米Scalityの日本法人であるスキャリティ・ジャパンは7月13日、SDS(Software Defined Storage)製品の新版「Scality RING7」の国内提供を開始すると発表した。

Scality RINGは、リング状に配置された複数のx86サーバ上でペタバイト級のストレージシステムを構築できるソフトウェア。クラスタにサーバを追加することで、柔軟に容量を拡張できる点を特長とする。最新版であるScality RING7は今年6月、米国で既にリリースされており、それに続くかたちで今回、日本でも提供が開始される。前バージョンまでと同様、アライアンスパートナーを通じた間接販売のみとなっており、最小構成は200TBからのライセンス提供となる。

記者発表会では、米Scalityにて最高マーケティング責任者を務めるポール・ターナー氏が登壇し、Scality RING7の概要と、新機能がもたらす利点などについて解説がなされた。

深刻な脅威や災害、厳格化する規制にも対応する新機能の数々

「今年5月から急速な広がりを見せたランサムウェアの攻撃は留まるところを知りません。英国では国営の医療保険サービスが大規模なランサムウェア攻撃を受け、サービス停止を余儀なくされました。これは大きな問題です」

――冒頭、ターナー氏は近年激化するサイバー攻撃の脅威に触れ、セキュアなストレージの重要性を訴えた。ご存じのとおり、ランサムウェアは、感染したPCをロックしたり、ファイルを暗号化したりした上で、解除との引き換えに金銭(Ransom:身代金)を要求する悪質なマルウェアの一種だ。

米Scalityにて最高マーケティング責任者を務めるポール・ターナー氏

このランサムウェアに対抗するものとして、Scality RING7では、ファイル・オブジェクトのバージョニング機能が追加された。同機能では、ユーザーがデータの作成・切り取り・消去といった作業を行う都度、変更されたファイルのバージョンが自動的にシャドウディレクトリに保存される。ファイル名には分単位でタイムスタンプが付与される仕組みだ。これにより、ランサムウェアの攻撃を受けた場合も、その直前のバージョンからデータ復旧することが可能となる。

また、書き込んだデータを任意のタイミングで読み取り専用にできるWrite Once Read Many(WORM)機能では、データを修正・上書きするタイプのランサムウェアからデータを保護する。氏によれば、このWORM機能は医療機関からのニーズもあるのだという。

「米国の医療関連の規制『HIPAA(Health Information Portability and Accountability Act』では、患者の医療記録を患者が生きている限り保存しなければならないのですが、そうしたケースにもWORM機能は使えます。書き込んだデータを読み取り専用にできるので、後から改ざんや変更はできません」(ターナー氏)

また、災害に起因するシステム停止への対策として、ファイル・オブジェクトの非同期レプリケーション機能も追加された。同機能では、ファイル・オブジェクトの双方について、異なるデータセンター間でデータの冗長コピーを保持することでデータの保護を図る。

さらに、ロケーションコントロール機能では、データの保存先として特定の地域内にあるScality RINGストレージを設定することが可能となった。これは、EUの一般データ保護規則「GDPR(General Data Protection Regulation)」をはじめ、より厳格なセキュリティ規制の規定が進行するなかで、新たに生じるセキュリティ要件のサポートを視野に入れたものだという。

「ロケーションコントロール機能については、特に欧州の企業から要望がありました。米国でも、欧州の顧客データを持つ企業は多いので、同様の要望が上がってきています」(ターナー氏)