キャンプ修了生が講師に! 次の世代に渡される「バトン」

2日目の専門講座では、前出の田中ザック氏、同じくKDLでセキュリティエンジニアとして活躍し、兵庫県立大学OBでもある松本悦宜氏に加え、セキュリティ・キャンプ2015全国大会修了生の中村綾花氏が講師となって、ハンズオン形式の講義を行った。

神戸・関西を中心に、遠方は石川県から参加した小学生も含む20名の参加者は、昼食のアナウンスがあってもなかなか作業から手を離そうとしないほどの集中力を見せていた

午前中のカリキュラムでは、「ハッカー(ペネトレーションテスター)の考え方とハンズオン」と題し、脆弱なシステムに対するペネトレーションテストの段取りについて解説が行われた。登壇したザック氏は、「将棋と同じで、攻撃手法がわからなければ、どうやって防御すれば良いかわかりません」と強調。チーム内で助け合いながら、「守るための人材」として活躍してほしいと呼び掛けた。

午後の講義は「ハニーポットを用いた分析ハンズオン」。午前の内容と対になるかたちで、手元のシステムが攻撃されたらどんな痕跡が残るのかを「ハニーポット」を利用して観測する方法が紹介された。限られた時間ではあったが、システムにどんなログが残るか、守る側の視点で確認した参加者からは、「講義資料を活用し、自宅でもハニーポットを試してみたい」という声が挙がっていた。

こうしたハンズオン形式の講座にはトラブルが付きものだが、仮想環境がうまく動作しないといった問題には、中村氏と同じくセキュリティ・キャンプ経験者のチューターがサポートを行う。チューターの1人は「エラーメッセージの読み方など、教科書にはあまり書かれておらず、場数を踏んでわかることを伝えられたのではないか」と手応えを得ていたようだ。

戸惑う参加者があればすかさずサポートに回り、スムーズな講座運営を助けるチューターの役割も重要だ

ハンズオンの講師を務めた中村氏は、ライトニングトークの経験はあったものの、講師役には初挑戦。元々、ハニーポットの面白さと利用時の留意点について伝える機会がほしいと思っていたところに講師の打診があったのだという。

「何でもチャレンジしてみようというのがモットーなので、思い切ってやってみましたが、参加者の皆が楽しんでくれたのが何より嬉しいです」(中村氏)

弱冠22歳で初の講師経験となったが、「一緒に講師を務めたザックさんや松本さんがバックアップしてくれました。どのように講座を組み立てればよいか、家に集まってわいわい議論し、アドバイスをもらったのも楽しい経験でした」と振り返る。

「ハニーポットの面白さを伝えることができ、受講生が喜んでくれたことが何よりも嬉しい」と語った中村綾花氏

セキュリティ・キャンプを修了したばかりの若いエンジニアが、今度は教える側に立ち、次の世代に技術を伝え始めている。中村氏は自らの経験を踏まえ、「まだまだ発表の機会が少ないのではないかと感じています。世の中には、私よりももっと技術的に優れている人がたくさんいます。そうした人たちに、自分の強みを発表してもらえたらとても面白いと思うし、私もぜひ聞きたいです」と語り、今後、こうした場が増えることに期待を寄せた。

「参加者はみんな優秀で、もっと勉強すれば、すぐに私を追い抜いていっちゃうんじゃないかと思っています。そんな優秀な人たちを盛り上げていければ良いな」と中村さん。早くも、地産地消のサイクルが回り始めたことを予感させる。