は、ドローンの開発について「ハードウェアだけでなく、むしろソフトウェアのほうが重要」と語る。

プロペラで空中を飛行するだけの製品であれば、中国などのメーカーの方が低コストで作れる。単純に飛ばすだけでなく、ドローンを使って効率良く農薬散布をしたり、工場や橋に異常がないか観察したり計測をしたりといった、「動作のプログラミング」や「データ収集・解析」までをトータルに提供できるのがACSLの強みだ。野波氏はコンシューマー向けのドローンとは「マーケットが違う」と語っており、このあたりが国産ドローンでも、海外メーカーにも対抗できるポイントのようだ。

「落ちないドローン」に必要な処方せん

こうした分野で今後重要となる差別化ポイントとして野波氏は「落ちないドローン」を挙げる。