東京都武蔵野市にある中高一貫校の「聖徳学園中学・高等学校」は、企業向け社内SNS「Talknote(トークノート)」をICT教育の一環として導入した。

同校は、東京私学教育研究所の平成27・28年度研究参加校として「アクティブ・ラーニングを実践するタブレット端末活用授業」を行っている。全クラスに電子黒板を設置したほか、中学1・2年の生徒全員にiPadを導入、デジタル教科書やクラウドツールを活用するなど、ICT教育を推進している。

一方のTalknoteは部署や店舗を越えて情報共有が可能な社内SNSで、Yahoo!ニュースやKDDIの一部部門など、2万社以上が導入している。学校法人として初めての本格的な導入となった聖徳学園。同校はなぜ社内SNSを導入したのか、情報システムセンター長でICT支援員の横濱 友一氏に導入背景や狙いをうかがった。

聖徳学園中学・高等学校 情報システムセンター長 ICT支援員 横濱 友一氏

中高生にもコミュニケーション能力が求められる時代

学校は「同年代の生徒と学問を教える教師のみの空間」という印象を抱きがちだが、「外部とつながることが求められるようになっている」と横濱氏は指摘する。具体的には、保護者や採用担当者からの「ビジネスのグローバル化にあわせた、コミュニケーション能力を育む取り組み」という要求だ。

経団連のアンケートや保護者の教育意識アンケートから、コミュニケーション能力が重視されていることが分かる

要望に対して、学校が取りうる対策は時間割に「コミュニケーション」という授業を加えることだが、1つの単元として成立させるにはリソースや時間が足りない。そこで、ICTを活用して「スキマ時間のコミュニケーション」を検討した結果、SNSの活用を決めたそうだ。

ただ、LINEやTwitterといったオープンプラットフォームが普及している段階で、あえて校内のコミュニケーションプラットフォームを必要とするのはなぜか。

これについて横濱氏は、「つながり過ぎてしまうLINEは、教育観点で採用することは難しい」と話す。LINEでは教師を含まない形で生徒がグループ作成できる上、相手のブロックも容易で、何よりも見知らぬ人がメンバーに入ってくる危険性がある。一方で校内に限ることで部外者が参加してしまう心配がなく、学校側に管理権限があるため、教師・生徒・保護者の三方にメリットがある。

その中でTalknoteを選択した理由については「既読・未読がわかること」と横濱氏。学校現場では、ビジネスの場以上に「相手が見たかどうか」が重要だそうだ。学校におけるさまざまな連絡事項を、ログを残すためにもTalknoteで流しており、それを生徒が確認しているかチェックすることで、保護者への報告にも利用できるという理由だ。

Talknoteによるやり取りの画面。投稿にはそれぞれ既読人数が表示される

また、コミュニケーション管理という側面では、Talknote内の会話でトラブルが起こった場合にもログを参照できるため、アカウント乗っ取りやID・パスワードの流出なども管理しやすい。「もちろん、ベースとしては生徒たちの自由なコミュニケーションを尊重したい」(横濱氏)とのことだが、いざという時の対応を学校側がコミットできる点では、保護者にとっても安心な材料といえる。

学校外の人とつながることや「人間力」も重視

「コミュニケーション」を教育目線で考えた時、重要視するポイントはどこにあるのだろうか。