LINEの企業アカウントをスタンプ欲しさに友達登録する人は多いだろう。その企業アカウントに最近変化が起きている。大手企業はマーケティングの一環として「LINE ビジネスコネクト」アカウントを導入し、CRM連携によっていわゆるワントゥーワンマーケティングの入り口としての価値を最大化している。

高い開封率とスタンプ配信などによる継続的なエンゲージメントがLINEをマーケティングツールとして利用する大きな魅力だが、これを顧客サービスとして利用する企業が徐々に増えている。2017年1月時点で146社がビジネスコネクトを利用しているが、このアカウントを利用して顧客サービスを提供する企業は26社、17%まで増えている(2016年実績、前年は7社、12%程度)。

これを切り出したものが、LINEが昨年11月に発表した「LINE カスタマーコネクト」だ。カスタマーコネクトは、ビジネスコネクトにおける顧客対応ニーズの高まりを受けたもので、テキストベースでAIによる自動回答を目指す「Auto Reply」とオペレーターによるテキスト回答の「Manual Reply」、ケースによって電話で対応する「LINE to Call」、または電話からのLINE送客を実現する「Call to LINE」という機能を提供する(一部ベータ提供)。

日本マイクロソフトからLINEへ移籍したことで話題となり、カスタマーコネクトをリードする同社 LINE Biz センター 広告・ビジネスプラットフォーム室 戦略企画担当ディレクター 副室長の砂金 信一郎氏に話を聞いた。

LINE LINE Biz センター 広告・ビジネスプラットフォーム室 戦略企画担当ディレクター 副室長 砂金 信一郎氏

AI活用でコンタクトセンターの作業負荷を軽減

ネットの普及から、かつてほど製品ユーザーと企業の距離は遠くなく、製品から直接数字を吸い上げられるIoTの時代へと突入しつつある。しかしそれは理念でしかなく、不平不満を持つユーザー、利用方法や十分な活用ができずに悩むユーザーに企業がリーチするには、カスタマーサポートが重要だ。

カスタマーコネクトでは、これまでのコンタクトセンターの役割をより現代に最適化したものに進化させることを目指していると言っていい。AIが「FAQベースで済む回答」を顧客に提示し、そこから吹きこぼれたユーザーを有人チャット、あるいは電話にエスカレーションさせる。しかもLINEのトーク内でこれらの操作が完結するため、企業側は独自アプリなどを用意する必要がない。

「そもそも、LINEがこの機能を事業化した理由は、AIをマネタイズしつつ、生活に浸透させられる筋の良いソリューションという側面もあります。ユーザー側からすれば、コンタクトセンターの待ち時間なく疑問を解決できますし、企業側からしても、人件費の高騰や人材不足という環境をAIによって効率化できる。双方にメリットがあるソリューションがカスタマーコネクトなんです」(砂金氏)

ローソン「あきこちゃん」は、AIにりんねを活用して顧客とのコミュニケーションを図っている

AIは自前で用意するケース、例えばローソンは「ローソンクルー あきこちゃん」のバックエンドに日本マイクロソフトの女子高生AI「りんな」の技術を活用している。もちろん技術を自前で引っ張ってこられる企業ばかりではないため、LINEではPKSHA Technologyが提供する顧客対応に特化したAI「BEDORE(ベドア)」をLINEから「BEDORE for LINE」としてAuto Replyに提供する。

「カスタマーサポートでは、FAQの一覧からもっとも沿う答えを最適に素早く回答できることが求められます。Watsonのような対話型も検討しましたが、機械学習して最適なFAQを確信度が高く出せるのはBEDOREだと考え、提供を決めました」(砂金氏)。

LINEはCRMツールこそ提供せず、SalesforceやZendesk、Oracleといったパートナー企業のソリューションと連携してサービス提供する。「コンタクトセンターのパートナー企業も含めて、CRMツールでイチから競合他社と戦うという選択肢はありません。LINEはあくまで媒体として機能を提供し、課題解決を目指すことで、パートナー各社とも強調して顧客に寄与していく」(砂金氏)。