ドローンのポテンシャル - メーカーやキャリア、ユーザー企業はこう見る

「ドローンを活用しよう」という話題が聞かれる昨今、波に乗り遅れまいと、さまざまな企業が活用を目指して実証実験を行っています。しかし、「波に乗る」ことが目的になっていないでしょうか?

法規制や現在のドローンのスペック、将来的な可能性、自社事業へのインパクトなど、本当にその事業にドローンが必要なのか、精査できているのでしょうか?

実際にドローンをサービス内で活用しているセコムとコマツ、LTEを活用したセルラードローンの実現を目指す携帯キャリア3社、実際にドローンを提供するDJIとACSL、業界団体のJUIDA、担当官庁の一つである国土交通省に、石川 温氏と中山 智氏が話を伺いました。

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ここ最近、ドローン活用については携帯キャリアが積極的に実証実験を行っている。実は2016年7月に総務省でルール作りが行われ、実用化試験局として、LTE通信機能を載せたドローンを飛ばせるようになったのだ。将来的にセルラー通信による目視外飛行の実現を目指している。

そうした中、NTTドコモではさまざまな自治体と連携し、スマホを搭載したセルラードローンを積極的に飛ばしている。たとえば昨年8月には、宮城県仙台市で防災・減災を目的としたドローンの実証実験を行なっている。

ドコモが実証実験を重ねる理由

NTTドコモ スマートライフ推進部 コミュニケーションサービス担当部長の藤間 良樹氏は「ICTを活用した街作りの一環で、ドローンを使えないかという話があった。昨年11月5日の世界津波の日にはドローンにスピーカーを搭載し、津波警報を放送しながら飛行したり、災害地を空撮して中継する実験をおこなった」と話す。

今年2月には人命救助を目的として、遭難者を見つけ出すために赤外線カメラを搭載したドローンを用意。上空からを温度を測り、体温の感知から遭難者を見つけ出すという取り組みも行った。また、ドローンの活用でもっとも「現実的」とされている農業分野での取り組みでも、NTTドコモはドローンメーカー「エアロセンス」や新潟市とともに実験を行っている(関連記事 : ドコモら、新潟市でドローンを活用した農業ICT実証プロジェクト)。

新潟市らは、ドローンで松くい虫の特定を目指す

「新潟市においても自治体と共同で実験を進めている。こちらも、元々は『ICTを使って農業を活性化する』という話が最初。新潟の海岸線には日本海から吹き付ける寒風を防ぐための防風林があるのだが、林を維持するためには樹木のメンテナンス作業が不可欠。

例えば『松食い虫』が存在するので、それらをどう効率的に除去するかに、自治体は頭を悩ませている。これを解決するためにドローンを飛ばし、カメラで撮影して松食い虫の影響を受けているところを探していく。ドローンの飛行場所から害虫被害の位置を特定し、後から人を送って効率的にメンテナンス作業していく」(藤間氏)

アメリカではAmazonが各家庭への配達手段としてドローンを活用するという報道があるが、日本ではNTTドコモが率先的に「宅配ドローン」の実証実験を進めている。福岡県では、MIKAWAYA21とエンルートと組んで、福岡県の本島から2.5キロの距離にある能古島までドローンを飛ばし、買い物代行サービスを提供するという実証実験を試行済みだ。離島の住民から買い物代行の注文電話を受けたら商品をドローンの飛行場まで運び、ドローンが離島まで飛んで、商品を島内にある荷受け場まで届けるという流れだ。

福岡での実証の様子

「プロポ操作ではなく、自動運行、さらに目視外飛行を想定した取り組みであり、買い物に不便な離島に向けたサービスといえる。2.5キロという離れた場所は、セルラーがないと飛ばしきれない。新しい取り組みといえる」(藤間氏)

離島だけでなく、千葉県の特区では楽天と組み、宅配ドローンの実験も手がける。ただ業界内では、「国土の広いアメリカならば宅配ドローンの可能性はあるだろうが、日本では都心部でドローンが飛びまくって宅配するというのは現実的ではない。それよりも軽自動車で宅配した方が安全で、確実ではないか」という否定的な声が多い。

その点は藤間氏も「都内でドローンが飛び交う世界が実現するのは、すぐではないだろう」と認めつつ「田舎方面の流通が難しい一部地域なら、まだ現実的かもしれない。我々は一番難しいところに手をつけているかもしれないが、取り組む必要はあると思っている」と語る。

セルラードローンの課題は「電波」

NTTドコモがドローンに前向きな理由は、何も「世間的にドローンが流行っているから」というわけではない。

「ドローンとセルラーネットワークとの相性がよさそうだ、という仮説に基づいている。最終的にはドローンのインフラをうまく構築できると、人々の暮らしにおける課題解決をできるようになるのではないか」(藤間氏)